菅田将暉、柴咲コウに代わり井伊家の“当主”へ 『おんな城主 直虎』怒涛の新章スタート

 そして、政からも物語の主軸からも外れ、のんびり優雅に過ごしている、尾上松也演じる今川氏真も、このドラマにとってはなくてはならない存在だ。35話で徳川と和睦交渉をする際、「大名は蹴鞠で勝負を決すればいいのに」と語っていた彼は、親の仇である信長の前で蹴鞠を披露することになる。「戦さばかりが、仇のとり方ではあるまい」と微笑んだ彼の、刀を持たない戦いは、なるだけ戦いを避け、人を大事にしようとする直虎や家康の姿勢とも共通する。森下佳子が脚本を手がけた、野村萬斎主演の映画『花戦さ』において、武力に訴えるのではなく、花を活けることによって、秀吉の圧政を諫めようとした華道の家元・池坊専好の姿が描かれていたが、のんびりとしているように見える氏真の戦いも、彼なりの、まさに文化・芸能の戦いと言えるだろう。

 新しい武田が台頭し、新しい戦いが始まろうとしている。虎松の初陣は叶うのか。民にとっての安穏の地を守ろうとする直虎はどう動くのか。わりと空回りしつつ、キャンキャンと走り回っている菅田将暉の般若顔と、褒められて震えんばかりに喜ぶ表情が、子役時代の寺田心から勝手に成長を見守っている気分になっているドラマファンとしては可愛くてしかたがないのであるが、直虎と共に、少し離れたところで彼の成長を見守るしかあるまい。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿

■放送情報
『おんな城主 直虎』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
作:森下佳子
出演:柴咲コウ、菅田将暉、小林薫、市原隼人、貫地谷しほり、井之脇海、阿部サダヲ、菜々緒、尾美としのり、高嶋政宏、和田正人、古舘寛治、尾上松也、市川海老蔵、柳楽優弥
制作統括:岡本幸江
プロデューサー:松川博敬
演出:渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/naotora/

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