錦戸亮、演技の魅力は“普通さ”にあり!? 『1リットルの涙』から『羊の木』まで成長を振り返る

 「待ち受けるのは、絶望か、希望か」。そんな印象的なキャッチコピーが付いている映画『羊の木』が、2月3日に公開された。豪華俳優陣の出演や、主演の関ジャニ∞・錦戸亮のネット写真解禁など、何かと話題になっているこの作品。公開から2日間の全国週末興行成績ランキングは2位、翌週は5位と、好調な滑り出しを見せた(数字は興行通信社調べ)。錦戸本人も、TOHOシネマズ 梅田で開催された舞台挨拶付き試写会にて「この先自分にとって代表作といえるような作品になっていると思います」と自信を見せたり、作家の朝井リョウ、前野朋哉、江口洋介など著名人からも絶賛のコメントが寄せられたりするほどの注目作だ。もちろん、作品の内容もすこぶる面白い。「きっとこうなるだろう」という予想通りになるシーンもあれば、「えー!」と声を出してしまいそうになるトンデモなシーンもあり、最後まで目が離せない作品だ。

 本作の舞台は、寂れた港町・魚深(うおぶか)市。同市では、元受刑者たちの受け入れを行なう国家の極秘プロジェクトがスタートした。6人の元殺人犯が魚深市で新しい生活をスタートさせる様子と、受け入れ側の市役所職員・月末一(錦戸)の戸惑いや恐怖などがセンセーショナルに描かれている。この映画の特徴は、キャラクターの強さだ。中でも、元殺人犯の面々がとにかく個性的。気弱だが酒で人が変わってしまう福元宏喜(水澤紳吾)、元暴力団員で強面・寡黙だが義理堅い大野克美(田中泯)、人見知りで几帳面な栗本清美(市川実日子)、傲慢で悪巧みを企てる杉山勝志(北村一輝)、色っぽく月末の父と恋愛関係になる太田理江子(優香)、そして無邪気さと狂気を併せ持つ宮腰一郎(松田龍平)……。どのキャラクターもかなりエッジが立っていて、「普通じゃない」感が漂っている。そんな中、月末だけが至って普通なのである。そして、月末を演じる錦戸も限りなく自然体。まるで、“関ジャニ∞・錦戸亮”として出演しているかのようだ。

 観劇前に目にした記事で、監督の吉田大八は、以下のように語っていた。

「(月末は)普通の人ならではの華や色気が必要で、それが彼にはある。しかも、あまりに自然にやっているから作為の後が全然見えない。「いつもの自分と違うことやっています!」とさえ見えない。強烈すぎるキャラクターたちに囲まれて、最初から最後まで翻弄され続ける、「普通の人」で居続けられる才能は天性のものだと思いました」(原文ママ/引用:BuzzFeed Japan|隣人は元殺人犯。あなたなら“友達”になれますか?

 実際に観劇すると、確かに錦戸亮と月末一との境目をほぼ感じない。月末の言動は、「きっと錦戸もこういう反応するんだろう」と思えるのである。これが「作為の跡が見えない」ということなのだろうか。さらに、「普通の人ならでは華や色気」という言葉。月末は普通の青年であり、決して目立つタイプの人物ではない。しかし、周りに影がある人が集まっているために華を感じることができる。さらに、錦戸が持つ独特の甘い雰囲気が色気としてプラスされており、監督の言う「華と色気」にハマっていると確信した。

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