錦戸亮は本当に“仕事ができない”のか? 『ウチの夫は仕事ができない』の問いかけ
『ウチの夫は仕事ができない』は、タイトルの通り、夫が仕事ができないというテーマで作られたドラマである。
ドラマの中での夫・司(錦戸亮)の仕事のできなさとはどんなものだろうか。一話では、司はある企画のビラのデザインをデザイナーと一緒に作り上げる。しかし、完成したところでデザイナーの母親が危篤となり、彼は実家である青森に帰ることになる。そんなとき、クライアントから変更があったという指示が上司から入り、そのときにすぐに司が会社に状況を説明できなかったことで、チームに迷惑をかけてしまう。
二話では、一話での失敗を受け、下っ端がやるはずのイベントの弁当発注を司がすることになる。司はスタッフの士気をあげようと考え、たくさんの業者にさまざまなお弁当を発注したため、上司からなぜ一つの業者にまとめて発注することで予算を抑えることを考えなかったかと責められる。
司は優しい性格で、このほかにも、偶然出会ったお弁当屋がおつりを両替していなくて困っていると、走って一万円分を両替する。よく言えば優しい、悪く言えばお人よしの性格。しかし、この性格は、イベント会社の中ではプラスに働いているとは言い難い。
結局、司はその優しさが仇となって失敗ばかりしてしまうが、危篤の母親のもとに行けたデザイナーには感謝され、また、イベントで司の発注したお弁当を食べたスタッフは皆笑顔になり、クライアントからも好評だった(その手柄は他人に取られることにはなったが)。果たして、司は本当に仕事ができない人と言えるのだろうか。
実社会で考えても、会社員は、とにかくクライアントの要望で右往左往しがちであり、クライアントがどう喜ぶかを忖度しながら動いているところがある。だから、勝手に「先方はこれをしたら喜ぶに違いない」という考えで動き、その思惑が違ったら、失敗の元凶となった人物を探し出し、攻めることになるということもありがちだ。もちろん、そんな働き方だから、仕事優先で長時間労働にもなりかねない。強い口調で指導者的な立場に立ち、断定的な口調の人ができる人だと判断されることもある。社会で実際に出くわすと、こうした旧態依然とした働き方に疑問を持ち始めた人も多いだろう。
ドラマの中では、司が壇蜜演じる上司・黒川晶から「がんばるって言いきれよ、やります、やってやりますって言いきれ、思ってますなんて誰でもいえるんだよ、自分の言葉に保険かけるな」と言われると、「がんばります、やります、やってやります」と答えるが、こうしたやりとりがあるということは、ドラマでどういう展開になっていくのだろうか。まだはっきりとは見えていない。
このドラマでは、優しさ、正直さがうまくいかせず仕事ができないとされている司だが、その優しさが逆に仕事にプラスになっていく結末をたどっているように見える。働き方が問われている今、とにかくモーレツに「やってやります!」と言い切り、その言葉がウソにならないように、多少の無理をすることが「仕事ができる」と思われがちだが、それは果たして本当なのかという疑問に答えていくドラマになるような気もする。