石若駿、日々の研鑽が形成した音楽の奥深さ 中村佳穂ら参加したAnswer to Rememberライブを振り返る

石若駿、日々の研鑽による音楽の奥深さ

 1992年生まれのドラマー・石若駿はひとことで言えば“早熟な天才”である。北海道で生まれ育った石若は、小学生の時にハービー・ハンコックにそのプレイを絶賛され、中学時代に日野皓正のグループに参加。東京藝術大学の付属高校から同大学の打楽器科に進み、ジャズや現代音楽を学び、大学を首席で卒業した。その後は、CRCK/LCKSや東京ザヴィヌルバッハ・スペシャル、桑原あいトリオ・プロジェクト等々に参加し、精力的に活動。昨今は石若が昔からファンだったくるりのサポートも務めており、今、日本で最も忙しいドラマーと言ってもいいだろう。

 そんな彼が新たに立ち上げたのが、Answer to Remember(以下、ATR)なるプロジェクト。これまで石若が一緒に演奏してきたミュージシャンが集った、現時点での総決算的プロジェクトと言える。昨年12月4日に発売された『Answer to Remember』には、Jua、KID FRESINO、黒田卓也、君島大空、中村佳穂Bandなどが顔をそろえ、このアルバムのハウスバンドというべきATR Bandが11曲中4曲でフィーチャーされている。

 そんなアルバムのリリースを記念したイベント『“Answer to Remember” OHIROME GIG Vol.1 ~石若駿 史上最大の祭り、よろしくワッツアップ~』が2月4日にLIQUIDROOMで行われた。NY在住の黒田卓也も含め、アルバムに参加したメンバーをなるべく多く集め「石若史上最大のお祭り」をやるというふれこみのこのライブ、結論から言うと音楽的な密度や濃度はアルバム以上で、石若の音楽的な懐の深さを改めて思い知らされるものだった。

 豪華布陣で臨んだこの日のライブ、セットリストやゲストの配置などが絶妙で、アルバム同様、石若がトータルプロデューサーとして優れていることを再認識させられた。と同時に、ドラマーとしての魅力を余すところなく見せつけた夜でもあった。これまで、石若が参加した音源はライブに比べて若干おとなしい印象があったのだが、ATRでのプレイはダイナミックで躍動的。初めて彼のライブを見た時に、単純に音がデカく、それだけで説得力と迫力が生じていたのを思い出した。つまり、プロデューサーとしての役割と、ドラマーとしての役割を同時に果たしていたライブだった。以下、ライブの具体的な流れを記していきたい。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる