立川シネマシティ・遠山武志の“娯楽の設計”第27回
映画館ビジネスにおける舞台挨拶やライブスタイル上映の意義とは? “一回性の興行”について考える
実際シネマシティでもこれまでに何度もこの形式の上映イベントを行ってきましたが、音楽ライブ作品では高確率で最高ですが、それ以外の作品では本当に参加してくださった全員が幸福であったことは数回しかなかったような気がします。否定的に捉えられるといけないのでつけ加えておきますが、このスタイル、本当にうまくいったときは、わけもなく涙がこぼれてくるほどの大きな感動があります。ですので、これからも続けられていくでしょう。
ただし成功したとして、それを複数の場所で複数回維持し続けるのはかなり困難だと感じています。複数回の質の維持というのは綿密さと周到さと訓練によって成立するものです。偶然性の奇跡が、固められたものを時に超えることがあったとしても、それは偶然性ということの定義によって、再現性が否定されるのです。(参考:映画館はライブを越える音楽体験を生み出せるか? “ライブスタイル上映”のリスクと革新性)
こうして書き連ねると見えてきましたが、このナマ要素を追加して映画館興行に一回性を導入するというやり方、集客方法としては有効ですが、あくまでも単発的なもので、かつ、本当の意味で劇場が追求すべきであろう「映画を映画館で観る意味」とはズレていきます。難しいものです。
ただ少なくとも「映画館に行く意味」を作るということは間違いないので、まずは劇場に一度でも足を運んでもらう手段として、映画館はこれまで以上に“一回性の興行”に積極的に取り組むべきかと思います。
特に若い方に、まずは映画館という“場”の魅力を認識してもらうこと。ブラックライトの下では服が別の色に見えるように、映画館で鑑賞することは同じ作品でも別物に感じるということをわかってもらうこと。それは大画面とか大音量とかいうことなんかは副次的なことで、日常を遮断してくれる“場”で観ることが真価であると体感してもらうこと。
実現するかはわかりませんが、アイディアだけならいくつも用意があります。
You ain't heard nothin' yet !(お楽しみはこれからだ)
(文=遠山武志)
■立川シネマシティ
映画館らしくない遊び心のある空間を目指し、最高のクリエイターが集結し完成させた映画館。音響・音質にこだわっており、「極上音響上映」「極上爆音上映」は多くの映画ファンの支持を得ている。
『シネマ・ワン』
住所:東京都立川市曙町2ー8ー5
JR立川駅より徒歩5分、多摩モノレール立川北駅より徒歩3分
『シネマ・ツー』
住所:東京都立川市曙町2ー42ー26
JR立川駅より徒歩6分、多摩モノレール立川北駅より徒歩2分
公式サイト:http://cinemacity.co.jp/