10月クールドラマは“3大涼子”そろい踏み! それぞれの華やかなキャリアと新作を分析
「だからどうした」というツッコミは覚悟の上で、あえて言いたい。10月クールの連続ドラマにはあの涼子、この涼子、その涼子の3人が出ていると。3人の涼子とは、50音順に篠原涼子、広末涼子、米倉涼子。広末は10月クールの先陣を切った『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ)に出演中で、元スパイという素性を隠す主婦・菜美(綾瀬はるか)の隣人・優里を演じている。米倉涼子は10月12日(木)に始まる視聴率レースの本命『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』(テレビ朝日)に5回目の登板。そして、篠原涼子は10月23日(月)に始まる『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』(フジテレビ)で月9に初主演する。
40代に入った米倉、篠原に対し、広末は30代という年齢差は少しあるものの、3人とも涼子という名前で想像がつくように夏の生まれ。そして、移り変わりの激しい芸能界で、ドラマの主演女優として20年もサバイブしてきたという共通点がある。その輝かしいキャリアをここで振り返っておきたい。
広末涼子は1994年に芸能界デビュー。高校生の頃からドラマに出ていただけに芸歴は長い。国民的アイドルとしてヒロスエブームを巻き起こし、歌手デビュー曲「MajiでKoiする5秒前」は、当時を知らない今の10代でもSNSで使うほどのパワーワードになった。10代から20代にかけてたくさんのドラマに出演する一方、映画でも『鉄道員』、『秘密』などでの演技が評価された。米アカデミー賞外国語映画賞を獲得した『おくりびと』にも出演し、そのフィルモグラフィーを見れば昭和の大女優もかくやというレベルである。しかし、現在の彼女の強みは、主演にこだわらず、二番手でも三番手でも引き受ける柔軟性にあると言えるだろう。古沢良太脚本の『リーガル・ハイ』と映画『ミックス。』では脇役、堤幸彦監督の『神の舌を持つ男』では謎の美女役、そして今回、金城一紀が原案・脚本の『奥様は―』には助演の立場で出演している。才能あるクリエイターの作品なら名よりも実を取る。『奥様は―』にはいろんな要素があるが、夫婦間の心と体の隔たりも描いており、金城作品らしい問題意識が見えるのはさすが。セックスレスについて広末が語るのも新たな挑戦と言えそうだ。
篠原涼子は1989年にデビュー。人気が出たのは歌手としてだった。東京パフォーマンスドール、篠原涼子 with t.komuroでの歌声を記憶している人も多いはず。しかし、2004年に同クール掛け持ちで主演した『光とともに…〜自閉症児を抱えて〜』、『アットホーム・ダッド』あたりから女優にシフト。それ以来、『anego』、『アンフェア』、『ハケンの品格』、『ラスト・シンデレラ』というヒット作を出し、主演のポジションに立ち続けているのはすごいことだ。ヒットの法則がことごとく崩れ去った今のテレビ業界で、「篠原涼子主演作」という言葉にはまだバリューがある。ただ、近年、木曜10時枠で演じてきた都会的でトレンディドラマ的な『ラスト・シンデレラ』、『オトナ女子』路線には限界が見えたのか、今回の『民衆の敵―』では団地に暮らす庶民的な既婚女性・智子を演じている。パートタイマーの主婦が一発逆転を目指し選挙に出て、高収入の市議を目指すという展開。篠原は髪もボサボサで余裕のない主婦に見え、最近のドラマにありがちだった「こんな美人がさえないリケジョで非モテ?」、「こんなに痩せている人が読者モデルになるためにダイエット?」というような違和感を抱かせない。放送日も衆議院議員選挙の投開票翌日にスタートするという絶好のタイミング、さらに高橋一生と石田ゆり子を配した豪華キャスティングも手伝って、手堅く数字を稼ぎそうだ。