『とと姉ちゃん』第三週目で描かれた、祖母と母の対立ーー母・君子の“朝ドラヒロイン”らしさ

 大家さんからの妾の誘いをことわった小橋君子(木村多江)は母の青柳滝子(大地真央)に手紙を書く。君子の実家は東京の深川にある老舗の材木問屋・青柳商店。滝子はそこの女将だった。父が他界してから一人で切り盛りして君子を育ててきたが、跡取りにするために強引に縁談を進めようとした滝子に君子は反発し、当時すでに結婚の約束をしていた竹蔵(西島秀俊)と共に浜松へとやってきたのだった。

 そのため、ずっと絶縁状態だったのだが、「荷物まとめて、こっちにおいで」という返事をもらった小橋家は浜松に別れを告げて、東京へと向かい青柳商店で暮らすことに。

 深川に辿り着いた常子(高畑充季)は町の活気に興奮する。一方、君子は仕事を求めて方々のお店を回るのだが、「四十女を雇うくらいなら若い子を雇う」と、断られてしまう。

 そんな君子の姿を見た常子は、少しでも母の役に立てばと、滝子の外回りに同行する。滝子は常子に商売の才覚があることを見抜き、ゆくゆくは青柳商店の女将にしたいと君子に言う。しかし君子は、自分たちを迎え入れたのは、娘の中から女将候補を選ぶためだったのと思い込み、娘たちを連れて青柳商店から出て行ってしまう。

 熊本大地震の影響で放送中止となった12話と13話の同時放送からはじまった『とと姉ちゃん』第3週だが、地震情報のテロップで囲まれた画面で見る朝ドラは、やはり今までとは少し違うものに感じられた。

 家の二階から深川を見ながら、「(この町も)随分変わりましたね」という君子に対して、青柳商店の筆頭番頭の隈井栄太郎(片岡鶴太郎)は、「震災で全て無くなりましたからねえ」と答える。

 震災とは大正12年に起きた関東大震災のことだ。次々と地震情報が画面に表示される中で聞かされる関東大震災についての会話は、なんとも複雑な気持ちにさせられる。朝ドラは明治・大正・昭和が舞台となることが多く、関東大震災から戦争に向かっていく戦前日本の歴史を、現在の日本に重ね合わせて描いてきた。

 滝子は「私はね、その普通の暮らしを守ることが自分たちの仕事だとも思ってるのさ。だからいい木を売って、何があっても壊れないような家を造る。それが私らの仕事のやりがいというかね、意地みたいなものなんだ」と、常子に言う。ここで常子は、とと(父)と同じように滝子もまた、「何より日常が大切で愛おしい」のだと考えていることを理解する。

 おそらくこの台詞は、本作が東日本大震災を踏まえた上で「日常の大切さ」を描こうとしているのだという宣言だったのだろうが、まさか放送中に大地震が起きるとは作り手も想定しなかっただろう。リアルタイムで放送しているテレビドラマでは、こういう意図せざる形でフィクションと現実が重なってしまうことがある。

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