夏ドラマ戦線、王者TBSの対抗馬はフジテレビか? 最後の切り札『コード・ブルー』の可能性
「テレビドラマ界で今、もっとも勢いがある局は間違いなくTBSでしょう。特に、『逃げるは恥だが役に立つ』『カルテット』『あなたのことはそれほど』と、立て続けに名作が生まれている『火曜ドラマ』枠は、攻めた企画でちゃんと結果を出しているからすごい。今期の『カンナさーん!』も、お笑い芸人の渡辺直美さんを主演にするという大胆なキャスティングで注目を集めていますが、彼女は同世代の女性からの支持が厚く、SNSでの影響力もすごいので、同枠との相性は良いはず。TBSの企画は、フォーカスが時代としっかり合っている感じで、それが強さの源になっています」
そう語るのは、ドラマ評論家の成馬零一氏だ。いよいよ今週末から、各局の夏ドラマが本格的にスタートするが、TBSには『火曜ドラマ』以外にも注目作が多く、局全体で士気が上がっている印象を受けているという。
「『火曜ドラマ』の成功が刺激になり、ほかの枠も負けじと攻めた企画に挑戦しています。個人的に感慨深いのは、『金曜ドラマ』の『ハロー張りネズミ』。同枠で大ヒットした『ケイゾク』(1999年)の演出を手掛けた堤幸彦監督の弟子である、大根仁監督が脚本・演出を手掛けていて、主演を瑛太、脇を深田恭子、森田剛らが固めています。同枠はかつて、野島伸司脚本の『高校教師』(1993年)、北川悦吏子脚本の『愛していると言ってくれ』(1995年)、宮藤官九郎脚本の『木更津キャッツアイ』など、新たな才能とともに、これまでにないスタイルのドラマを生み出してきた挑戦的な枠でした。大根監督の起用はその系譜にふさわしく、『火曜ドラマ』に匹敵するポテンシャルがあると思います。
また、『日曜劇場』の『ごめん、愛してる』には、2000年代の同局の顔といっても良い長瀬智也(V6)が久々に戻ってきて、しかも相手役には『カルテット』で注目を集めた吉岡里帆が名を連ねています。さらに、深夜枠の『テッペン!水ドラ!!』では、古谷実原作の『わにとかげぎす』を、有田哲平主演でドラマ化するという徹底ぶり。今期もTBSは盤石ですね」
一方、対抗馬となりうる局は、意外にも『月9』枠が苦戦を強いられているフジテレビだと、成馬氏は語る。
「日本テレビやテレビ朝日は、どちらも視聴率的には問題ないのですが、鉄板の企画が多く、TBSほどのインパクトは打ち出せていない印象です。一方、視聴率的には振るわない『月9』枠ですが、7月17日からスタートする『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』は必見でしょう。実に7年ぶりとなる同シリーズには、山下智久や新垣結衣、戸田恵梨香といったキャスト陣が再集結しているのはもちろんですが、スタッフ陣にも期待が寄せられます。というのも、脚本の安達奈緒子やプロデューサーの増本淳など、『リッチマン、プアウーマン』(2012年)を手掛けた制作チームが集っているからです。フジテレビ内でも精鋭といえる面々で、本作で『月9』枠が復活する可能性は大いにあるでしょう。さらに、窪田正孝ら注目の若手俳優が出演する関西テレビ放送制作のドラマ『僕たちがやりました』もフジテレビで放送されます。この2本だけでも、今期のフジテレビドラマは良い勝負ができるのではないでしょうか」
月9にとって最後の切り札ともいえる『コード・ブルー』が成功し、TBSのドラマ群より高い視聴率を記録すれば、ドラマ界の勢力図に大きな変化が生まれる可能性もありそうだ。
(文=松田広宣)