広瀬すず、顔をぐちゃぐちゃにして泣き出す 『anone』で見せた渾身の芝居
偽札のことを花房万平(火野正平)に知られてしまった中世古理市(瑛太)は、勢いで花房の首を締めようとするが失敗する。自首を勧めようとする花房だったが、林田亜乃音(田中裕子)からの懇願もあってか、証拠を破棄することを条件に中世古たちを見逃す。しかし、中世古の偽札が銀行から見つかったことはニュースとなってしまう。刑事の追跡を察知した中世古は、偽札製造の機械を破棄して逃亡しようと目論む。一方、辻沢ハリカ(広瀬すず)は紙野彦星(清水尋也)に会うために病院に向かう。そこに彦星の同級生の香澄茉歩(藤井武美)が現れる。
先週は花房を中世古が殺すのではないかとヒヤヒヤしたが、殺人はあっさりと回避される。しかし偽札作りの日々は終わりを迎え、林田家に生まれた、疑似家族的なつながりも終りを迎える。
中世古はなぜ、偽札を作ろうとしたのだろうか? 「完璧な偽札ってあるんだよ」と言う中世古を見ていると、大金を手に入れることではなく、偽札を作るという行為そのものに魅せられてしまったように見える。罪を被ろうとする亜乃音に対して「僕がやったんだ。これ、僕の犯罪です」と言う中世古にとって偽札は、それ自体が彼の生きた証であり、作品だったのだろう。
一方、クライマックスを前にハリカと彦星の関係も急展開する。香澄と彦星を巡って直接対決するのかと思われたが、香澄は父親に手術の治療費を頼んで、お金の力で彦星の気持ちを手に入れようとした自分のズルさを反省しているとハリカに告白する。香澄が手術のお金を出すと聞いたハリカは、彦星が助かると分かり、「よかった」と繰り返しながら、顔をぐちゃぐちゃにして泣き出す。広瀬すず、渾身の芝居である。彦星のことが本当に好きで、自分の気持ちよりも何より一番に彼に生きてほしいと、ハリカが思っているのが伝わってくる。
香澄からのお金を彦星が断るのは、自分が原因だと知るハリカ。その後、彦星に会いに行くが、部屋の入り口で顔を見ることなく、「そろそろ話聞いてるの重荷になってきた」「君のこと、面倒くさくなっちゃった」と嘘をついて、彦星との関係を断とうとする。
ハリカが別れたい理由として語る嘘はとてもリアルだ。おそらくメールやLINEでは連絡を取り合っているが、数回会ったきり別れてしまう男女なんて腐るほどいるのだろう。むしろ、ここまで描かれてきたハリカと彦星の関係の方がおとぎ話のようで嘘臭かったので、第1話のような虚実のひっくり返しがあるのではないかと思っていたのだが、今回は逆に、リアルな嘘をつくことで、自分から別れようとする姿が描かれた。
ハリカと対照的なのが、青羽るい子(小林聡美)だ。中世古と逃げようとする持本に対して、余命がわずかだと知っていることを伝えて、「私、看取るから」と言うるい子。彦星に生きていてほしくて別れるハリカと、持本の死を看取るために側にいようとする青羽。
そして、亜乃音は警察に連れて行かれる場面で帰ってきたハリカと対面するが、彼女を庇うために「知らない子です」と言う。