松山ケンイチ、『の・ようなもの のようなもの』舞台挨拶で故・森田芳光監督への思いを語る

『の・ようなもの のようなもの』会見レポ

 第28回東京国際映画祭パノラマ作品部門に出品されている映画『の・ようなもの のようなもの』の公式上映(ワールド・プレミア)が、10月29日(木)、TOHOシネマズ六本木で行われた。杉山泰一監督、松山ケンイチ、北川景子、伊藤克信がそろって登壇し、上映前に舞台挨拶を行った。

 2011年に亡くなった森田芳光監督の劇場デビュー作『の・ようなもの』(1981年)。本作『の・ようなもの のようなもの』で描かれるのは、その35年後を描いた“続編”にあたる物語だ。前作と同じく、古き良き下町・谷中を舞台に、生真面目なばかりでサエない落語家・志ん田(松山ケンイチ)が、落語を捨てて気楽に生きる兄弟子・志ん魚(伊藤克信)と出会い、悩みながらも自分らしく生きる楽しさを知ってゆくという物語。そんな本作を撮り上げたのは、『の・ようなもの』以来、数多くの森田作品で助監督を務め、本作が長編初監督作となる杉山泰一監督である。冒頭の挨拶で、監督は次のように語った。「4年前に他界された監督への恩返しの思いを込めて作りました。今ここにいる3人のキャストの方々も、同じような思いで出演していただいたと思っています」。

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 さらに監督は続ける。「といっても、堅苦しい映画ではありませんので(笑)、森田さんの『の・ようなもの』を観ていない方でも、十分楽しめる作品になっていると思います」。しかし本作には、森田芳光監督ファンには堪らない、いくつかの仕掛けが施されているようだ。まずは、松山ケンイチ演じる主人公・志ん田。彼のモデルとなっているのは、森田監督の遺作となった映画『僕達急行 A列車で行こう』(2012年)で松山が演じた主人公・小町圭であるという。松山は言う。「最初に台本を読んだときは“志ん田”としか書いてなかったのですが、衣装合わせのときに、『これ、小町っぽくないですか?』っていう話になって……で、実際現場に入ってみたら、(森田作品の)いろんな役を引きずっている人たちばっかりだったんです。『の・ようなもの』の続編として、こういうふうにやるのもひとつのオマージュやラブレターじゃないですけど、何かそういうものもあるんだなと、僕はちょっと感動しました」。

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松山ケンイチと北川景子

 その思いは、志ん田が恋心を寄せる師匠の娘・夕美を演じる北川景子も同じであったという。「森田監督と初めてお仕事させていただいたのが、『間宮兄弟』(2006年)の夕美役で……今回、台本をいただいたとき、それとまったく同じ“夕美”という役名が書いてあったので、これはもうそういうことなんだと言うか、森田組ならではのシャレなんだなと思って。その後、フィッティングに行ったら、もう10年も前に撮影した『間宮兄弟』のときの衣装がそこにあったので、『やっぱり、そういうことだったんだ』って思いました(笑)」。その言葉を受けて、前作『の・ようなもの』に主演した伊藤が言う。「35年経って続編ができること自体、そもそもあり得ない話で、まずはそこにビックリしました。でも、それが成立したのは、尾藤さんやでんでんさんをはじめ、前作で僕の兄弟弟子を演じていた方々が、全員健在だったからであって……長生きに感謝です(笑)」。

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