石若駿、プロデューサー/演奏家としての思考 くるりや藤原さくらとの経験で芽生えた新しい感覚

くるり、藤原さくらとの制作/ライブを通して得た経験

ーー今年の『FUJI & SUN』には、くるり、藤原さくら、君島大空など、石若さんがこれまで深く関わってきたアーティストも数多く出演します。そういう顔ぶれが並んでいることには、やはり特別な感慨がありますか?
石若:単純にうれしいですよね。関わりのある人たちが同じフェスに出ていると。タイムテーブルを見る時も、「あ、この人出るんだ。会えるかな」とか、「この人が出るなら、あの人も遊びに来るかな」みたいなことをすごく考えます。KIRINJIも、ハナレグミも、ceroも、みんな仲間たちという感覚があるので、出演者の並びを見ているだけでも楽しいです。
ーーくるりとの関わりも、もう8年、9年くらいになりますか。
石若:もう少ししたら10年ですね。自分が高校生の頃から聴いていた音楽に、今こうして関わることができているのが本当に不思議ですし、しかも過去の作品を演奏するだけじゃなく、新しく生まれていくくるりの音楽にも参加できている。くるりの歴史の一部に自分がいられるというのは、すごく大きいことだと思います。
自分が憧れて聴いていた人たちと共演することはあっても、そのままバンドメンバーとして時間を一緒に過ごして、その人たちの新しい音楽にも関わっていくなんてこと、なかなかないじゃないですか。しかも中に入ることで、「自分はなんでこの音楽が好きだったんだろう」ということの答え合わせができる感じもあるんです。岸田さんのギターのボイシングとか、変則チューニングの中で生まれる倍音の気持ちよさとか、音だけで感じていたものを、実際に目の前で見て理解できる瞬間がある。そういうことが、自分の中でまた音楽になって返っていくんですよね。
ーーそういう意味では、藤原さくらさんとの仕事も、石若さんにとって大きなターニングポイントになっているのではないでしょうか。
石若:間違いないですね。彼女は「こういう音楽を作りたい」というイメージをすごくしっかり持っているんですけど、そのうえで僕を信頼してくれて、かなり自由にやらせてくれたんです。自分がずっとやりたかったことを、やっと本当にできた、という感覚がありました。
ーーそれは、具体的にはどんなことですか?
石若:彼女が持ってくるデモやメロディ、コードワークを受け取って、それをどう解体して、どうハーモニーをつけて、どう音色を配置していくか。そういう作業をしている時に、「ああ、自分はこういうことがやりたかったんだな」と思うんです。しかも、デモをパラで受け取って「じゃあこのベースをこうしよう」「このハーモニーはこうかな」とひとつずつ組み立てていく作業には、自分の作品を作る時とはまた違う喜びがありました。
自分の作品だと、どうしても考え込みすぎたり、苦しくなったりすることがあるんですよ。「この先どうしたらいいんだろう」とか、「もっとこうできるんじゃないか」とか。でも、さくらちゃんの音楽では、彼女のイメージという軸がある中で、自分がやりたいこともちゃんと生きる。そのバランスがすごくよかったんです。彼女の抽象的な景色のイメージに導かれながら音楽を作っていく感じは、自分の中でも初めての経験だった気がしますね。
ーー藤原さんの2枚のアルバム『wood mood』と『uk』を経て、ご自身の中で何か変化したことはありますか?
石若:いろいろありますね。音色を選ぶことに前より時間をかけるようになったし、楽器それぞれのことも前よりわかるようになった。サウンドプロダクションの感覚も、かなり変わったと思います。たとえば、家で録った音源に少しノイズが入っていても、その空気感が良ければそのまま採用したりとか。普通のJ-POPの現場だったら、もっと綺麗に整える方向に行くのかもしれないけど、あえて素材のままの美味しさを残す、ということに対する抵抗がなくなったんです。それはかなり大きかったですね。


ーー藤原さんの武道館ワンマンライブでは、バンドマスターも務められました。あの経験もまた大きかったのでは?
石若:大きかったですね。昔の曲もたくさんやったんですけど、キーが変わった曲も多くて、まずどのキーがいいかを探るところから始まって、譜面も全部作り直しました。バンドメンバーはみんな自由な人たちなので、その自由さをどう生かしつつ、オリジナルへの敬意も払うか。そのバランスを考えるのがすごく面白かったです。
ーーそういう場を作るうえで、やはり“どのミュージシャンを選ぶか?”はかなり重要ですよね。
石若:はい。もちろんプレイの良さは前提としてありますけど、それ以上に大きいのは、人間的な距離の近さとか、関係性の深さかもしれません。たくさん共演していて、お互いの音楽をわかっている状態。それがあると、ライブ中に何が起きても大丈夫という感覚が生まれるんです。音楽をやっていない時間も一緒に過ごしている人たちだと、なおさらそうですね。
さくらちゃんの武道館も、昔から付き合いのある人たちを軸に考えました。ライブの時だけじゃなく、普段から手をつないでいるような状態で音楽ができるというのが理想なんだと思います。人間性というより、関係性。そこがすごく大事です。
ーー今後、プロデュースやご自身の作品で、さらにやってみたいことはありますか。
石若:もともと僕は、Songbookという自分のプロジェクトで曲を作って、いろんな音色を配置していく作業をずっとやってきたんですけど、その原点にまた戻りつつあります。新しいアルバムでは、角銅真実さんの歌と自分が演奏するアップライトピアノだけで録ったんですよ。過去の曲も含めて、音数の多かったトラックを全部いったん裸にしてみたら、それがすごく良くて。自分はこうやって音楽を作っていたんだな、とか、こういうものが好きだったんだな、というのを改めて確認できました。いろんな活動をしてきたけど、やっぱりそこに戻っていけるというのは大きいです。
ーー今、いろいろと振り返りの時期に来ているんですかね?
石若:正直、自分がやってきたことに対して実感があまりないんですよ。日々いろんなプロジェクトを動かしていて、ひとつ終わったらすぐ次、という感じなので、「これをやったぞ」という余韻が後から遅れてやってくる。でも本当はもう少し、自分が何をやってきたのかを自覚しながら世の中にアプローチしていけるような、余裕のある音楽家になりたいなと思っているんです。人間の大きさ、というと少し違うかもしれないけど、そういうゆとりを持って、自分のやってきたことをちゃんと背負いながら次に進めるようになりたいですね。
ーー最後に、『FUJI & SUN』の見どころを読者に向けてお願いします。
石若:富士山の麓にジャズの音楽が鳴り響くって、すごく画期的なことだと思うんです。もちろん、過去には渡辺貞夫さんのようなレジェンドも出演されていますし、その系譜はある。でも今のこの時代に、現代のジャズを担っている世代のトリオが、しかも初日のトリで鳴らすというのは、やっぱり特別なことだなと。
僕は昔から、90年とか92年頃の『Mount Fuji Jazz Festival』の映像をYouTubeで見ていて、日野皓正さんたちがああいう場所で演奏しているのを観て、「いつかこういうことがやりたい」とずっと思ってきたんです。それが年を重ねる中で少しずつ現実味を帯びてきて、いま実際にそういう景色に近づけている。しかも、それをちゃんと実行できているというのは、自分の中でもすごく夢があることだなと思います。
■イベント情報
『FUJI & SUN ’26』
2026年6月6日(土)OPEN 9:00 / CLOSE 21:00
2026年6月7日(日)OPEN 8:30 / CLOSE 19:00
会場:富士山こどもの国(静岡県富士市桑崎1015)
出演:
6/6 SAT|くるり / ハンバート ハンバート / 田島貴男 (Original Love) / YOUR SONG IS GOOD (CHILL & DUB) / JAZZ NOT ONLY JAZZ in FJSN(石若駿 × 渡辺翔太 × マーティ・ホロベック) feat. 大橋トリオ & 田島貴男 / 奇妙礼太郎 / 柴田聡子(BAND SET) / シャッポ / 北村蕗 / 梅井美咲 / HAL & Baku
After Hours |スーパー登山部 / TOP DOCA
6/7 SUN|never young beach / ハナレグミ / KIRINJI (弾き語り) / cero / 藤原さくら / 君島大空 / 寺尾紗穂 / 優河 / 鎮座DOPENESS / CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN / 眞名子 新
主催:FUJI & SUN ’26実行委員会
特別協賛:NEC
協賛:インターコンチネンタル商事 / コアレックス信栄 / Jackery / ジヤトコ / 楽天グループ
特別協力:富士市 / 富士山こどもの国
協力:一般社団法人富士山観光交流ビューロー / 静岡県タクシー協会 富士・富士宮支部 / 人力チャレンジ応援部 / フジイベントボランティアネットワーク / 富士急静岡バス / 富士急シティバス / 富士急トラベル / 富士市商工会 / 富士市ホテル旅館業組合 / 富士市立高等学校 / 富士商工会議所 / 富士見高等学校 / 密林東京 / 吉原祇園祭 / 吉原寺音祭 / Bird -old pizza house- / Catalyst Entertainment合同会社 / EACH STORY / FLARE TENT / FORIE / FRUE / GoodSound P.A.works / JTB / KANOYA PROJECT / KMCgroup / Positive Link Studio / Samaya Design / SHIMAI / Wonder Wanderers
後援:静岡県 / 公益社団法人 静岡県観光協会 / 岳南朝日新聞社 / 日本富士山協会 / 富士市ホテル旅館業組合 / 富士ニュース社 / ラジオf / J-WAVE / K-MIX
企画制作:WOWOW / infusiondesign
■『FUJI & SUN ’26』
Official Website:https://fjsn.jp
instagram:https://www.instagram.com/fjsnjp/
X(旧Twitter):https://x.com/fjsnjp
TikTok:https://www.tiktok.com/@fjsnjp
■撮影協力
アクセス(ワインバーAMANe アマン 中目黒)
〒153-0051 東京都目黒区上目黒3丁目6−5 西銀座ハイツ 101






















