橋本愛、視聴者の心を掴んだ大粒の涙 『西郷どん』難役・須賀を好演

 吉之助との夫婦生活を振り返れば、正助の謹慎解除の知らせに喜び、頼まれた鰻取りを向かうことをすっかり忘れた吉之助に、須賀が「我が家の晩御飯の鰻は?」と呼びかけ、「おー! そうじゃったー!」と吉之助が須賀の両頬をグリグリする。その様子からは、仲睦まじい夫婦の関係が伝わってきた。江戸行きを諦めた吉之助と正助がぶつかり合ったときには、須賀は「旦那さぁは、私のために江戸行きを諦めてくれたとでございもす! 夫婦のことに他人は口を挟まんで欲しいとか!」と仲裁に入った。そんな須賀を「こげな嫁」と馬鹿にする正助に、吉之助は再び殴りかかり、その優しさをはっきりと表していた。さらに、貧しい大所帯の家に来たにも関わらず、須賀は「貧しさは恥ではございもはん」と言い切り、吉之助と亡き母・満佐(松坂慶子)を安心させた。この言葉があって、吉之助は離縁を切り出されても、須賀を信じきることができたのだ。

 能面と例えられる表情が多い中で、繊細で複雑な須賀という難役を務めた橋本愛の好演が光る回であった。満月が浮かぶ橋の上で号泣する、感情溢れる橋本の演技は多くの視聴者の心を掴んだことだろう。第9回「江戸のヒー様」で、舞台はついに江戸へ。華やかな新キャラクターが続々と登場する中、注目はタイトルにもある“ヒー様”こと謎の男(松田翔太)。吉之助が江戸でどのような成長を遂げていくのかも見どころだ。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『西郷どん』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
出演:鈴木亮平、瑛太、黒木華、松坂慶子、風間杜夫、平田満、桜庭ななみ、渡部豪太、塚地武雅、沢村一樹、北村有起哉、高橋光臣、堀井新太、北川景子、青木崇高、小柳ルミ子、鹿賀丈史、渡辺謙
原作:林真理子
脚本:中園ミホ
語り:西田敏行
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/segodon/

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