アソビシステムが話題を生み続けられる理由は? KAWAII LAB.をはじめとする隆盛は2025年にネクストフェーズへ

アソビシステム、未来への種をまいた1年に

 日本のポップシーンにおいて、アソビシステムは一貫して原宿発のカルチャーを牽引してきた存在だ。きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカとの取り組みから始まり、アイドル、アート、ファッションなどをグローバルに展開してきた。その中核を担うのが音楽事業であり、近年は、アイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」をはじめとする動きが注目を集めている。

 なかでも2025年は、音楽事業において確かな地盤を築きつつ、未来への布石となる種をいくつもまいた1年だった。7月19日には幕張メッセで、新しい学校のリーダーズの10周年記念公演『宣誓 ~個性や自由ではみ出し10年~』、20日には『ASOBISYSTEM 18th Anniversary ASOBIEXPO 2025』、21日には『KAWAII LAB. SESSION vol.15 in 幕張 SUMMER』といった大型イベントが幕張メッセで開催され、アソビシステムの音楽的地盤が確実に拡張していることを、数字と熱狂の両面で証明する場となった。KAWAII LAB.を中心に、所属アーティストたちの飛躍と新たなプロジェクトの始動、そして国内外の舞台での存在感の高まりを見ると、単なるトレンドや一過性のブームではなく、シーンを根底から変えていく確かなうねりとなって広がりつつあることがわかる。

止まらぬKAWAII LAB.の勢い

 特にKAWAII LAB.の存在感が際立っていたことは言うまでもない。2月22日にKアリーナ横浜で開催されたプロジェクト3周年記念公演『KAWAII LAB. 3rd Anniversary Special LIVE 〜わたし“たち”の一番かわいいところ〜 supported by UP-T』では、FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE、SWEET STEADY、CUTIE STREET、KAWAII LAB. MATESが集結。総勢38名によるステージで約2万人を動員し、プロジェクトの成長を印象づけた。FRUITS ZIPPERとCANDY TUNEは『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出場を決め、KAWAII LAB.の勢いが年末の大舞台へと届く流れを作った。さらにCUTIE STREETはCDセールスの強さとTikTokでの広がりを両輪にチャート上で存在感を強め、SWEET STEADYもライブを軸に着実に支持を拡大。これらのグループはいずれも、楽曲/ビジュアル/パフォーマンスの三位一体で“かわいい”を再定義し、Z世代を中心としたファン層から高い支持を集めている。この功績から、総合プロデューサーである木村ミサは、文化/クリエイティブ領域で革新的なビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みている文化起業家として、Forbes JAPAN「CULTURE-PRENEURS 30」に選出された。

未来を担う新プロジェクト発足

 だが、今年のアソビシステムが注目すべきはKAWAII LAB.の快進撃だけではない。新たな展開として、次世代を見据えたプロジェクトが続々と立ち上がったことも大きなトピックだ。

 そのひとつがPEAK SPOTである。PEAK SPOTは、アイドル、俳優、モデル、インフルエンサーなどジャンルを問わず、これまでに芸能活動を経験してきたメンバーが集い、それぞれの個性を持ち寄って新しいアイドル像を追求するプロジェクトだ。4月にデビューしたfav meを皮切りに、Toi Toi Toi、log youといったグループが立て続けに始動。これらのプロジェクトは従来のアイドルの枠を広げる試みであり、アソビシステムの次世代戦略を象徴している。

 また、6人組メンズグループ ONSENSEも話題を呼んだ。コンセプトはぬくぬく系“バスタイムポップス”。9月の『第41回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2025 AUTUMN/WINTER』がステージデビューとなった。肩の力の抜けた楽曲の世界観や、親密さとポップネスの絶妙なバランスからは、新たな潮流を感じさせる。

ONSENSE
ONSENSE

 

アソビシステムの過去と現在を繋いだ1年

 こうした新しい動きと並行して、既存アーティストたちの躍進も止まらない。新しい学校のリーダーズはデビュー10周年イヤーとして記念ベストアルバム『新しい学校のすゝめ!』をリリースし、10周年記念ライブでは過去最大規模となる約1万人を動員。さらにドキュメンタリー映画『青春イノシシ ATARASHII GAKKO! THE MOVIE』も全国公開され、音楽だけでなくカルチャーアイコンとしての地位を固めた。ダンス、ビジュアル、メッセージ性、すべてにおいて独自性を貫いてきた彼女たちは、10年という歳月がもたらす厚みと進化をその活動で証明している。

新しい学校のリーダーズ
新しい学校のリーダーズ

 きゃりーぱみゅぱみゅの活動再開も大きなトピックだ。7月の『ASOBIEXPO』で第一子誕生後初のステージに立ち、会場には来場者からメッセージが寄せられた「きゃりーおかえりボード」が設置されるなど、約1年ぶりパフォーマンスは祝祭感溢れるムードに包まれた。10月にはLINE CUBE SHIBUYAでの復帰後初ワンマン『きゃりーぱみゅぱみゅ ワンマンLIVE 2025「dreamin dreamin」』を成功させたほか、中田ヤスタカプロデュースの新曲「現実逃避」を配信リリース。2026年にはデビュー15周年を迎える彼女の動向への注目度は高く、過去のヒットを礎にさらなるクリエイティブ発信が期待されている。

きゃりーぱみゅぱみゅ
きゃりーぱみゅぱみゅ

 海外展開が積極的に進められた1年でもあった。3月にはロサンゼルスで日本の魅力を世界へ発信する音楽イベント『matsuri ’25: Japanese Music Experience LOS ANGELES』が開催され、AdoやYOASOBIとともに新しい学校のリーダーズが出演。FRUITS ZIPPERやCANDY TUNEらも多数のアジア公演を成功させており、J-POPの海外浸透を牽引している。また、CEIPA主催の国際音楽アワード「MUSIC AWARDS JAPAN 2025」において、アソビシステム所属アーティストが複数ノミネート/受賞するなど、国際的な評価も確実に積み重ねている。ニューヨーク、ソウル、台北といった都市でのライブやイベントへの出演も定着化しつつあり、その動きは今後さらに広がっていくだろう。

 KAWAII LAB.は“バズのその先”を着実に掴み、各種記録やリアルな動員へと還元していった。“原宿から世界へ”というコンセプトのもと活動するKAWAII LAB.が躍動する今、きゃりーぱみゅぱみゅの復帰は同社の“原宿発”という系譜を現在形でつなぎ直し、新しい学校のリーダーズの10周年は、そんな彼女に代表される“世界に通用するライブアクト”としての側面をあらためて証明する出来事となった。一方で、PEAK SPOT発足やONSENSEのデビューは、そんなアソビシステムの色を受け継ぎつつ、新たな展開とうねりを生むための種としてまかれた、未来に向けた挑戦だ。こうした“軸の強化”と“横への拡張”が同時に進んだことこそが、2025年のアソビシステムを単なる話題の集合ではなく、ひとつのカルチャーとして強く見せた理由なのだろう。
 
 2025年、アソビシステムはKAWAII LAB.の勢いを軸に動員と話題性を拡大しつつ、PEAK SPOTやONSENSEといった新プロジェクトも立ち上げ、展開の幅を広げた。FRUITS ZIPPERの東京ドーム単独公演、KAWAII LAB.のKアリーナ横浜5daysを含む4周年ライブといった大きな舞台が続くなかで、アソビシステムの音楽がどんな形で次のスタンダードを提示するのか。2025年に整えた体制の手応えが、2026年にはよりはっきりと見えてくるだろう。

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