吉沢亮と一つ屋根の下で暮らすドキドキ感! 『ママレード・ボーイ』“非現実”という設定の魅力

『ママレード・ボーイ』原作と現代の融合

 吉住渉の人気少女コミック『ママレード・ボーイ』が、桜井日奈子&吉沢亮のW主演でついに実写化された。『りぼん』(集英社)に原作が連載されていたのは、実に25年前。両親同士がパートナーを交換し、2つの家族が一緒に暮らすというブッ飛んだ設定ながら、“普通の女子高生”光希と、“カッコよすぎる”遊の試練だらけの恋愛模様に、多くの女子たちがときめいた。何を隠そう筆者も『ママレード・ボーイ』ど真ん中世代。記憶の奥深くに大切にしまってある名作が実写化されるとなれば、劇場に足を運ばずにはいられなかった。

 ある日突然、両親から離婚を告げられた女子高生・小石川光希(桜井日奈子)。父・仁(筒井道隆)と母・留美(檀れい)が、旅先で出会った松浦夫妻と意気投合し、留美がその夫・要士(谷原章介)、仁がその妻・千弥子(中山美穂)と恋に落ちたため、パートナーを交換して再婚すると言うのだ。両親どちらかと離れて暮らすことを嘆く光希に、留美は「6人で一緒に住もうと思っているの」と、あっけらかんと提案。光希は納得できないまま、松浦夫妻とその息子・遊(吉沢亮)と一緒に暮らすことになる。

 『ママレード・ボーイ』の魅力といえば、やはり非現実ともいえるその設定。クールで甘いマスクのモテモテ同級生男子と一つ屋根の下で暮らすというドキドキ感はハンパじゃない。はじめは不満ばかりの光希だったが、同マンガを代表する名場面“保健室でのキス”をきっかけに遊を意識しはじめ、徐々に思いを通わせていく。

 映画全編を通して感じたのは、音と光の秀逸さ。小鳥のさえずり、カラスの鳴き声、車の通過音、そして、眩しい日差しや家の中に差し込む西日が、非日常ともいえる少女マンガの世界を日常に近づけてくれる。それは保健室でのシーンも例外ではない。静まりかえった保健室内とは対照的に、外からうっすらと聞こえてくるザワザワとした学生たちの声、カーテン越しの柔らかな光……誰もが経験したであろう“学校の保健室で眠る”というあの感覚が蘇ってくる。そして、そこにふと訪れた遊からの突然のキス。これには胸キュンせずにいられない。

 突として出会い、「好きにならない」と宣言していたにもかかわらず恋に落ちる。前半では、そんなキラキラとした少女マンガ的展開が描かれる『ママレード・ボーイ』だが、ある時突然、遊は楽しかった思い出を断ち切るように、光希のもとから離れていく。そして、その先にある2人の決断が描かれるまでの後半は、前半とは打って変わってシリアスだ。

 もちろん原作に沿ったストーリー展開なのだが、物語が進むに連れて「あれ? 『ママレード・ボーイ』ってこんなに重い話だったっけ?」という感覚に陥ってしまう。実際、原作者の吉住氏も「マイナビニュース」のインタビューで「映画はすごく真面目なラブストーリーになっていましたね」(『ママレード・ボーイ』衝撃展開は"最初から" 吉住渉が作品&実写化語る (2) 原作と違う世界を楽しんでほしい)と語っており、両親のパートナー交換という突拍子もない設定から始まった物語とは到底思えない、重みのある恋愛映画に仕上がっている。

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