菊池桃子、新曲「Natalia」に息づく作詞家としての個性 壮大な情景描写の先に紡がれる、人に寄り添う言葉の温もり

菊池桃子「Natalia」に息づく作詞の個性

 強くシンコペートするキーボードのリフに、スリリングなメロディが重なっていく。菊池桃子が9月22日にリリースした「Natalia」は、自然への畏怖と憧憬が交差する楽曲だ。アイドル時代の可憐さを残す声は、サビでは力強さを増し、歌詞に描かれた広大な砂漠と向き合う。自分を超える大きな存在に圧倒されながら、その強さに近づきたいと願う気持ち。菊池自身が綴った言葉と歌唱が、その感情を伝えてくる。

菊池桃子が描く、そこに生きる人の感情と結びつく風景

 作詞作曲に力を注ぐ近年の菊池の歩みをたどると、この曲につながる表現の広がりが見えてくる。デビュー40周年を迎えた2024年のEP『Eternal Harmony』には、本人が作詞作曲した「Starry Sky」が収録されている。編曲を担当したのは林哲司。菊池は、長く自身の音楽を支えてきた林のイズムを自分なりに継承したいと考え、助言を受けたことを明かしている(※1)。「鏡」などでも詞曲を手がけてきた彼女が、その創作への思いをあらためて形にした一曲といえよう。

 その「Starry Sky」を、英語詞と新たなアレンジで届けたのが、今年5月20日にリリースされた「Starry Sky English Version」だ。近年のライブでバンドマスターを務める園田涼がストリングスアレンジを担当。見上げた星空に思いを馳せる、ロマンティックでドリーミーな世界が広がる。そのなかに、どこか切なさも残るのは、マイナーとメジャーの響きを行き交う展開によるところも大きいだろう。明るさと翳りのあいだで揺れる音楽は、未来への不安と、そこに希望を見いだそうとする心の動きを映しているかのようだ。

 菊池はこの曲について、幼い子どもたちに頼られていた頃の自分を、人生で最も勇敢だった時期として振り返っている。2コーラス目で星を眺める場面にも、自分と我が子を思い描いていたという(※2)。その背景を知ると、曲に宿る希望にも、一層の温もりが感じられる。星空をともに見上げた記憶や、大切な人を思う気持ちが、先の見えない未来へ進む力になる。切なさを含んだ曲調は、その願いを身近に感じさせるのだ。

 6月10日に発表した「紅のシルエット Strings Version」も、菊池の作詞作曲による楽曲だ。ライブで披露してきた曲を、園田の編曲によって、ストリングスとピアノをフィーチャーしたバラードとして届けた。語りかけるような歌い方が、相手への思いを一つずつ確かめるように響く。〈僕〉という一人称には、可憐な声と相まって少年性が漂い、恋する気持ちの初々しさを感じさせる。

 〈「また前髪、切りすぎだ!」って〉という何げない会話もユニークで印象に残る。ともに過ごす時間のなかで生まれた言葉が、来世で出会うための合図になる。相手への思いが募り、この先も同じように笑い合っていたいという願いが、夕陽の景色に重ねられていく。ピアノとストリングスの響きも、二人の時間を包むようだ。星空に未来を思う「Starry Sky」と、夕映えに明日への希望を託す「紅のシルエット」。菊池の描く風景は、そこに生きる人の感情と結びついている。

傷ついた人を迎える優しさを描いた「Natalia」

 続く「Natalia」では、その視線がアンデス寄りの砂漠へと向かう。園田の楽曲「ナタリア」に菊池がオリジナルの歌詞を書き下ろした作品で、作詞は菊池、作曲編曲は園田が担当。自ら書いた曲の編曲を託してきた相手の音楽に、今度は自分が言葉を与える。園田のメロディに砂漠の風景とナタリアという人物の姿を重ねる、その想像力にも、作詞家としての菊池の個性が表れている。

 歌詞のなかでナタリアは、〈地球由来の光を纏って〉〈引力みたく歩きだす人〉として現れる。その姿は、砂漠の大きな力を一人の女性に託したもののようにも読める。〈砂漠みたいに強くなりたいの〉から〈貴方みたいに強くなりたい〉へ。同じ願いの対象が自然から人へと移ることで、広大な大地への畏敬と、ナタリアへの憧れが重なる。音楽が生み出す緊張感も、自然の力に圧倒されながら、そこへ引き寄せられていく感覚と呼応している。

 ナタリアはまた、傷ついた人を迎え入れる存在でもある。〈街で受けた 傷が痛むなら/ここに来てと 彼女は呼んだ〉。その呼びかけによって、砂漠は心を立て直せる場所にもなる。〈はるかな昔 ここは海だった〉という一節が伝えるのは、目の前の風景に刻まれた時間の長さだ。かつて海だった土地に立ち、自分の日常をはるかに超える時間に思いを馳せる。そうすることで、抱え込んでいた痛みを、少し違う距離から見つめ直せるのかもしれない。

 強くなりたいと願っていた語り手は、やがて〈眩しくて優しくて/泣きたいよ〉と心を開く。ここで目を引くのは、自然の大きさへの畏怖が、涙を誘うほどの優しさと結びついていることだ。ナタリアの力強さには、傷ついた人が安心して身を寄せられる温もりがある。彼女のようになりたいという憧れにも、この場面を通じて、誰かの痛みを受け止められる人でありたいという意味が加わってくる。

 星空をともに見上げた記憶や、夕陽のなかで分かち合う日常、そして砂漠で差し伸べられる手。3曲の風景には、人が誰かを思い、支え合う場面が描かれている。菊池は、自身の経験を歌に託すときも、ナタリアという人物を描くときも、人と人との関わりのなかに希望を見いだしているのではないか。自ら言葉を綴ることで、歌い手として届けたい思いも、より鮮明になる。「強くなりたい」という願いの先に、傷ついた人を迎える優しさを描いた「Natalia」。その物語に、書き手としての菊池桃子の個性が息づいているのだ。

Natalia

※1:https://www.vap.co.jp/momokokikuchi_40th_anniversary/eternal_harmony.html
※2:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000176.000034440.html

■リリース情報
シングル「Natalia」
2026年9月22日(火)配信リリース
配信リンク: https://kmomoko.lnk.to/Natalia

シングル「紅のシルエット Strings Version」
2026年6月10日(水)配信リリース
配信リンク:https://t.co/mKcLIR2dOG

シングル「Starry Sky English Version」
2026年5月20日(水)配信リリース
配信リンク:https://kmomoko.lnk.to/StarrySky_EN

■関連リンク
菊池桃子公式サイト:https://momoko-kikuchi.com/
菊池桃子公式Instagram:https://www.instagram.com/momoko_kikuchi_official/
菊池桃子公式X(旧Twitter):https://twitter.com/momoko_kikuchi_
菊池桃子公式TikTok:https://www.tiktok.com/@momoko_kikuchi
菊池桃子40th特設サイト:https://www.vap.co.jp/momokokikuchi_40th_anniversary/
オフィシャルファンクラブ『MOMOCANS’』:https://fanicon.net/fancommunities/5792

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