がらり、実験の積み重ねで構築したポップス作りの方程式 本格始動から2年目、数多のタイアップ先から求められる理由

A.G.O、knoak、黒澤よう……外部のアレンジャーとの共鳴

ーー2025年は7曲もの楽曲が配信リリースされました。その前年も同じくらいリリースされていたので、そのペースはがらりさんにとって特別なことではないとは思うんですけど、基本的に多作なんですかね?
がらり:多作なんですか、僕って? どうなんですか(笑)? 今回のアルバム『コントラスト』は14曲収録されていますけど、制作の過程では15曲になる案もあったくらいですからね。全然、余力は残しているし、多作だとも思ってないんですけど。
ーー曲のテーマやモチーフもどんどん溢れてくる感じですか?
がらり:僕の場合、社会人を経験してからアーティストとして世に出ているので、あらゆる概念からフレキシブルに楽曲を生み出せるタイプだと思うんですよ。経験を語彙として使っている感じがあるというか。なので、ネタ探しに苦労することはないんですよね。そこにもまたジャズをやっていた経験が生きているところもあって。ジャズではコードさえあればその場で何かしら演奏できるものなので、その感覚を拡張したものとして今、曲作りをしているところもあるんですよね。何かしらの概念があれば、曲を生み出し得るという感じですかね。ただ、ちょっと自意識過剰な言い方になりますけど、自分は器用なタイプだと自認はしているので、決まったルーティンを消し去るようにあらゆる作り方ができるようになろうとは思っていますけど。
ーー楽曲が次々と生まれていく中、2枚目のアルバムに向けて動いたのはどれくらいのタイミングだったんですか?
がらり:「ガラスの靴」(25年2月配信)を出した段階で、アルバム全体のイメージはなんとなく浮かんではいました。「ガラスの靴」は闇落ちした心が報われて、ガラスのように透明になっていくニュアンスを持った曲なんですけど、アルバムではこういう曲を真ん中に1曲か2曲置き、全体として黒と白の明暗がどんどん明滅していくような流れを作れたら面白いなと思ったんです。その段階ではまだ“コントラスト”という言葉はなかったんですけど、それを想起させる概念に寄せた作品にしようとは決めていましたね。
ーーとなると、それ以降に生まれた楽曲たちは、その概念を頭の中に置いた上で作られたものになると。
がらり:その通りです。最初の段階で全体像のイメージを明確にしておいたからこそ、必然的に1枚としてまとまった作品になったとは思いますね。タイアップ曲もあったので、そこには偶然もありましたけど、歌詞的にも曲調的にもコントラストの効いたものになりました。
ーー全14曲の並びも絶妙ですよね。いたるところに仕掛けが施されることで、心地良いコントラストが生まれています。
がらり:はい。例えば「Answer Me」と「Question」の並び。そのタイトルがもうコントラストになっていますし、実は「Answer Me」の最後のコードと「Question」の最初のコードが同じだったりもするので、必然的に繋がっていくところもあって。曲ごとに考え方はいろんなところを向くんですけど、すべての曲でうっすら繋がっている感覚があるのもおもしろいところだとは思いますね。後半、「ステラ」で一回全てを受容し、選んだ道が人生の正解であるという答えを得た上で、でもそれが全部勘違いだったのかもしれないという疑いに変わる「夢遊病」で終わるとか、そういう迷いもコントラストだと思うし。いろんなコントラストを生みながら、ふらふらゆらゆら迷っている姿こそが人間を人間たらしめてる美しいポイントだなと、アルバムを作りながら思ったりしていました。
ーー今回、「Question」「透きとおる夏」「夢遊病」の3曲ではアレンジャーを迎えていますよね。そこにはどんな意図があったんですか?
がらり:どの曲も一旦、自分でフルアレンジをした後、自分よりも肉付けが絶対に上手いであろう方々にお願いした形ですね。そこにはいろんな考え方があるんですけど、自分一人でやってるとどうしても偶然の化学反応で生まれるものが減ってきてしまうんですよ。なので、他の方々の意見を大いに入れることによって生まれる偶然のおもしろさに期待したというのが一番大きな理由ですね。

ーーA.G.Oさん、knoakさん、黒澤ようさんという人選もがらりさんが?
がらり:はい。「夢遊病」のアレンジをお願いした黒澤さんに関しては、僕がTikTokで偶然聴いたyume satoさんの「踊りましょうか」という曲がきっかけ。曲がめちゃくちゃよかったので、誰がアレンジしているのか調べたら、それが黒澤さんで。その曲の雰囲気がもう「夢遊病」な感じだったので、「絶対、この人やん!」と思って(笑)。
ーー狙い通り、最高の仕上がりになってますよね。
がらり:はい。「Question」のA.G.Oさんも、「透きとおる夏」のknoakさんも本当にいい仕上がりにしてくださいました。初めての方とご一緒するおもしろさはもちろん、アレンジャーとしてのすごさを感じましたよね。メインストリームの世界で評価されている方々は、僕がなかなか超えられない壁を容易に超えていくというか。すごくいい経験でした。
ーー他の方の血を受け入れる柔軟な姿勢がいい結果を生んだということですね。それも根本のメロディ、コード感、歌詞がきっちり構築されているからこそだと思います。
がらり:そうですね。その根幹が維持されているので、めちゃくちゃ極端なものでなければ、いい化学反応が生まれることは担保されているような気はします。

















