『シン・ゴジラ』『夏目漱石の妻』で快進撃! 長谷川博己が2016年に飛躍した理由

 そして『夏目漱石の妻』の漱石役。ベテラン脚本家の池端俊策と『坂の上の雲』などを演出してきた柴田岳志ディレクターが組んだ“品質保証”のNHKドラマ。長谷川が柴田ディレクターにキャスティングの理由を聞いたら「今、一番勢いがあるから」と言われてしまったそうだが、本人は役作りのために舞台となる熊本まで足を運び、漱石作品をほぼ読破したという力の入れよう。その甲斐あって「メレディス(イギリスの小説家)も良い。人の性格をフィロソカリーにアナライズすることなど、実にうまい」というインテリ風の嫌味なセリフもさらっとこなしている。かと思えば、妻(尾野真千子)に家族の愛に恵まれなかった生い立ちを告白し「僕は自分の家族がほしい」と心情を吐露する場面では、ハセヒロらしい繊細な感情表現を見せた。第2話以降は、漱石が神経衰弱になってその反動から家庭内DVをしてしまうという展開になるが、制作陣は、文豪でエリート然とした漱石ではなく、傷つきやすく脆い存在としての漱石を描きたかったからこそ、ハセヒロをキャスティングしたのではないだろうか。余談だが、このドラマでは月9『デート〜恋とはどんなものかしら~』、『シン・ゴジラ』に続き、松尾諭と3度目の共演を果たしているのも面白い。長谷川博己には松尾諭がつきものというルールでもあるのだろうか。

 さらに、11月19日からは、NHK BSプレミアムで金田一耕助に扮する『獄門島』が放送される。現在、その撮影中とのこと。石坂浩二や古谷一行が演じてきた金田一を、この2人に比べればややアクが足りないハセヒロがどう料理するのか。NHKが「『セカンドバージン』でブレイクさせたハセヒロをうちの目玉に!」と必死に囲い込んでいる感もやや見える流れだが、2016年のハセヒロは、ファンではない人でも目に入るメジャーシーンで活躍しつづけ、主役スターとしての地位を確立することになりそうだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『夏目漱石の妻』
NHK総合にて、毎週土曜21時〜放送(連続4回)
出演:尾野真千子、長谷川博己、黒島結菜、満島真之介、竹中直人、舘ひろし ほか
作:池端俊策、岩本真耶
原案:夏目鏡子、松岡譲「漱石の思い出」
音楽:清水靖晃
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/dodra/souseki/

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