マウンティングを制するものは人生を制す? 異色の自己啓発本『人生が整うマウンティング大全』誕生の背景

 “マウンティング”という言葉に対し、あなたはどのようなイメージを抱くだろうか。「上司が学歴のマウントをとってきた」と言った具合に、おそらくネガティブなイメージをもつ人が大半なのではないだろうか。

 ところが、『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社/刊)は、このマウンティングをポジティブな意味で捉え、仕事、さらには人生にも大いに役立てるべきだと説く、異色の自己啓発本である。この本の執筆を手掛けたマウンティングポリスさんに、マウントがもつ意味、そしてなぜ現代にマウントが重要なのか、話を聞いてみた。(山内貴範)

マウンティングを役立てる

マウンティングポリス『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)

――ポリスさんはなぜマウンティングに注目されたのでしょうか。

ポリス:ビジネスパーソンはいろいろなスキルを学ぶべき――とする風潮の中で、何が重要なのかと考えていった結果、“マウンティング欲求”こそが、これからの時代を生き抜く重要な要素であるという奇天烈な結論に至りました。この考えをSNSのアカウントを通じて世間に問うてみたところ、比較的感触が悪くなかったのです。

――とはいえ、マウンティングに否定的な考えの方もいらっしゃったのでは。

ポリス:もちろんそうした声も少なからずあったのですが、肯定的な見方の人も少なからずいたんですよ。しかも、肯定的な人の属性を見ると、社会的な地位の高い人、知的エリート層の方が多い。世界を動かしている方にとってはマウンティングは重要なのではないかと思ったのです。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』という本を読むと、エリートはマウンティング欲求を理解していることがわかる。マウンティングを通じてコミュケーションを有利に進めたり、事業の中で顧客が買いたくなる体験を設計できているのではないか、という考えをもちました。

――こうした研究をもとに、今回の本が生まれたわけですね。

ポリス:そうですね。お茶の水女子大学でマウンティングを研究した論文が、2022年3月にバズったんです。それを見て、編集者の傳さんに企画書を送りました。これまでの研究実績を見てもらって、書籍化がトントン拍子に進みました。

マウンティングにはどんなものがある?

マウンティングポリス氏

――本の中身は、ポリスさんの実体験に基づいて書かれた部分も多いのでしょうか。

ポリス:SNSを参考にしたものが結構多いですね。友人のフェイスブックなど、私が日々SNSでマウンティングの生のデータを拾い集め続けたところ、気づけば2017年から約3万の事例が集まりました。このデータベースをもとに、マウンティングについて調べ上げたのです。

――約3万は凄いですね。集めてみて、傾向のようなものはありましたか。

ポリス:SNS社会によって、人々のマウンティング欲求は顕在化しているんだなと。そして、一見するとマウンティングに見えないマウンティングが増えているな、ということがわかりました。人間の根源的な欲求として、何かしら自慢したいという想いはありますが、自慢しすぎて嫌われてしまうと、コミュニティから外れてしまうわけです。嫌われるか、好かれるか、そのギリギリの絶妙なラインを狙ったマウンティングが増えていると感じます。

――印象深い事例にはどんなものがあるのでしょう。

ポリス:例えば、現在ビットコインが上がっているからこそ使える、「昔はビットコインが理解されていなかったから辛かった」というマウンティングがあります。俺は時代に先駆けすぎていた、だからあの頃はつらかった、周りに理解されていなかった……と言いたいわけですね。編集者やインタビューを生業にする方は、こういった「辛かった」マウンティングを引き出す仕事が多いのではないでしょうか(笑)。

――おっしゃる通りです(笑)。

ポリス:他には、Clubhouseなどで芸能人と横に並んでいる自分の写真をSNSに載せる文化もあります。サッカー日本代表の本田さんとか、「有力者や権威と近い自分を示して自分の価値を誇示しようとする」マウンティングはいつの時代もありますよね。日々新しい文化が生まれていますが、マウンティング欲求という人間の根源的な欲求は健在だということです。

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