SPでも変わらない? 宮藤官九郎が『ゆとりですがなにか』で描く“ゆとり世代”の普遍的ドラマ

『ゆとりですがなにか』SPでも変わらない?

 「世代間の思考停止を招く呪いの言葉」という言葉で思い出すのは、山田太一脚本による『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983〜97年/TBS)だ。リアリティのある青春ドラマの名作だが、主人公の若者たちは、『ゆとり―』のまりぶが入ったような三流大学を出て、就職に苦労し、今ならブラック企業認定間違い無しの会社でハードな営業をやらされていた。主人公を演じた中井貴一の生年(1961年)で考えれば、彼らは「新人類」と呼ばれた世代。今は部長以上の立場になり、ゆとり世代をディスるこの世代も、かつては「これだから新人類は」と言われていたのだ。呪いの言葉は時を超えてめぐりめぐる。ちなみに、『ゆとり―』で正和の元上司・早川を演じる手塚とおるも1962年生まれでその世代に該当する。

 話が脱線してしまうが、『ふぞろいの林檎たち』=「新人類」と、『ゆとりですがなにか』=「ゆとり世代」の間には、「バブル入社組」がいて(一部、新人類とかぶる)、そちらも大量採用された当たり外れの大きい世代としてディスられがち。懐かしのトレンディドラマのほか、池井戸潤の小説をドラマ化した『連続ドラマW アキラとあきら』(7月9日スタート/WOWOW)で描かれるので、見比べてみるのも面白いかもしれない。

 さて、連続ドラマ版で世代の呪いから解き放たれたはずの“ゆとり”たち。今回のスペシャルドラマでは、彼らが自信を持って人生を歩んでいるのかと思いきや、そうはいかないようだ。人間はそう簡単に成長しないし、変わらない。それもまた、宮藤官九郎作品らしい描き方と言える。山路が今度こそ童貞を卒業できるかと思いきや、できない。というようなノリで長く続けてほしいシリーズだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『ゆとりですがなにか 純米吟醸純情編』
日本テレビ系にて、7月2日(日)&9日(日)22:30~23:25放送
出演:岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラ、太賀、島崎遥香、高橋洋、吉岡里帆、清野菜名、手塚とおる、青木さやか、蒼井優、でんでん、中田喜子、吉田鋼太郎
脚本:宮藤官九郎
演出:水田伸生
プロデューサー:枝見洋子、仲野尚之(AX-ON)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/yutori/special2017/index.html

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