PSYCHIC FEVER、海外人気の理由をR&B・HIPHOPライターが徹底解説! 懐かしさと新しさが共存する次世代を担うグループ像

EXILE TRIBEの7番目のグループとしてデビューし、今年は全米ツアーを大成功させるなど、今や世界から注目を集めるボーイズグループ・PSYCHIC FEVER。小波津志、WEESA、剣、中西椋雅、渡邉廉、JIMMY、半田龍臣の7人で構成され、それぞれが個性あふれるダンス、ボーカル、ラップで魅せるグループだ。
海外での活動も多い彼らのすごさは、ボーイズグループファンはもちろん、音楽ファンの間でも広がりつつある。そんな彼らの魅力について、文筆家/ライター・つやちゃんと、ダンサー/DJ/R&BライターのYacheemiが語り合った。R&BやHIPHOPなど世界の音楽に精通するふたりの目に、PSYCHIC FEVERのパフォーマンスはどう映ったのか。PSYCHIC FEVERのパフォーマンスの本質に迫る対談となった。(編集部)
ソウルミュージック特有の“歌の厚み”が感じられる
――PSYCHIC FEVERのパフォーマンスを観た率直な感想からお願いします。
Yacheemi:クオリティの高さに本当に驚きました。正直、日本のボーイズグループにはあまり詳しくないんです。普段はR&BやHIPHOPなど、海外の音楽を中心に聴いているので、最初は少し緊張しながら観たんですが……歌もダンスもステージングも、すべての完成度が高くて衝撃的で。良い意味で裏切られましたね。聴き進めるうちに、自分にとっても馴染みやすいサウンドだと感じました。ダンサーとしても、彼らのダンスの完成度に惹き込まれ、気づけば「これは推せる!」と思っていました。
つやちゃん:私はK-POPを含め、ダンスボーカルグループが好きで普段からよく聴くのですが、「いそうでいないタイプのグループ」だと感じました。音源でもライブでも、ソウルミュージックなどのルーツが強く出ている。黒人音楽のオーセンティシティを今いちばん正しく継承しているグループだと思います。ソウルミュージック特有の“歌の厚み”が感じられるんですよね。EDMやHIPHOPなどノリ重視のグループが多い中で、モダンなサウンドを取り入れつつも、オーセンティックなソウルやゴスペルの“歌力”をしっかり持っていると思います。
Yacheemi:確かに、僕が「馴染みやすい」と感じた理由がそれかもしれません。歌がすっと入ってくる。歌唱力が本当にすごいですよね。

――サウンド面では、R&BやHIPHOPのテイストが色濃かったEXILE初期の楽曲を継承しているようにも感じますよね。実際、メンバー自身がもともとR&BやHIPHOPが好きで、ルーツにそのサウンドが根付いているとか。
Yacheemi:それは感じます。メンバーが幼い頃からEXPG STUDIOでトレーニングする中で、R&BやHIPHOP由来の感覚を自然と身につけているんだと思います。サウンド面でもY2Kリバイバルという時代性を理解していて、嘘がない。彼らの生まれた頃の音楽かもしれませんが、幼少期から親しんでいたからこそ自然に出ている。
つやちゃん:PSYCHIC FEVERのライブを初めて観た月に、ちょうどBoyz Ⅱ Menの来日公演にも行ったのですが、すごく重なって感じられました。ライブの構成や空気感に、1990年代から2000年代のR&Bボーイズグループの魅力をしっかり継承している印象があって。
Yacheemi:Boyz II Menであり、New Editionでありながら、Backstreet BoysやNew Kids on the Blockのようなポップさもある。ブラックとポップのバランスが絶妙です。
つやちゃん:本当にバランスがいいですよね。
――PSYCHIC FEVERのライブ音源のアレンジはBruno Marsのバンド・The Hooligansのメンバーで、キーボードを弾いているジョン・フォシットが手がけています。彼自身、Backstreet BoysやNew Editionの影響を持ち、Y2Kリバイバルの空気を理解しているので、ニューヨークでもロサンゼルスでも「まさにその系譜だ」と評価されているとか。
Yacheemi:懐かしさがあるのに新しい。今のアメリカにはボーイズグループがほとんどいませんし。
つやちゃん:本当に不在ですよね。
Yacheemi:MVのコメントで「親がBackstreet Boysを見つけた時はこんな気持ちだったのかも」といった声も見かけました。

――グループの構成についてはどう感じましたか? アメリカでも「7人それぞれがはっきり違って見える」というのは大きなアドバンテージになると思います。
Yacheemi:多くのボーイズグループはメインボーカル中心になりがちですが、彼らは全員が主役になれる。バースやラップが次々に入れ替わるマイクリレー感があって飽きないんですよね。声質も多彩で、キャラクターの違いが明確です。
つやちゃん:ビジュアル的にも7人それぞれの個性が立っていて、似通い感がないのがむしろいいですね。
7人それぞれ、歌/ラップの個性
――楽曲の感想も聞かせてください。代表曲「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」の延長線上で「What’s Happenin’」も制作され、海外でもこの2曲が特に人気だとか。「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」はYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスも高評価です。
Yacheemi:黒人音楽由来のトレンド――ジャージークラブ、マイアミ/アトランタベースなど――は今やポップミュージック全体に根付いていますが、PSYCHIC FEVERの楽曲にはやらされている感がない。もともと素養があって好きで培ってきたからこそ、それらのトレンドを自然に表現できていると思います。プロデュースがWAVYくんなので、フローにもWAVY節がしっかり出ていて、狙いどころを正確に突いている印象です。
つやちゃん:「Temperature」とか、WAVYと組んだほかの曲も大好きです。WAVYと組むことで、メンバーの声のキャラが立ち、楽曲としての推進力が増していると感じます。

――各メンバーの魅力は、おふたりの目にはどう映りましたか?。
つやちゃん:小波津志さんの歌はヤバすぎる。ライブでも一切ブレないし、うまさをひけらかさない。フェイクの入れ方もライブだとアレンジが効いていて、表現の幅が広い。技術に加えて感情の揺らぎまで表現できる人です。
Yacheemi:(渡邉)廉さんの声もR&B向きで、志さんさんとは違う心地よさ。JIMMYさんと剣さんのラップが入ると男らしさがぐっと増して、全体が締まる。JIMMYさんのガチなラップ曲もぜひ聴いてみたいです。
つやちゃん:全員、歌がうまいのも強みですね。昨今のダンスボーカルグループはメカニカルな方向性を強化していく人たちが多いですが、PSYCHIC FEVERの場合は人間味のある歌心が宿ってる。だから聴いていて疲れません。バラード含めバリエーションも豊かです。
Yacheemi:(半田)龍臣さんは金髪の陽キャ感とギャルみが魅力的で、声もとても個性的。(中西)椋雅さんと剣さんには良い意味で日本らしさがあって、日本語の響きが立つ。椋雅さんのラップには日本語ラップ的なフロウの魅力も感じます。WEESAさんはリズム感が抜群で軽やか。WEESAさんや志さんが持つ海外的グルーヴと、椋雅さんと剣さんの日本語リスナーへの馴染みやすさ――グループ全体で見ても、このバランスがすごく良いです。
つやちゃん:日本っぽさが残っているところも馴染みやすいですね。1990年代後半から2000年代の、少しペタッとした感じのフロウは私も好きです。今の最先端フロウ一辺倒ではないところが新鮮で、マイクリレーの面白さを引き出していると思います。

――ダンスパフォーマンスについてはどうですか。
Yacheemi:「Paradise」のPVを観ると、90年代クラシックなステップから、2000年代後半から2010年代のSWAG系までを一曲の中に巧みにパッケージしているのがわかります。長年踊ってきたスペシャリストだから自然に体に入っている。B-BOYもロッキンも通っていて、RIEHATATOKYO出身の龍臣さんをはじめ、隙がない。ジャンル分けで見せるのではなく、高次元でさまざまなダンスをミックスしていて、混ざっていてもイケてるのがすごい。
つやちゃん:全員が踊れるのは強いです。音に溶け込むステップが多く、ソウル/ファンク由来のサウンドと相性抜群。押しだけでなく引きも効いていますね。
Yacheemi:揃っている中でも、良い意味のはみ出しがあるのもポイントでしょう。きっちりとすべてを整えるよりも、ストリート感が滲むんです。



















