『13日の金曜日』の感覚は、いま映画の最先端に 様式化とポップ化が進んだ80年代ホラー

 このような80年代の感覚が、まさにいま映画の最先端の位置にあると言ったら、意外に思うだろうか。話題を集めたニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ドライヴ』(2011)が、ネオンカラーなど80年代風の雰囲気を洗練させ、新しい作品として蘇らせたのをはじめとして、スリラー界の新鋭アダム・ウィンガードの、様々なジャンルを横断してゆくカルト作『ザ・ゲスト』(2014)、コミカルなホラー表現から無軌道な方向へ突っ走ってゆく『ゾンビスクール!』(2015)など、80年代要素にこだわったフェティッシュな作品が、むしろ先進的な位置の作家によって作られているのだ。

 これらの作品に共通しているのは、ある種の研ぎ澄まされた美意識である。たとえば、ニコラス・ウィンディング・レフン監督が、その後『オンリー・ゴッド』(2013)、"The Neon Demon"(2016)と、80年代要素を自己の作家性に取り入れ、懐古主義を超えた映像表現に昇華させているように、80年代作品の持つ表面的な魅力や形式性が新しい映像感覚に結びつくことで、文学的なテーマを超えた、より新しい映画の創造に貢献しているといえるだろう。80年代映画を振り返るとともに、その価値観が息づくムーヴメントにも注目することで、現在の作品もより楽しめるのである。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

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■ムック情報
『私たちが愛した80年代洋画』
辰巳出版
発売日:8月9日
価格:1,080円

<インタビュー>
☆大根仁
☆武田梨奈
☆松江哲明

<ジャンル別ガイド>
☆アクション・アドベンチャー
☆SF・ファンタジー
☆青春・ラブストーリー
☆コメディ
☆ホラー・サスペンス

<企画>
☆80年代を彩った名匠とスターたち
☆70年代を食い尽くし、本格的に再起動されはじめた80年代ハリウッド大作
☆少年たちを熱狂させた80年代洋画ファミコン
☆80年代「洋画雑誌」が伝えた文化
☆80年代の主な出来事と洋画界の流れ

<コラム>
☆香港アクション映画の輝ける名シーン
☆戦争映画が伝える普遍的なメッセージ
☆81年のMTV開局が音楽と映画を近づけた
☆親の目を盗んで観たあの頃の“お色気”映画
☆一瞬も目が離せない! クライムサスペンスの傑作

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