福山雅治、“人間味”が薄い役が似合う理由 『三度目の殺人』と『ガリレオ』シリーズの共通点を読む

福山雅治、“人間味”が薄い役が似合う理由

 ところが『三度目の殺人』で(とても曖昧な描かれ方ではあるので、おそらく、としか言えないのだが)、没頭の末に辿り着いた先にあったことは、重盛の視点から見れば満足のいく解決とは言いがたい。その結末は、本作で二度目のタッグとなった是枝監督作で、彼が前回演じた『そして父になる』と同じように、冷酷で自分の信念のみを貫いてきた役柄が、もうひとつの異なる視点を理解し、“人間味”を取り戻した瞬間だったのではないのだろうか。

 息子として育ててきた少年との時間よりも血縁を重んじたことが、間違いとは言い切れないが、“家族”というものには様々な形があると理解し、真の意味で父親になった『そして父になる』の野々宮良多。そして、職業人としてのプライドとして勝ちにこだわってきたが、形式的な裁判のシステムの中に埋もれてしまった真実に途方に暮れる重盛朋章。

 弁護士として間違いのないスタンスを貫きながらも、一般的に求められるような真実を追求する弁護士の姿に、少しだけ近付いた重盛。『そして父になる』にちなんで、“そして弁護士になる”といったところだろうか。是枝裕和作品での福山雅治は、彼のイメージとその変化の過程を描くことによって、観客に多様な視点を理解させる役割を果たしているのだ。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『三度目の殺人』
全国公開中
監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:ルトヴィコ・エイナウディ
撮影:瀧本幹也
美術監督:種田陽平
出演:福山雅治、広瀬すず、吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功、役所広司
製作:フジテレビジョン アミューズ ギャガ
配給:東宝、ギャガ
(c)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ
公式サイト:gaga.ne.jp/sandome

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