残念なイケメン、TEAM NACSの戸次重幸が体現する40代のリアリティとは

戸次重幸、残念なイケメンの強みとは

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 この映画の中の戸次は、田舎で同級生がどんどんおじさん化していく中で、ひとりだけ若さを保っていて浮世離れしている。そんな風貌からは、浅はかな夢や幻想の捨てられなさが感じられて、胡散臭さを読み取ることができるのだ。このように、今年の代表作を見ただけでも、戸次のバリエーションは豊かなのである。

 巷では所謂イケメン俳優は、30代で悩むと言われている。それは、20代ではイケメンの群像劇が多数作られていて需要があるのだが、30代では群像劇も減り、個性を打ち出して頭一つ抜けるのが難しくなるからだと聞く。しかし、戸次のように、40代でもイケメン性を保ちながら俳優をしていることは、逆に珍しいことになり、そのことによって怪しい雰囲気が醸し出され、それが個性になることだってあるのかもしれない。

 戸次は、ドラマや映画で普通のサラリーマンを演じていても、この人、この後、何かひと波乱あるんじゃないかと勘繰ってしまうし、戸次が卑屈な役を演じていると、ほか人が演じるよりも闇が深そうだし、何か残念な出来事があとあとまで引きずっているのだなと思わされる。その、何か裏にあるのではないかと思わせる感じが、現時点での戸次にしかない魅力ではないのだろうか。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『ホコリと幻想』
9月26日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷(レイト)他全国順次ロードショー 
9月12日(土)よりディノスシネマズ旭川/ディノスシネマズ札幌劇場北海道先行公開

監督・脚本・編集:鈴木聖史  
出演:戸次重幸、美波、遠藤要、内田朝陽、奥山佳恵、本田博太郎      
配給:アイエス・フィールド
2014年/日本/カラー/5.1ch/DCP/ビスタサイズ/92分/G 
(C)2014 Real Scale project/DESAFIADORES
公式サイト

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