4na、大病の経験を経た人生観の変化 映画にインスパイアされた新曲「Old Dance hahaha」制作背景を聞く

4na、大病を経験した人生観の変化

 シンガーソングライターの4naから新曲「Old Dance hahaha」が届けられた。

 昨年12月、2025年に入ってから「急性骨髄性白血病」と診断され、治療を受けていたことを公表した4na(現在は寛解)。「今の自分だからこそ作れる音楽があるはず」という思いとともに精力的な活動を続けている。

 「Old Dance hahaha」は、映画『時々、私は考える』にインスパイアされて制作した楽曲。抑制の効いたトラック、憂いと美しさが滲むメロディが溶け合うこの曲から、4naの新たな表現領域が伝わってくる。〈つま先でそっとふわってright/わたしもきっと 後もう一歩〉というリリックと共にビートが高揚していくエンディングもこの曲の聴きどころだ。

 病気の治療による人生観の変化、現在の活動状況、そして「Old Dance hahaha」の制作について、4na自身の言葉で語ってもらった。(森朋之)

「人間には必ず終わりが来るし、だからこそ毎日を大切にしたい」

ーー昨年12月に、急性骨髄性白血病の治療を受けていたことを発表しました。当時の状況を教えていただけますか?

4na:ずっと病院のクリーンルーム(無菌室)にいましたね。抗がん剤を入れた後は、白血球が回復するのを待つだけなんですけど、その期間がかなり長いんですよ。それを何回か繰り返して退院したんですけど、治療してる間はずっと寝て起きての生活でした。

ーー音楽を聴いたり、映画を観たりということは?

4na:それはやってました。もともとホラー映画が好きなんですけど、入院しているときは生死に関わるような内容の映画が観れなくなって、コメディだったり、軽く笑えるものを観てましたね。音楽も歌詞が入ってくるような曲が聴けなくて。洋楽だったり、あまり歌詞がわからないものを聴くことが多かったです。最初はかなり食らってたんですけど、だんだんと「これは自分の強みになるんじゃないか」と思うようになって。考え方自体もだいぶ変わってきたんですよね。

ーー価値観が変わった?

4na:はい。これは「変わり瞳」という曲にもつながってるんですけど……『PERFECT DAYS』という映画を観たときに、毎日過ごすなかで、ちょっとずつ起きる変化を楽しみながら生きるのがいちばんの幸福じゃないかなと感じて。ともすると日々をないがしろにしてしまったり、無駄に過ごすこともあったんですけど、(病気を経験して)「もう終わりかもしれない」とわかったときに、もっとやりたいことをやって、1日1日にちゃんと区切りを付けようと思ったんですよね。人間には必ず終わりが来るし、だからこそ毎日を大切にしたい。若いうちにそういう考え方ができるようになったのは良かったのかなと。

4na - 変わり瞳(MV)

ーー実際、生活にも変化があった?

4na:だいぶ変わりました。以前はかなり夜型だったんですけど、夜はちゃんと寝て、朝早めに起きるようになったのがまず大きくて。あとは寝る前にその日あったことを思い返して、感謝を伝えたい人がいたら「ありがとう」と伝えたり。やりたいことも少しずつやりはじめたんですよ。もともとやりたかったことだったり、入院中はできなかったことだったり、いろいろチャレンジしていて。小さいことだとパソコンのブラインドタッチを練習したり(笑)、あとはAIのG検定を取ったり。自分は沖縄出身なんですが、沖縄の子どもたちや地域の人に向けたイベントをやりたいと思って、小さい会社を設立したんですよ。観光客向けの施設はたくさんあるんですけど、地元の子どもたちの遊び場所は意外となくて。いろんな経験ができる機会があればいいなと。

ーー素晴らしい取り組みですね。

4na:あとは自分でホラーゲームを作ってSNSで共有したり、映画の感想文みたいなものを投稿したり、前から書いていた小説を少しずつ進めたり。音楽以外のこともいろいろあるし、すべてが生きがいになっています。

ーー以前の活動とはかなり様相が違っていますね。

4na:そうですね。以前は毎月のようにリリースしていて、ありがたいことに音楽に集中させてもらっていて。すごく楽しい日々を過ごしていたんですけど、そういう状態から、無理矢理引き離されてしまって。そのときはやっぱり不安でしたね。「忘れられるんじゃないか」とも思ったし、何も説明しないでいる状況が1年以上続いていたことも申し訳なくて。曲も全然出してなかったから「どうしたんですか?」という連絡もSNSにいっぱい来ていたし……。病気のことを公表するのも、最初は葛藤があったんです。自分の重荷になったり、ラベルを貼られてしまうんじゃないかという心配もあって。

ーーそれでも公表することにしたのはどうしてなんですか?

4na:自分自身と4naを分けるつもりはなかったし、全部が自分の人生だなと思ったからですね。赤裸々にすべてを知ってもらうことで、もしかしたら何かを感じてもらえるかもしれない。そのうえで楽曲を聴いてもらって、その人の人生に少しでも関われたらなと。今はこうやってThe Orchardを通じて楽曲を配信させてもらっているし、音楽以外のことにも挑戦していて。二つの忙しさが押し寄せているのがすごく幸せですね。

映画から受け取ったものを音楽に昇華する制作スタイル

ーー音楽的なスタイルについてもお聞きしたいのですが、以前は本当に音楽性が広くて。1曲1曲まったく違うことをやっている印象もありました。

4na:まさにおっしゃる通りですね。「このアーティストと言えば、こんな楽曲」という感じになったほうが色を出しやすいし、アーティスト性を確立することにもつながると思うのですが、僕は一つのジャンルに縛られるのが性格的に好きじゃなくて。音楽活動を始めた頃は自分のスタイルをどう提示していいかわからないなか、まずはいろんな曲を出していたところがあったんです。ただ、試行錯誤もあったし、曲によって聴かれる界隈が違ったり、どうしたらいいのかな? という葛藤もあって。今はちょっと違っていて、自分が好きなものをどんどん見せていこうと思っています。映画や本、美術館なども好きだし、音楽もジャンルレスにいろいろ聴いていて。それを作品のなかにちゃんと反映させたいんですよね。そうやって4naそのものを愛してもらえたらなと。

4na - 最上級の愛を(Music Video)

ーー楽曲だけではなく、4naさん自身を発信していく。

4na:そうですね。前はちょっとカッコつけていたというか、寡黙なほうがカッコいいと思っていたところがあって。2020年くらいは顔を出さないで活動するアーティストが増えていたし、僕もただ曲だけをリリースしていたんですけど、今は自分の好きなものをどんどん見せていきたくて。自分の人となりを知ったうえで音楽に興味を持ってもらえるのが理想ですね。

4na「Old Dance ha ha ha」
「Old Dance hahaha」

ーー新曲「Old Dance hahaha」からも現在の4naさんのモードが伝わってきました。

4na:クセが強いと言いますか(笑)、自分が好きなものが出ているかもしれないですね。以前も好きな曲を作ってたんですけど、どこかに「好かれたい」みたいなところもあって。今回の曲は自分が聴きたい曲を作ったという感じですね。こういう洋楽的なサウンドと日本っぽいメロディの組み合わせが好きだし、ノリノリで作ってました。

ーーもともとは映画『時々、私は考える』にインスパイアされたことがきっかけだったとか。

4na:そうです。なんとなく面白そうだなと思って観た映画なんですけど、観ているうちにすごく考えさせられて。主人公はこの社会のなかで生きづらさを抱えている女性で。幻想的な死を思い描く妄想癖があるのですが、社会はずっと目まぐるしく動いていて、その歯車のなかに入らなくちゃいけない。朝起きて、会社に行って、話しづらい人たちと話して、ときどき失敗して。そういう日々の繰り返しのなかで、どうやって生きていくか? という。基本的には淡々と進んでいくんですが、観ている側もだんだん苦しくなってくるんですよ。その感覚を音楽で表現できたら面白いだろうなと思って作ったのが、この曲ですね。

ーー映画から受け取ったものをメロディや言葉、サウンドに置き換えていったと。抑制されたメロディとボーカルはこれまでの4naさんの作風とは少し違いますね。

4na:以前は声をいっぱい入れることが多くて、曲によっては何十人もコーラスしているように作ることもあったんですけど、この曲はずっとボーカル1本ですからね。そうすることで“独りぼっち”という雰囲気を出せたらなと。初めてに近い挑戦だったと思います。歌詞もそう。これまでは“一歩踏み出してみよう”“新しいことをやってみよう”“これからが楽しみ”というポジティブな歌詞を書くのが好きだったんです。「Old Dance hahaha」にも最後に〈わたしもきっと 後もう一歩〉と歌っていて。そこから一気に曲調が変わるんですけど、「今までは苦しかったけど、ここからやり直せそう」と感じる方もいれば、あっちの世界に行ってしまうような印象を持つ方もいるんじゃないかなと。僕自身は後者のイメージで作っていたんですけど、そこは聴いてくださる方々の捉え方でいいと思っています。

ーーこの曲の歌詞には、4naさん自身の感情も反映されている?

4na:そうかもしれないです。もともとポジティブな性格なので、ネガティブな歌詞を書くときは近しい人の体験談や小説や映画を基にすることが多くて。今回も『時々、私は考える』がきっかけなんですけど、自分が体験したことから物語を作りたいという感じもあったので。自分が抱えているナイーブな部分、不安みたいなものを表現できるのは今だからなのかなと思います。

ーー歌詞の深みが増していますよね、まちがいなく。

4na:年を重ねるにつれて歌詞の重みが変わってくるというか。ただ「メロ重視」というのはずっと同じなんです。「1回聴けばサビが頭に残る」というのをいちばん大事にしていて。この曲はもしかしたら今の若い子が聴いているジャンルとは違うかもしれないけど、それでもメロディだけは耳に残る、また聴きたくなるようにしたかったんですよね。メロディがいちばんで、歌詞はそこにハマるように書いているので、そこは洋楽的かもしれないです。洋楽ってきっちり韻を踏むことが多いじゃないですか。そこは自分も意識しているし、そのなかでどう物語を伝えるか? ということですね。

ーー歌詞に関してもう一つ。この曲の主人公のように、寄る辺なさを感じることはありますか?

4na:稀な病気になったので、そこはマイノリティかもしれないですね。あとはコンプレックスのほうが強いのかも。もともと僕は医学部を目指してたんですよ。ドラマの『ごくせん』を再放送で見て、「ヤンキー怖いな。勉強しよう」と思ったのがきっかけなんですけど(笑)。

ーー偏差値の高い学校に行けばヤンキーはいないだろうと?

4na:はい(笑)。小学生のときから医者になるって決めて勉強したんですけど、高校のときに挫折してしまって。東京に行きたかったんだけど、医学部のある東京の大学に現役で受かるのはハードルが高すぎたんですよ。そこで医学部を諦めたんですけど、そのときに「今まで何をやってんだろう?」と思ってしまって、何もやらない時期があったんです。周りの友達とかはしっかり仕事してたりして、余計にコンプレックスを感じてしまって。

ーーコロナ禍もあったし、どうしたらいいかわからない時期でしたよね。

4na:でも、あの時期に出てきたアーティストの方もいらっしゃったじゃないですか。Vaundyさんもそうだし、和ぬかさんとか。「しっかり音楽をやっている人がいるじゃん」と思って、それまで趣味としてやっていた音楽にちゃんと向き合ったところもありますね。

「後悔しないように、やれることをやっていきたい」

ーー今も制作は続いてるんですか?

4na:はい。ありがたいことにオファーをいただくこともあるし、自分が作りたい曲もあるので。さっきもお話させてもらったように、やりたいこともいろいろあって。音楽に関しては海外進出したいという夢もあるし、もっとライブもやっていきたいですね。失敗してもいいから、とにかく場数を踏んで学んでいきたい。アーティストとして活動していて、ライブができる状況があるのもありがたいですから。

ーー音楽をやれているのは当たり前ではない、と。

4na:それはめちゃくちゃ思います。この病気は完治しないし、「あのときちゃんとやっておけばよかった」と後悔しないように、やれることをやっていきたいですね。

ーー期待してます! 最後に、今お勧めの映画は?

4na:いろいろあるんですけど、最近映画館で観たものだと『シラート』ですね。宗教的な要素もあるし、いろんな解釈ができるとは思うんですけど、個人的にはレイバーの人たちが印象に残っています。楽しいことも悲しいことも全部含めて、救いのために音楽があるんだなと改めて感じられて、音楽家としてすごく興味深かったです。

 あと、映画ではないですが来年の春くらいにワンマンライブを開催できるように準備しています。僕が影響を受けている映画というものを取り入れて楽しいことができたらと思っています。改めて発表したいと思いますのでぜひ期待して欲しいです。

■リリース情報
「Old Dance hahaha」
7月15日(水)配信
配信:https://orcd.co/old-dance-hahaha
作詞:4na
作曲:4na・前田佑
編曲:前田佑

■関連リンク
Instagram:https://www.instagram.com/4namusic/
X:https://x.com/4namusic
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCJOFLRRehRm0SY2aN3TUb_g

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