小栗旬は『銀魂』主人公役をどう演じ切る? そのキャリアと福田雄一監督との相性から考察

 実写版『銀魂』の主人公・坂田銀時役に、俳優の小栗旬が抜擢され話題を呼んでいる。原作漫画『銀魂』(作:空知英秋)は、2004年から週刊少年ジャンプで連載されている看板コミックのひとつで、単行本(既刊64巻)の累計発行数は5000万部を越えるほどの人気作だ。実写化決定ニュースの配信直後は、ネット上で賛成派と反対派の声が飛び交うなど、様々な波紋を呼んでいる。

 本作は、天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人が襲来した江戸時代末期、江戸のかぶき町で“万事屋”(何でも屋)を営む主人公・坂田銀時が、仲間たちとともに様々な事件に巻き込まていく模様を描くギャグ漫画だ。SFと時代劇が混じり合った世界を舞台に、主人公たちが繰り広げるドタバタコメディや涙を誘う人情劇、さらに胸を熱くするアクションが盛り込まれた物語は、数多くの読者を魅了している。下ネタや時事ネタを取り入れたギャグや、第四の壁を破る破天荒な作風も特徴的だ。

 まず、小栗旬と『銀魂』の相性を考えてみよう。小栗演じる坂田銀時は、普段はだらしないダメ男だが、いざという時は頼りがいを発揮するキャラクターで、『シティーハンター』の冴羽りょうや、過去に小栗が演じた“ルパン三世”にも通じる性質も持っている。主人公が持つカリスマ性と、ギャグ役にも回れる三枚目の演技が同時に求められる役どころだ。小栗はこれまでに、『クローズZERO』でカリスマ的な強さを持つ不良のリーダー・滝谷源治役を演じており、ギャグ面においても『荒川アンダーザブリッジ』で河童の姿をした村長役をコミカルに演じていた。『あずみ』や『ルパン三世』では激しいアクションシーンをこなしているため、超人的な強さを誇る銀時の迫力ある殺陣にも期待できる。また、ビジュアル面では天然パーマの銀髪に和装と洋装をあわせた衣装を身につけている。小栗は、ドラマ『貧乏男子 ボンビーメン』(日本テレビ系)でボサボサの天パスタイルに挑戦しており、2016年の2月頃にテレビで銀髪姿も披露していた。ちなみに、坂田銀時の身長が177cmで、小栗旬は184cmなので、高身長なところもキャラ設定とは合致している。原作をどこまで忠実に再現するのかはわからないが、『ルパン三世』や『荒川アンダーザブリッジ』の時、小栗は原作キャラを徹底的に作り込んでいた。当然、賛否両論あるだろうが、本作でも完成度の高いキャラ作りが期待できる。

 本作の監督を務めるのは、独自のコメディセンスと発想力で『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京)や『アオイホノオ』(テレビ東京)などのヒット作を生み出してきたヒットメーカー・福田雄一。『銀魂』と同じく、少年ジャンプを代表するギャグ漫画『変態仮面』(作:あんど慶周)の実写版『HK 変態仮面』も監督している。実写での再現が難しい作風を、福田は見事にスタイリッシュなヒーロー映画に仕立て上げた。『変態仮面』にも通じる、高度なギャグセンスとシリアスな展開、そして迫力のある殺陣が必要とされる『銀魂』をどのように作り上げていくのか、その手腕が再び試される。ちなみに、小栗旬は『HK 変態仮面』に脚本協力で参加しており、鈴木亮平を主演に指名したのも彼だ。また、福田の代表作『勇者ヨシヒコと魔王の城』にも出演した経験があり、第10話のゲスト出演のみであったが、荒唐無稽なギャグが展開される福田ワールドにもしっかり溶け込んでいた。福田が『銀魂』実写化にあたり、「原作の魅力を実写化でも表現できればと、僕が確たる信頼を寄せている最強のキャスト、スタッフに集結していただきました」とコメントしていたように、ここでもふたりは息のあったコンビネーションを見せてくれるだろう。

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