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『スペシャリスト』最終回まで人気の理由は? “ドラマを観る習慣”根付かせる作風に迫る

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realsound-smapth_.jpg(C)タナカケンイチ

 いよいよ最終回を迎えるテレビ朝日の木曜ドラマ『スペシャリスト』。最近は録画が主流となっているだけに、視聴率の数字だけでその人気を測ることは難しくなっているとはいえ、今期の民放ドラマで一度も二桁を割っていないのは前期から続いている『相棒season14』と本作だけである。本作の前枠で放送されている『科捜研の女15』も平均視聴率二桁を超えており、もっぱらプライムタイムのドラマではテレビ朝日の一人勝ちの様相が、ここ数年続いているように思える。

 その勝因は、ターゲットをピンポイントに狙い撃ちする時間帯選びと作品選定だろうか。テレビ朝日以外の民放ドラマは20〜30代向けの作品を平日の21時や22時からほぼ毎日のように放送しているが、1クールに1本ぐらいはそれよりも上の年齢層に照準を合わせたドラマを製作している。若者向けのドラマがあまり響かない世代になると、必然的にそちらを選ぶというわけだ。

 今期だとフジテレビ火曜22時枠の『お義父さんと呼ばせて』あたりが他のドラマと比べると比較的高めの年齢層を狙っているが、あまり良い視聴率とは言えない。前クールで『サイレーン』を見ていた層の視聴者が離れてしまったことも一因としてあるのではないか。というのも、継続的に連続ドラマを追いかけさせるためには、それぞれのターゲットに合わせた放送枠を選び、習慣化させなければならないからだ。

 その点で、常に同じぐらいの年齢層にターゲットを絞ったドラマを継続的に展開しているテレビ朝日のドラマ枠は、“ドラマを観る習慣”を根付かせるためのベストな戦略を見抜いているようだ。水曜21時枠は『相棒』や『警視庁捜査一課9係』といった刑事作品が現在シリーズ化して入れ替わりに放送しているが、遡ってみれば『はぐれ刑事純情派』や『はみだし刑事情熱系』が交互に放送されていた時代もあって、この枠は刑事ドラマの枠だと多くの人が理解しているのだ。他の局のバラエティ番組を選ぶよりも、いつも同じものが見られる安心感の方を選んでしまう視聴者は少なくないだろう。木曜20時枠の「木曜ミステリー」も同様で、いずれにしても明確な人間ドラマと起承転結で1話完結となり、万が一どこか途中で見逃しても問題のない作りになっているというのがまた心強い。

 例えば若年層に平日の21時台に帰宅してドラマを見ているほどの余裕があるかと言われれば、決してそうではなく、録画して気が向いた時に一気に観る選択肢があるならば、そちらを取るだろう。対してそれよりも上の世代になると、習慣的に見なければ、わざわざ録り溜めをしてまでドラマを観る選択肢をなかなか選ばなかったり、中には録画機器の扱いが苦手な人も多いのではないだろうか。だからこそ、帰宅して夕食を食べて、いつもの刑事ドラマを見てから「報道ステーション」(こちらも平均視聴率13%台を維持している)というような流れを習慣にしている人が少なからずいるということが、安定した視聴率の推移から伺えるのである。

 そう考えると、『スペシャリスト』が放送されている木曜21時枠は、他の2つの枠と比べると、バラエティに富んだ作品を送り出しているので、そのような習慣を生み出しづらくも思える。それでも、大ヒットした『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』シリーズをはじめとした医療ドラマから、来クール放送の『グッドパートナー無敵の弁護士』のような司法ドラマのように、専門職を描いたドラマは、これまで“刑事ドラマ=テレビ朝日”という信頼を与えられてきた世代には最も響きやすい題材で、視聴者の習慣はそう簡単に乱れることはない。

 とくに、『スペシャリスト』は過去に4度スペシャルドラマが放送されている人気シリーズで、満を持しての連続ドラマ化となったわけだ。冤罪で服役した経験を持つ主人公・宅間(草なぎ剛)が、10年以上の服役生活で習得した犯罪者の心理を駆使して事件を解決に導く推理ドラマは、従来の刑事ドラマと比べてかなり異質なスタイルである。事件が起きても飄々としながら持ち前の能力を発揮する主人公のキャラクターは、『相棒』の杉下右京(水谷豊)の持つ“刑事としての直感”がよりロジカルになって現れているようにも思える。

 中でも刑務所時代の刑務官が起こした劇場型犯罪に宅間が巻き込まれる第5話は非常に秀逸な出来栄えだった。刑務所時代の知人の犯歴を参考に愉快犯の傍観心理から、密室の中で犯人を見つけ出し、その犯人の目の前で毒ガス装置の解除キーを解き明かすのである。解決の道筋は極めてシンプルであるが、5年以上前に刑務所で見た他の受刑者の受刑者番号をはっきりとアウトプットし、そこから法則を見出す一瞬の緊迫感は非常に巧い。その際に宅間の頭の中で導き出される数式が可視化され、少々大げさなようにも思える演出は、明快にこれから解決編に入るということを示唆している。

 一見複雑そうな犯罪心理学という分野を、それに卓越した主人公の記憶や分析を視聴者に明示することによって、多少複雑であっても決して難解にはさせないという巧さが、本作の最大の魅力となっているのだろう。今夜放送される最終話で、これまで隠されていた謎がすべて明らかになることで、ひとつの完結を迎えるだろう。それでも、おそらく今後シリーズとして継続していく可能性も充分に考えられる。そうなれば、いずれ『相棒』や『科捜研の女』と並ぶ、テレビ朝日ドラマが作り出した“習慣”の一部へと進化することだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■作品情報
『スペシャリスト』
毎週木曜夜9時放送/3月17日最終回
出演:草なぎ剛、南果歩、芦名星、和田正人、夏菜、平岡祐太、吹越満
脚本:戸田山雅司、徳永友一
監督:七高剛、及川拓郎、細川光信
制作:テレビ朝日、東映

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