『ひよっこ』を掻き乱す“変なおじさん” 峯田和伸から漂う悲哀の格好良さ

 以前、ミュージシャンと俳優では、芝居において間の取り方が違うと語っていた女優がいた。確かに、峯田が主演した作品での対人物との間の取り方は特徴的だ。言葉を飲み込んでいるわけではないが、半拍程度、間がある。その間は、現在放送中の『ひよっこ』でもいえる。宗男が登場するシーンでは、確実に作品のテンポが変わる。一言でいえばタメができる。制作側もそこを引っ張って楽しんでいるように感じられるし、観ている側も余白を想像できる。ダメな男はよりダメに見えてしまう。

 例えば、今週、みね子の実家にやって来た宗男が木村佳乃や古谷一行と会話をするシーンも、演出上の音楽効果もあるが、シビアなシーンから一転するように雰囲気が変わった。そこには峯田の醸し出す間も影響しているのだろう。その後、電報、ビートルズの流れも、非常にスムーズで見ている人に期待を持たせた。

 「自身と役柄に境界線がないように感じる」と以前、峯田と共演した麻生久美子は舞台挨拶で語っていたが、役柄に憑依するというよりは、峯田に役柄が寄っていくということだろう。自身も本職はミュージシャンだという自覚があるようで、ロジカルに演じるというよりは、自身にシンクロさせているようだ。

 独特の間と、演じていないナチュラルさ、さらに格好悪ければ悪いほど漂う、悲哀の格好良さ。今後、宗男の見せ場も増えてきそうな『ひよっこ』だが、峯田が物語をどんなペースでかき乱してくれるのか――注目したい。

※公開時に一部誤りがありましたので訂正してお詫び申し上げます。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ひよっこ』
出演:有村架純、沢村一樹、木村佳乃、羽田美智子、佐久間由衣、泉澤祐希、峯田和伸、津田寛治、宮原和、高橋來、佐々木蔵之介、古谷一行、宮本信子ほか
作:岡田惠和
音楽:宮川彬良
平成29年4月3日(月)〜平成29年9月30日(土)全156回(予定)
<総合>
(月〜土)午前8時〜8時15分/午後0時45分〜1時[再]
<BSプレミアム>
(月〜土)午前7時30分〜7時45分/午後11時〜11時15分[再]
(土)  午前9時30分〜11時[1週間分]
<ダイジェスト放送>
「ひよっこ一週間」(20分)
<総合>
(日)午前11時〜11時20分
「5分で『ひよっこ』」
<総合>
(土)午後2時50分〜2時55分     
(日)午前5時45分〜5時50分/午後5時55分〜6時
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/hiyokko/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる