TETORAという居場所を全力で分かち合った『KAKUSEI CLUB』 ハルカミライ&スサシと激突、“挑戦の場”ならではの熱気

TETORA主催『KAKUSEI CLUB』レポ

 TETORA主催のライブイベント『KAKUSEI CLUB』が8月2日、大阪・大和大学内 大和アリーナで開催された。

 TETORAの上野羽有音(Vo/Gt)がバンドを始めたきっかけは、10代の頃、自宅近所で開催されていた『京都大作戦』を訪れたこと。2025年8月2日には、『京都大作戦』を手掛けた関西地区のプロモーター・サウンドクリエーターの力を借り、TETORA初の主催フェス『TETORA presents KAKUSHIN CLUB』を開催。ライブハウスで切磋琢磨してきた同世代のバンドを集め、彼らが育んできたシーンの存在感を浮かび上がらせた。あれからちょうど1年後、前年と同じ大和大学で開催された『KAKUSEI CLUB』は、ハルカミライ、SPARK!!SOUND!!SHOW!!とのスリーマンライブ。同世代だけでフェスを作り上げた昨年に対し、今年は先輩バンドとの対峙という、新たな“挑戦”の場となった。

『KAKUSEI CLUB』

 トップバッターを務めたのは、SPARK!!SOUND!!SHOW!!。「CLUBにはダンスが必要」と語る通り、ロックもパンクもヒップホップもエレクトロも自由に取り入れたミクスチャーサウンドで、フロアを派手に掻き回していく。時にはクラウドサーフやウォールオブデスも巻き起こしたほか、ハルカミライの関大地(Gt)が飛び込みで参加するサプライズもあり、大和大学のフロアを早くも大きく揺らした。TETORAへ「大学の敷地内で合法的にバカ騒ぎできるクールなパーティを開いてくれて、ありがとうございます!」と伝えながら、不敵に笑うタナカユーキ(Vo/Gt)の姿が印象的だった。各バンド50分という長尺のステージだからこそ、彼らは刺激的なアッパーチューンだけでなく、グルーヴをじっくりと聴かせるナンバーも披露。タナカが大和アリーナの音の響きを楽しむように、歌を丁寧に届ける一幕もあった。

 ハルカミライのステージでは、橋本学(Vo)が「バンドってのは1回か2回……3回あったら多い方かな、カクセイの瞬間があるんです。たったそれっぽっちの瞬間が、どうか今日でありますように。願いを込めて、TETORAにぶちかまして帰ります」と宣言。有言実行とばかりに、TETORAに真正面から応えてみせた。彼らにとってセットリストはあってないようなもので、「照明さん、アレっす!」と言いながら、心のままに演奏を重ねていく。フロアに生まれた巨大サークルの中心から橋本が「春のテーマ」を歌い始め、シンガロングに包まれた場面や、フロアにいた子どもに「お嬢ちゃん、バンド好きなの?」と語り掛けた一幕は、この日ならではのものだった。最後の曲「ラストベット」とともに届けた「俺たちはまだ旅の途中。まだまだやれることがあるってことだね」という言葉には、先輩としてTETORAに背中を見せるだけでなく、自分たちもまた、この先へ進み続けるバンドでありたいという意思が込められていた。

 TETORAのライブは、上野の弾き語りからスタート。今年3~6月に開催された『エピソード0ツアー』でも観客に届けてきたとっておきの言葉を、今度はこの場所で歌に乗せて差し出した。歌い終えた上野が「確かに響くね。めっちゃいいね!」と笑うと、いのり(Ba/cho)、ミユキ(Dr/cho)が音を重ね、1曲目の「わざわざ」に突入する。そして観客に「一緒に行こう!」と伝えながら、「本音」へと切り込んだ。続く弾き語りでは、上野が10代の頃を振り返りながら、対バンの2組についても語る。

『KAKUSEI CLUB』
上野羽有音(Vo/Gt)

「10代の時、地元でやってるフェスに行ってバンドを組みたいと思ったよ」

「吹田駅を自転車で通ったところの学校で、初めて組んだTETORAっていうバンド」

「ライブハウスの楽しさをあの時教えてくれたのはハルカミライでした」

「きっと中学の時にSPARK!!SOUND!!SHOW!!と出会ってたら、一生スサシを聴いて授業なんて聞かなかったと思う」

 そんな弾き語りのあと、「吹田駅で始発の電車を待ちながら書いた曲です」と紹介して「ずるい人」を、さらに「さっきの曲の続き」と言って「今日くらいは」を披露。バンドの原点を思い起こさせるこの場所だからこそ生まれた特別な場面だった。

『KAKUSEI CLUB』
いのり(Ba/cho)

 冒頭に書いた通り、この日はTETORAにとって先輩バンドに挑む日。MCでは上野がハルカミライとSPARK!!SOUND!!SHOW!!について、「触ったら火傷しちゃうような先輩」だからこそ「わざと誘った」と明かした。ロックバンドとしてさらにカクセイするために、あえて強敵へ勝負を吹っ掛けたのだろう。では、そんな相手にどう立ち向かうのか。そこで上野は観客へ「一緒に戦ってくれますか?」と投げかけた。TETORAが選んだのは、メンバー3人だけで立ち向かうことではない。自分たちと同じようにロックバンドを好きになり、ライブハウスに足を運んできた人たちを仲間として、その存在を頼りに先輩たちに立ち向かう。観客との間に築いてきた信頼関係そのものに、無限の可能性を見出したのだ。

『KAKUSEI CLUB』
ミユキ(Dr/cho)

「いつも背中を見てた2バンド、今日は後ろからギュッと手を握りにきました。そして、その手をギュッと引っ張って、もっと前に進もうって言いにきました!」

 力強い宣言から始まった中盤ブロックでは、攻めの展開が続いた。「7月」から間髪入れずに「バカ」へなだれ込むと、鋭利なリフとともに「6月」を轟かせる。さらに「嘘ばっかり」「イーストヒルズ」「言葉のレントゲン」「10月」と、休む間もなく7曲続けて叩きつけた。上野は「普段学校や仕事頑張ってるヤツ! 家族が嫌な人! 学校や職場が嫌な人! いつもいる場所だけが世の中の全てじゃないから! 今、目の前にいるのは誰? “TETORA”が私たちの居場所!」「流行りの中にいるだけじゃ、本当に特別なものは見つからない!」と叫びながら、ギターを掻き鳴らす。いのりとミユキも、互いに火花を散らすように音をぶつけ合う。3人の放つ音に突き動かされるように、フロアからは拳が次々と突き上がり、歓声が溢れ出した。

『KAKUSEI CLUB』

『KAKUSEI CLUB』

『KAKUSEI CLUB』

 観客一人ひとりの熱を確かに受け取った上野は、「一番は、ロックバンドを好きでいてくれてありがとうございます。人が何言おうと、心が動くもの、貫いていこう」と返す。そして「夢中霧中」のサビを弾き語りで歌い始めた。ライブ限定のアディショナルアレンジ。〈出会えてよかったよ/出会わなきゃよかったよ〉という本来の歌詞を、この日は「出会えてよかったよ。先輩2バンドに。Orange Owl Recordsに。THE NINTH APOLLOに。ライブハウスに。今日、みんなに」と変えて歌った。やがて、いのりとミユキが加わると、上野ひとりの声による歌はバンド TETORAの歌となり、フロアの一人ひとりがその言葉を自分の心で受け取っていく。本編ラストナンバー「Loser for the future」まで、TETORAと観客は同じ熱量を共有したまま、最後まで走り切った。

『KAKUSEI CLUB』

 アンコールでは、観客とともに「素直」を歌ったあと、最後に「産毛」を届けた。上野はこの日、「これが私らのKAKUSEI CLUB。いろんなカクセイがあるから、それぞれいろんな解釈で気づいて帰ってください」という言葉を残してステージをあとにした。“カクセイ”の意味も、ロックバンドの価値も、ここにいる一人ひとりがそれぞれに見つけて、日常に持ち帰っていく。そしてまたライブハウスで再会できる日を、3人もまた心待ちにしているのだろう。

『KAKUSEI CLUB』

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