ディーン・フジオカは復讐の先に何を見るのか? 『モンテ・クリスト伯』見事な光の演出

『モンテ・クリスト伯』見事な光の演出を読む

 一方、真海に断罪される側はと言うと、寺角の最期を照らしたのは、真海の車のヘッドライトと真海が上から照らす懐中電灯の容赦ない光だ。この車のヘッドライトは、暖が捕らえられた要塞の光景、看守の車のヘッドライトの2つの光が、闇しかないその場所を照らしている光景と重なる。

 そして、幸男の最期を照らしたのは、眩しいほどの太陽の光だ。カメラが根本をなかなか映さないために、どこにかけているのかわからないほど高い位置にある白い縄は、その光に照らされ、本人の意思というより、まるで真海という神が用意した「死」であるかのように思わせる。

 このドラマの中で一際優しい光に包まれているのは、山本美月演じるすみれだ。真海にとって唯一の拒みきれない愛の対象である。初めて真海が彼女と幸男の家を訪ねたとき、帰り際に彼は、すみれのいる部屋の窓を眺めるが、その窓は、暖かく優しい光に包まれていた。彼女の娘が真海に与えた星の絵も、過去のすみれとの思い出もそうだが、真海にとっては、彼女のいる場所はいつも暖かい光に包まれた「帰る家」なのである。だが真海はあえてそれを拒絶し、遠ざけ続ける。

 そして、幸男と別れ、教会で涙するすみれと娘を包むのもまた、幸男や真海、愛梨と違い、黄色い柔らかな光である。

 第7話になって突然、太陽や、月といった光源が示され始めた。第6話まで常に、太陽の光や月の光が彼らを間接的に包んではいるが、多くの場面においてその光源が示されることはなかった。だが、それぞれの感情が揺れ始める第7話では、留美と安堂の空、信一朗(高杉真宙)と暖が語り合う空、幸男への復讐の段取りを終えて外に出た愛梨の空にそれぞれうっすらと浮かんだ月、または太陽が示されている。

 それは、光の道のその先、復讐の終着点、あるいは自分の守るべきもののためにするべき道のその先を、彼らが見据えているからに他ならない。だが、その先はまだ、雲に隠れてみえない。怒りや愛で突き進んできた光の道のその先に、何が待ち受けているのだろうか。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
木曜劇場『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:ディーン・フジオカ、大倉忠義、山本美月、高杉真宙、葉山奨之、岸井ゆきの、渋川清彦、桜井ユキ、三浦誠己、新井浩文、田中泯、風吹ジュン、木下ほうか、山口紗弥加、伊武雅刀、稲森いずみ、高橋克典
原作:アレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』
脚本:黒岩勉
プロデュース:太田大、荒井俊雄
演出:西谷弘、野田悠介、永山耕三
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/MONTE

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