PSYCHIC FEVER、『PSYCHIC FILE Ⅲ』では大きな挑戦も U.S.ツアーの成功など世界中を飛び回るグループの現在

2023年に『PSYCHIC FILE Ⅰ』をリリースして以降、毎年リリースしているEPシリーズ「PSYCHIC FILE」。PSYCHIC FEVERにとっての挑戦が詰まった本シリーズの3作目、『PSYCHIC FILE Ⅲ』が完成した。90年代~00年代の正統派R&Bをモダンにアップデートしたメイントラック「Reflection」をはじめ、現行のグローバルなトレンドと呼応するような楽曲たちからは、今春初のU.S.ツアーを成功させるなど、世界中を飛び回るPSYCHIC FEVERの現在地が透けて見える。自社レーベルのLDH Recordsからワーナーミュージックグループとグローバル契約し、より世界に照準を合わせているPSYCHIC FEVERにインタビューした。(小松香里)
PSYCHIC FEVERのラップでガラッと変える雰囲気
――『PSYCHIC FILE Ⅲ』には4曲の新曲が収録されていますが、どんなEPを目指したんでしょう?
WEESA:「PSYCHIC FILE」シリーズは例えばいろいろなジャンルに挑戦したり、挑戦がテーマのEPです。今回は4曲入っていて、1曲1曲のジャンルの雰囲気も違って、これまでやったことのないような曲もありますし、PSYCHIC FEVERにとって大きな挑戦となったEPだと思います。
JIMMY:実験的なファイルっていう意味合いのあるEPシリーズですが、自分たちをより多くの人に知ってもらったきっかけである「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」のような昔のヒップホップのスタイルやマイアミベースがありながら、それとは全然違う方向性に挑戦したEPです。英語の歌詞も多いし難しい曲ばかりですが、自分たちが120%詰まった内容を目指したので、どんな風に受け入れられるかが楽しみです。

――メイントラックの「Reflection」は90~00年代のR&Bテイストが強い楽曲ですが、聴いた時はどう思いました?
小波津志(以下、小波津):素直に「めちゃくちゃかっこいい」と思いました。どうやって自分たちを落とし込むか考えて、納得いくまで時間をかけてレコーディングしたんです。歌詞は英詞に日本語詞が混ざっていますが、流れを崩さないように日本語を英語っぽく歌うにはどうしたらいいか悩みました。誰が聴いても乗ってくれるように、発音一つひとつに向き合って工夫をしてレコーディングしたことでこれまでにはない癖を出せたと思います。4曲の中で一番時間がかかりましたね。6月からの『EVOLVE』ツアーで初めて披露するのが楽しみですね。
渡邉廉(以下、渡邉):R&Bの雰囲気を大切にしながらレコーディングしました。僕もかなり時間をかけましたね。志が言ったように、発音や歌い方を意識する中でうまくいかない部分がたくさんあったんですが、中途半端で終わりたくなかったのでやれるところまでやりきりました。今後のライブでももっと磨いていきたいです。自分にとっての今の課題ですね。
半田龍臣(以下、半田):英詞っていうこともありますし、これまでやってこなかったようなフロウなので、僕も過去イチでレコーディングが押しちゃったし苦労しましたね。レコーディングの時間がすごく濃くて勉強になりました。結果、海外の方にも楽しんでもらえる曲になったと思ってます。
中西椋雅(以下、中西):デモを聴いた時から、自分たちの楽曲のはずなのに、今現在リリースされているインターナショナルな音楽と馴染めるぐらい今のワールドマーケットを意識した曲だなと思いました。僕たちがワーナーミュージックに移籍してから初めての作品のメイントラックでもあるので、トップライナーに海外の方が入っていたり、これまでとは違う制作スタイルではありました。ほとんど英語詞なのでいつもに比べてレコーディングは苦戦したんですけど、「PSYCHIC FILE」のコンセプトに沿って挑戦できた楽曲だったと思います。
半田:歌割が細かくて、1行歌って他のメンバーに変わる展開が多いところも難しくて。自分のパートが来たと思ったらすぐに終わっちゃうのって難しいんですよね。でもそこは聴いているとすごく面白いポイントでもあるので楽しさはありました。
剣:メンバーみんながこの曲に対していろいろ試行錯誤している中で、自分はどうアプローチしようって考えるために、スピーカーから流れてくる自分のラップを聴いたりしていろいろなところで戦った曲ですね。普段とは違うところが気になったのはこの曲ならでは。新しい挑戦でしたね。みんなの声が入った音源を聴いた時も「うわ、みんな新しい!」って思いました。自分たちの個性やスキルをいかにナチュラルに出すかっていうことを大事にした気がします。
JIMMY:「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」でコラボしたWAVYくんも言ってたんですけど、僕らが歌とラップを入れるとデモから全然雰囲気が変わるんですよね。一人ひとりの声色が違うし、それぞれのテンション感に合わせて他のメンバーがさらに良くしようとする。例えば「ここはBメロだからあえて落ち着かせよう」ってアプローチするメンバーがいたり、「このメンバーが担当するとこのバースってこんなに活きるんだ」って思ったり、アプローチの違いによって次のメンバーが良い形で際立ったり、いろいろな化学反応が起こるんです。WAVYくんとは最初「Temperature」でコラボして、そこで僕たちのことを深く知ってくれて、さらに良さを抽出しようということで「Just Like Dat」ではメンバーに合わせてバースを長くしたり、例えば剣くんのパートだったら剣くんがラップしてそうな言葉を入れたりフロウを作ってくれて。その経験をPSYCHIC FEVERだけの楽曲でも活かせてきてると思いますね。「Reflection」は特にボーカルが強いっていうイメージがあって、ボーカルのテンション次第で全体像が変わると思ったので、ほぼ全曲レコーディングスタジオに入らせてもらって、「ボーカルはこんな感じなんだ」とか「ラッパー陣はこんな感じなんだ」っていうことを感じながらみんなのレコーディングを見てました。それを踏まえてバランスをめっちゃ考えて自分のラップを入れました。
小波津:バランスはめっちゃ試行錯誤しましたよね。
JIMMY:したよね。ボーカル陣は廉、志、WEESAがいてっていういつもの布陣でバランスが取れてますけど、ラッパー陣は最初に誰がマイクを取るかでテンション感が結構変わるところがあって。例えば僕が最初にラップすると、他のみんなも声が低くなったりするんで。龍臣とか「JIMMYがこのラップだったら俺もそのラインでいかなきゃ」って思って頑張ってくれたり。逆に僕が合わせることもありますし。だからみんなの歌やラップを聴いた上で録ったのは大事なプロセスだったと思います。リード曲でもあるし、この曲の出来は『EVOLVE』ツアーを左右するなと思ったこともあって、みんなが言うように制作にかけた時間が一番長くなったんだと思います。レコーディングだけでなく、衣装とかミュージックビデオの方向性とかいろいろなところに派生して頭をすごく使いましたね。

――「Reflection」のリリックにはパリ、東京、LAというラインが出てきますし、「Gelato」には東京、NY、パリ、次はミラノというラインが出てきて、PSYCHIC FEVERが世界中を飛び回っている現状が表れていますよね。
JIMMY:僕も歌詞を書く時、東京、パリ、NY、あとバンコクってよく入れます(笑)。でもミラノにはまだ行ったことがないので、「Gelato」の歌詞にミラノが出てきたことで、「次はミラノに行かなきゃね」ってメンバーと話しました。いつかラッパーらしく有言実行しようと思ってます。