歌声分析 Vol.6:玉置浩二 歌声そのものが“物語”を生み出すーー時代を超えて響き続ける、技巧を超える熱量
「メロディー」に宿る包容力、更新し続ける歌声を示した「プレゼント」
一方、バラードの「メロディー」(1996年)では、感情の距離を縮めるような歌い方が際立つ。本楽曲は玉置自身が出演したドラマ『メロディ』(TBS系)の挿入歌として使用され、後に鈴木雅之、坂本冬美、清木場俊介、中島美嘉、ジェジュン、川崎鷹也などにもカバーされ、代表曲のひとつとなった。ギター弾き語りのような雰囲気から始まるシンプルな構成の中で、玉置は語り掛けるように、聴き手との間に親密な空気を生み出して歌っていく。奥歯のあたりに母音を留めるような発音処理にも聴こえる。優しさと温もりを包容力へと昇華させつつ、〈メロディー〉のファルセットを経て、〈泣きながら〉〈泣かないで〉で喉を全開にした強いトーンを放つ。このメリハリあるコントロールで、玉置の歌声が感情の波状を生み出している。
ニューウェーブ色の強い「キ・ツ・イ」(1989年)では、トラックとは対照的に、ボーカルやコーラスにR&Bやソウルの要素が色濃く表れる。演奏に対してディレイ気味に配置される歌やソウル文脈のシャウトを交えながらも、その声で楽曲にエネルギッシュさと艶っぽさを与えている。この独特の色気と情感は、玉置にしか出せないものだろう。
玉置の歌声の進化が明確に表れたのが、「プレゼント」(2005年)だと思う。玉置が出演したドラマ『あいのうた』(日本テレビ系)の主題歌に起用されたこの楽曲で、玉置は一音一音の鳴りを細やかに調整しながらも、歌声を空気に溶かすのではなく、口元付近に音を集めるようにして、言葉の輪郭を際立たせている。声を広げず集めることで、曲の温度を保っているのだ。筆者の経験になるが、先述したドラマ『あいのうた』の初回を鑑賞していた際、「プレゼント」が流れ、クレジットが出てくるまで玉置浩二かどうか確信が持てなかったのをよく覚えている。この“違和感”こそが、歌声を更新し続ける玉置の強さを示している。
そして、その集約点として挙げられるのが、「悲しみにさよなら」のセルフカバーだ。安全地帯の楽曲として1985年にオリジナルリリースされた頃は、メランコリックなメロディを少し乾いた声質で明るく歌い、洒脱なシティポップとして成立させていた。技巧で感情を説明するのではなく、声の質感そのものでドラマを表現する姿勢は一貫していると言えるだろう。
聴き手自身の人生そのものに一瞬でドラマ性を与えることができる声。それが玉置浩二の歌の本質にあるように思えてならない。これが、玉置浩二の歌声が主題歌として“強い”理由なのではないだろうか。彼の歌声は時代やメディアの変化を超えて、今なお多くの人の心に深く響き続けている。
※1:https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/156886/2
※2:https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2026-01-21


























