角川映画メディアミックスの“本気”と“意地”ーー企画展『角川映画の40年』レポート

企画展『角川映画の40年』レポート

 また、今回企画展を手掛けた東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員の岡田秀則さんは、「角川映画を通ってきた人間からすると、ついこないだのことという印象がある。でも、実際は『犬神家の一族』から数えて40年。40年というのは立派な歴史で。しかも日本映画の文脈でいえば、いわゆる昔から続く大手の映画会社ではなく、そこにいわば殴り込みをかけてきた会社でもある。その会社が継続してきたわけで、もう日本映画の中で遺産として考えていい時代が来たと思います。開催が始まってまだ間もないですが、おかげさまで今までフィルムセンターにこれまできたことがない方にけっこうご来場いただいています。改めて角川映画が日本映画に確かな足跡を残してきたことを感じています」と語る。

kadokawa-05th.jpg

 

 最後に、もう一点感じるのは、おそらく角川映画がなければ、手にしなかった原作も多いのではないかということだ。自身を振り返っても角川映画なくして横溝正史や森村誠一らの原作を手にしたかはなはだ心もとない。そういう意味で、角川映画は文学界、活字メディアに及ぼした影響も大。良いか悪いかは別にして、原作ものが多数を占める今の日本映画界の流れにも確実につながっている。

 そして、見れば見るほどに感じるのは、角川映画は広報戦略と切っても切り離せないこと。パブリシティ抜きに、その実像は見えてこないといってもいい。キャッチコピーをもじるわけではないが今回の角川映画の回顧もまた「(企画展の展示品を)読んでから(映画祭を)見るか、(映画祭を)見てから(企画展の展示品を)読むか」。そういう意味で、角川映画40周年の回顧は、今回の企画展からはじめるのも悪くない。いや、むしろ宣伝から入る方が角川映画らしいのかも。

(取材/文=水上賢治)

■イベント情報
<角川映画の40年>
会場:東京国立近代美術館フィルムセンター 展示室(企画展)
会期:7月26日(火)~10月30日(日)
開館時間:11:00~18:30(入室は18:00まで)
休室日:月曜日及び9月5日(月)~9日(金)
観覧料:一般210円/大学生・シニア70円/高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)無料
※料金は常設の「NFCコレクションでみる 日本映画の歴史」の入場料を含む。
※学生、シニア(65歳以上)、障害者の方はそれぞれ入室の際、証明できるものの提示が必要

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる