『グランド・イリュージョン』続編に見る、マジックと映画の相性ーー物語に仕組まれた“トリック”とは

『グランド・イリュージョン』奇術映画の魅力

 さて、本作では、劇中に登場するイリュージョンに関して、大まかな種明かしはされるものの、やはり具体的なネタばらしはされていない。マジックのネタばれよりも、随所に伏線が仕掛けられたストーリー上のトリックの方が重要視されているからだ。まるで映画のストーリー全体が一つのトリックになっていた『スティング』を彷彿させる構成が上手い。

 “フォー・ホースメン”が存在する理由が、前作のクライマックスで謎の黒幕によって明かされているが(厄介なことに、その黒幕が誰であるのか明かしてしまうと前作のネタバレになってしまうので、あまり詳しく書けないのがもどかしい)、今回は彼らを陥れようとする謎の天才エンジニアが、“フォー・ホースメン”の世直しイリュージョンを妨害する。ニューヨークからマカオに瞬間移動させられた“フォー・ホースメン”のメンバーが、世界中のあらゆるシステムに侵入できるコンピューター・チップを盗み出すというミッションを強いられる。

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 彼らのもつ術を駆使してチップを盗み出すシークエンスが、本作の見せ場の一つとなっているが、大仕掛けなイリュージョンが散りばめられた本作の中で、もっともシンプルなカードマジックが劇中でもっとも重要なトリックになるというパンチの効いた皮肉な展開もニクい。CG映像技術の進歩で、どんなイリュージョンも全く珍しいものではなくなってしまった昨今。シンプルなトリックを映画の材料に使うことで、ストーリーを重視した単なるエンターテイメント映画とは違う一面で観客を見事に煙に巻くことに成功した『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』。

 観客が“騙される快感”を、思う存分楽しめる作品に仕上げた“優れたストーリー”が、本作の最大のイリュージョンなのかもしれない。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観たことと、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観たことを心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』
9月1日(木)全国ロードショー
監督:ジョン・M・チュウ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、ウディ・ハレルソン、デイヴ・フランコ、ダニエル・ラドクリフ、リジー・キャプラン、ジェイ・チョウ、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン
配給:KADOKAWA
TM & (c)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://grandillusion.jp/

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