秘密と嘘だらけの一家がなぜ共感を呼ぶのか? 『クーパー家の晩餐会』が描く家族のかたち

秘密と嘘だらけの一家がなぜ共感を呼ぶのか? 『クーパー家の晩餐会』が描く家族のかたち

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 ネルソン監督は、クーパー家の人物を描くにあたって、ひとりひとりのキャラクターにいま起きている出来事とともに、個々が抱える過去の重みが伝わるようにフラッシュバックの手法を取り入れ、観客が内面を感じ取れるような作品にしたという。たとえば、医師と不倫中の娘・エレノア(オリヴィア・ワイルド)も、リストラされ失業中の息子ハンク(エド・ヘルムズ)も、母・シャーロットは無邪気な子どもの頃の姿と重ねて捉えている。シャーロットの父で元教師のバッキー(アラン・アーキー)が、ダイナーのウエイトレス・ルビー(アマンダ・セイフライド)に想いを告げるシーンでは、青年時代のバッキーがオーバーラップし、その心象風景を浮き彫りにする。姉・シャーロットへのプレゼント代を惜しみ、万引きで逮捕されたエマ(マリサ・トメイ)に対してさえも、姉に憧れつづけた幼少の姿を重ねることで、羨ましさが嫉妬心へと変わったというバックボーンを描き、観客が同情できる余地を残している。

 家族の全員が一見すると正しいとは言えない行いをしているのだが、しかし共感を抱けるように描かれているのは、監督が「家族の中で誰も間違っている人はいない」ことを伝えたかったからだという。ライフサイクルも価値観も異なる人間同士が、家族として歩み寄るためには、監督が伝えるようにそれぞれの立ち位置に理解を示すことが必要不可欠だろう。

 しかし、それだけでうまくいくほど、人間関係というものは単純ではない。家族だから言えることもあるし、言えないこともある。本音をひた隠して集い合い、表面上の団らんを取り繕う家族の姿を通じて、本作は改めて「家族とはなにか」を問いかけてくるのだ。ユーモラスな作風に笑いつつも決して他人事には感じられないのは、本作で描かれる家族の問題が、アメリカのものだけではないからである。

<参考文献>
*1:GQ今、あらためて問う“家族”の定義
*2:サントリー 家族に関する国際調査 アメリカの家族 

■内藤裕子
ライター。2004年より雑誌の編集、WEB企画、商品企画をメインに、イベント企画、総務、人事、広報を経てクリエイターのマネージメントに携わる。現在看護師として働く傍ら、写真関連のUstreamの企画構成にも携わる。

■公開情報
『クーパー家の晩餐会』
2月19日(金) TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次ロードショー
監督:ジェシー・ネルソン
出演:ダイアン・キートン、ジョン・グッドマン、アマンダ・セイフライド、オリヴィア・ワイルド、アラン・アーキン、エド・ヘルムズ、マリサ・トメイ、ジューン・スキッブ、ジェイク・レイシー
配給:ギャガ
(c) 2015 CBS Films Inc. All Rights Reserved.

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