草なぎ剛主演『嘘の戦争』と『銭の戦争』の共通点 韓流ドラマ的アプローチの鍵を握るのは?
初回は二時間ドラマとしてスタートしたこのドラマ。二回目の冒頭には、一回目のあらすじ説明があって、前回を見ていない人にも、あらすじを覚えていない人にも優しい作りになっていた。
初回のあらすじはこうだ。9歳のとき、父を何者かに殺された浩一(草なぎ剛)は30年後、詐欺師となってタイで暮らしていた。ある日、浩一は父を殺した実行犯と同じあざの持ち主に出会う。そのことをきっかけに復讐心がよみがえり、浩一は日本に帰国。実行犯を追う中で、30年前の事件の元凶が、大企業の会長・二科興三(市村正親)にあることを知る。浩一は偶然を装い、興三や彼の息子や娘に近づく。そして、初回のラストでは、刺されそうになる興三の身代わりになって浩一が刺されるところで終了した。
二回目は、刺された浩一が病院で目覚めたところからスタートする。そこで目覚めるのを待っていたのは、二科家の長男・晃(安田顕)と長女で女医・楓(山本美月)だった。この二人は、緊張感のある復讐劇の中にあって、どこか人が良くとぼけたキャラクターが出ていて、コミカルな味を出している。
コミカルなのは、この二人だけではない。浩一の元で詐欺師見習いをしている八尋カズキ(菊池風磨)も、浩一とのかけあいで、どこかとぼけた味わいを見せる。
対照的に、人を決して信じないのは、二科興三と、次男の隆(藤木直人)である。浩一が興三の命の恩人であるにも関わらず、何か魂胆があると勘ぐる腹黒さは、長男、長女コンビのお人よしさとは正反対である。この腹黒さのせいで、浩一は、入院後に興三と会うことすらできないのだ。
第二回では、その興三と会うこともできない浩一だったが、彼がよこした顧問弁護士が30年前の事件にかかわる人物だとわかる。このドラマは、毎回、ひとりひとり、事件にかかわる人物を復讐していき、最終的に興三というラスボスと対峙する筋書きで、その前に、倒すことに手こずる中ボスが藤木演じる隆になるのだろう。
このドラマは、このドラマ自体はオリジナル作品だが、韓国ドラマのリメイクの『銭の戦争』に続く、復讐シリーズでもある。だから、韓国ドラマに流れる復讐もののセオリーが今後の展開でも見られるのではないだろうか。例えば、復讐ものは、主人公の復讐心に寄り添ってドラマが進む。ただし最終的には、復讐したからといって、それで果たして主人公の心が救われるのか、結局は因果応報でないのか、と問いかけるものも多い。
このドラマでも、二話の最後に浩一は、二科家の長女、楓の心をとらえることで、二科家に入り込む決意をする。しかし、この楓の性格が純粋に描かれているために、彼女を騙しきって、父親と家族を破滅に向かわせていいのだろうかという揺らぎが浩一に生まれるのではないか、というフラグがすでに見えていた。また、浩一と詐欺師のパートナー関係にある十倉ハルカ(水原希子)とのちょっとせつない関係性も描かれることだろう。
しかし、そんな風に先々が見えることがドラマをつまらなくするわけではないだろう。ストーリーが多少見えたとしても、そのときに、登場人物たちがどういう選択をするのか、そして登場人物の言動に共感したり、心を動かされることを、視聴者は期待しているのだと思う。