中森明菜、どんなに活動休止しても求められ続ける“唯一無二”の存在感 デビュー43周年を機に振り返る軌跡

 中森明菜が自身のデビュー日である5月1日に、デビュー43周年を記念して『NHK紅白歌合戦』(NHK総合/以下、『紅白』)でパフォーマンスした全6曲(1983年の初出場「禁区」から1988年の「I MISSED "THE SHOCK"」まで)をYouTubeにて一挙公開した。告知されるや、SNSでは「最高の誕生日プレゼントだ」「Warner Music Japanさん、NHKさんありがとうございます」など、歓喜のコメントが並んだ。

【公式】中森明菜 Best Performance on NHK 紅白歌合戦スペシャル 予告編

 これらの映像は中森の1980年代のNHK番組での歌唱映像を4Kデジタルリマスターで毎月配信する、デビュー43周年企画「中森明菜 Best Performance on NHK」の一環で、4月には『レッツゴーヤング』や『ヤングスタジオ101』でのパフォーマンスが配信され、“中森明菜世代”だけでなく広い世代からも反響を呼んでいた。

【公式】中森明菜/Best Performance on NHK in April, Vol.1[4K] AKINA NAKAMORI

 近年は数多くのオーディション番組が放送され、NiziUやBE:FIRSTなどを筆頭に多くのスターが生まれているが、中森のデビューも『スター誕生!』(日本テレビ系)というオーディション番組がきっかけだった。二度の落選にもめげず三度目の正直で合格したこと、番組史上最高得点を記録したこと、11社のスカウトがプラカードを挙げたことなどは今でも伝説だ。その翌年の1982年にシングル『スローモーション』でデビュー。同期の小泉今日子、石川秀美、松本伊代などと“花の82年組”と並び称され、「少女A」や初の1位を獲得した「セカンド·ラブ」などのヒット曲を連発して、80年代のアイドルブームを牽引した。

【公式】中森明菜「スローモーション(from『はじめまして』)」【1stシングル(1982年5月1日発売)】Akina Nakamori /Slow Motion

 1984年リリースの「サザン・ウインド」以降は「TATOO」まで約4年にわたって連続で1位を獲得した。1985年の「ミ・アモーレ [Meu amor e...]」と1986年の「DESIRE -情熱-」では『日本レコード大賞』で大賞を受賞。女性歌手の2年連続受賞は当時初の快挙だった。デビュー曲の「スローモーション」こそ、青春の記憶が蘇るような爽やかなアイドル楽曲であったが、中森が歌う楽曲は毎回非常にアーティスティックなチャレンジがなされ、音楽シーンに大きな影響を与えたと同時に、従来のアイドルとは一線を画すシンガー/パフォーマーとしてのカリスマ的な存在感を発揮して人気を集めた。

【公式】中森明菜/DESIRE -情熱- (~夢~'91 Akina Nakamori Special Live at幕張メッセ, 1991.7.28 & 29)

 井上陽水が作詞作曲を手掛けた「飾りじゃないのよ涙は」、おかっぱヘアに和装をアレンジした衣装で世間を驚かせた「DESIRE -情熱-」はあまりにも有名。加藤登紀子による作詞作曲の「難破船」では、その圧倒的な表現力で聴く者を魅了。ビッグバンドサウンドの「TATTOO」を歌唱した際の、超ミニ丈のスカートの衣装も印象深かった。さらに「I MISSED "THE SHOCK"」は、当時洋楽で流行していたエレクトロサウンドのエッセンスが取り入れられ、今聴いても実に新鮮だ。

【公式】中森明菜/TATTOO (Live in '88 - Femme Fatale at 中野サンプラザ, 1988.10.26) AKINA NAKAMORI

 中森はプライベートや体調不良などの理由で、これまで数回にわたり活動休止を経験している。しかし活動休止をするたびに中森を求める世間の声は高まり、そうした声に応えるように活動を再開してきたが、特に2014年の活動再開は、サプライズ要素が満載で大きな反響を呼んだ。さらに、同年末の『紅白』には、アメリカのレコーディングスタジオから中継という形で登場。中森にとって12年ぶりの『紅白』出演であり、歌ったのは約5年半ぶりの新曲「Rojo -Tierra-」。4年2カ月ぶりの歌手活動に日本中が歓喜に沸いたと同時に、その磨かれた歌唱力と表現力で多くの視聴者の心を掴んだ。

中森明菜 - 「Rojo -Tierra-」ティザー

 ちょうど昭和レトロブームや昭和歌謡の再評価が高まり始めた時期で、『紅白』出場前にリリースされていたベストアルバムにも注目が集まり、現在の昭和/平成の歌謡曲ブームの一因を作ったとも言える。以降この10年はインターネットやSNSの普及によって、中森の楽曲をカバーする“歌ってみた動画”が拡散されるなど、そのカリスマ性や歌唱力と表現力の高さが幅広く広まり、若年世代からのリスペクトも生む孤高の存在となった。

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