日向坂46「クリフハンガー」はなぜ刺さる? 節目を刻む“未完”の余韻、グループと共に育つ杉山勝彦楽曲の真髄

 日向坂46が1月28日にリリースする16thシングル表題曲「クリフハンガー」のMVが公開された。二期生から五期生までの14人編成で、センターは五期生・大野愛実。ツアーを経て新体制へ本格的に踏み出すこのタイミングで、坂道グループではおなじみとも言える杉山勝彦が作曲を手掛けたことが、ファンの間で大きな話題を呼んでいる。加えて、MVが“葛藤”と“未来”を同居させたドラマとして設計されている点も、楽曲の熱量を増幅させる要因になっていると考える。

 なぜ杉山のメロディは、坂道ファンの心をこれほどまでに掴み続けるのか――。「クリフハンガー」を起点に、その魅力を紐解いていきたい。

「クリフハンガー」が示す光と影、坂道ファンの心を掴んで離さない杉山勝彦楽曲

 杉山楽曲の大きな特徴は、イントロからAメロで一気に聴き手を曲の世界へ引き込む点だ。印象的な短いフレーズで空気を作り、「この曲はこういう感情を歌う」と最初の数秒で提示する。そこからBメロ、サビへ向けて少しずつ熱量を積み上げ、サビで視界が開けるような高揚感を用意する。この“引き込み→加速→解放”の流れが、杉山楽曲の強さだと言える。

 同じ杉山楽曲の中でも、たとえば乃木坂46「制服のマネキン」(2012年)は、イントロから漂う張り詰めた空気と疾走感で当時の乃木坂46に新しい緊張感を持ち込んだ。一方「君の名は希望」(2013年)は、旋律そのものの普遍性が前に出るタイプで、サビに向かうほど明るく広がっていく構成がグループの代表曲像を決定づけた。2ndアルバム『それぞれの椅子』リード曲としてリリースされ、今もなお乃木坂46らしさを象徴する楽曲としても位置づけられている「きっかけ」(2016年)も同じく、メロディが先に感情の答えを提示するからこそ、歌われるたびに意味が積み重なり、いつしかアンセムとして定着していった。

乃木坂46 『君の名は希望-DANCE&LIP ver.-』Short Ver.
乃木坂46 『きっかけ』

 また、欅坂46のユニット曲「青空が違う」(2016年)は、遠距離恋愛の切なさを、イントロの時点で淡く滲ませる。抑えめの温度のまま物語を進んでいき、サビで感情がすっと浮上するように景色が切り替わっていく。杉山の楽曲が刺さるのは、メロディの強さだけでなく、こうした感情のグラデーションを、サビの高揚感へ無理なく繋げられるからであると考える。

 そして今回の「クリフハンガー」も、その特徴をしっかり踏襲している。歌い出しでは、どこか息が詰まるような緊張感が先に立ち、聴き手の意識を曲の中へ引き込む。そこから展開を重ね、サビで一気に視界が開けるような解放感へと持っていく。ただし、この曲のサビが気持ちいいのは、単純に明るいからではない。上へ抜けていく感覚の中に、わずかな“影や不安”が残っているのだ。だから、聴こえてくるのは“もう大丈夫”という安心ではなく、“それでも前へ行く”という決意だ。杉山のメロディは、前へ進もうとする強さと、迷いの気配を同時に響かせる。その両方があるからこそ、グループが積み上げてきた物語と重なった瞬間によりリアルに届くのだろう。

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