白石晃士監督『貞子vs伽椰子』は、“対決モノの壁”をどう乗り越える? 

“VS”映画が超えなければならない壁

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 『貞子vs伽椰子』でも、最も重要なプロットは、何故貞子と伽椰子が対決しなければならないのか? という点である。今回の作品では、“呪いのビデオ”という今や過去の遺物になってしまった、VHSテープの存在が発端になっている。再生するハードもお茶の間から消えてしまった今、あの“呪いのビデオ”をどうやって再生させるのか? そしてそれを観てしまった山本美月扮するヒロイン有里の取った行動、そして佐伯一家の惨殺事件が起きた呪いの家に足を踏み入れてしまった、玉城ティナ扮するもう一人のヒロイン鈴花の運命が、最終的に貞子と伽椰子の2大対決へと発展する。

 起承転結の“起”の部分が弱ければ、クライマックスまで観客の興味を引くのは難しいが、『貞子vs伽椰子』の“起”の部分は問答無用の面白さだ。これまでの双方のシリーズを知らなくても、充分に見ごたえのある導入部で、観客の心を掴んだ後は、一気に観客を恐怖のどん底へと引きずり込む。

 ホラー映画の場合、あまりやりすぎると笑ってしまう事もあるが、白石監督の絶妙な匙加減で、観客をクライマックスまで退屈させない。最後に勝つのは貞子か? それともこれまで関わってきた人物を片っ端から呪い殺してきた伽椰子か? 衝撃の結末は是非その目で確かめてほしい。

■鶴巻忠弘
映画ライター 1969年生まれ。ノストラダムスの大予言を信じて1999年からフリーのライターとして活動開始。予言が外れた今も活動中。『2001年宇宙の旅』をテアトル東京のシネラマで観た事と、『ワイルドバンチ』70mm版をLAのシネラマドームで観た事を心の糧にしている残念な中年(苦笑)。

■公開情報
『貞子vs伽椰子』
6月18日(土)全国ロードショー
監督・脚本:白石晃士
出演:山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美、田中美里、甲本雅裕、安藤政信
制作・配給:KADOKAWA
(c)2016「貞子vs伽椰子」製作委員会
公式サイト:http://sadakovskayako.jp

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