『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督インタビュー
『日本で一番悪い奴ら』白石和彌監督が語る、インモラルな映画を撮る理由
「今の時代はしがらみが多すぎる」
ーー過去作の『ロストパラダイス・イン・トーキョー』や『凶悪』では、社会的弱者にスポットが当てられていましたが、本作では、警察という立場にある人間を中心に描かれています。その辺りはなにか意識の変化があったのですか。
白石:いままでのように弱者を中心に描くことはないぶん、優位な立場にいる人間がどんどん地に落ちていく様を描きたかったのかもしれません。ただ、特にそれを意識したというより、よりエンタメ性の強い作品を作りたいと考えていました。
ーーエンタメ性というと?
白石監督:最近は映像に関する規制がどんどん厳しくなってきていて、特にテレビ放送ではインモラルなことができなくなっています。だからこそ、映画だからできることを撮るべきだと思っていて。例えば、劇中にあるトルコ風呂のシーンはカットしても物語に影響を及ぼさないけれど、こういうシーンの積み重ねが映画全体の空気感を作っていく。大筋とは別にあるシーンも丁寧に作り込むことが、かつての日本映画みたいな勢いのある作品につながっていくのではないかと考えています。
ーー白石監督が思うかつての勢いがある映画とはどのような映画ですか?
白石監督:なんと言うか……行儀の良くない映画ですかね。不特定多数の人間から来る苦情を恐れず、多少乱暴でも作りたいものを作ってしまうような。ただ、今の時代はしがらみが多すぎて、そういう攻めの姿勢も持つことさえも難しくなってきているとは思います。
ーー次にどんな作品を撮りたいのか考えていますか?
白石監督:次回作としては、日活ロマンポルノの作品を進めています。池袋を舞台にしたデリヘル嬢の話で、デリヘル嬢たちが夜な夜な街を徘徊していく中で、そこから新しい何かが生まれてくるのか……この世の中には色んな人がいるよねっていう話にしようと思っています。
(取材・文=泉夏音)
■公開情報
『日本で一番悪い奴ら』
公開中
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社文庫)
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
出演:綾野剛、中村獅童、YOUNG DAIS、植野行雄(デニス)、ピエール瀧
配給:東映・日活
(c)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
公式サイト:www.nichiwaru.com