早見沙織、2025年は異例な一年だった? 音楽活動の集大成と感謝をしっかり届けた10周年イヤーを振り返る

早見沙織、10周年イヤーを振り返る

「必死に食らいついて歌ってる」ーー早見沙織史上最も激しい最新曲

『終末のワルキューレⅢ』エンディング主題歌 「Last breath, Last record」by 早見沙織 | Netflix Japan

ーーそして『セメ Live Vol.1』で初披露し、10周年ライブではクライマックスに向けた煽り曲ともなった「Last breath, Last record」が12月10日にデジタルリリースされました。アニメ『終末のワルキューレⅢ』のエンディングテーマとなっています。

早見:今回、『終末のワルキューレ』のこれまでの物語や映像化される原作のパートを読み込んだり、アニメーションや音楽など様々な角度から作品に触れたのがまず入り口としてありました。

ーーそこで感じたことは?

早見:この作品は一つの戦いが終わっても、大きな戦いは続くんですよね。そうなった時に、エンディングテーマはどういう立ち位置がいいのか。チームでも話した中で出たのが、1話が終わって「お疲れ様。ゆっくり休んでね」っていう癒やしのエンディングではなく、「まだ終わってない」ということを表現しようと。戦いはまだ続いていくし、気持ちは折れずにずっと持っていくっていう。激しい戦いの中で息を切らせたり、疲弊して心的にも折れて、息が吸えなくなりそうなタイミングでも、最後の一息と思って吸っていく。そして、“Last”は“最後”という意味もありますけど、使い方によっては“持ちこたえていく”とか、“命をまだ生き長らえていく”っていう意味合いにもなる言葉だから、次の息を吸うことでまた新しい一歩を踏み出せる、その意識の糸を切らさないでいてくれるエンディングテーマにしたいなと思いました。なので、「自分史上で最も激しいと言える曲にしたいです」と方向性を伝えました。

ーー早見さん史上最も激しく、早く、疾走感があり、かつ、難解な曲になってます。

早見:リズムも変わるし、勢いもあるし、難しいと感じますね。過去にも激しくて速いテンポの「視紅」という曲があったんですけど、ボーカルはすごく繊細に録っていたので、意外にエネルギー消費量が少なかったんです。でも、この曲は一番を歌っただけで急激にHPが減っていくっていうような激しさがある。そこに必死に食らいついて歌ってる感じがいいなと思っています。

ーー歌詞にはどんな思いを込めましたか?

早見:この作品は神と人間がバトルをしていますけど、戦いは物理的にぶつかり合うだけではないと思うんですね。心が折れそうだけど、まだまだ走り続けなければならない時や気持ちを強く持って向き合わないといけないものは、どんな日常の中にも存在している気がしていて。これまで「休んで一息入れよう」「立ち止まってるままのあなたでいいよ」と伝える曲も歌ってきましたが、今回は前に引っ張っていくような曲にしたいと思いました。歌詞の語気も強いですし、音としてもアタックが強くなるような言葉を積極的にガシガシ入れましたね。

ーーかなり荒々しく響く言葉が配置されてます。

早見:プラスして、渡辺(拓也)さんのアレンジが来た時に、『終末のワルキューレ』が持ってる激しさと荘厳さみたいなものがより際立ってる編曲とコーラスワークがあったので、そこが活かせるような言葉の雰囲気も入れたいと思いました。

ーーこの〈君〉っていうのはどんなイメージですか。

早見:聴き手に委ねたいっていうのが一番強いですかね。ただ、書いてる時に、これまでに出会った人たちが脳内に浮かんだ曲ではあって。去年の12月頃にはもうレコーディングが終わっていた曲なので、自分の環境としても、10周年がこれから来るなというタイミングだったんです。今まで出会った人や別れた人、いろんな出会いと別れを振り返る時期に書かせてもらった歌詞でもあったので、過ぎ去った景色や人々も入っています。そういうものを一つ一つ持って、前に進んでいきたいっていう思いですね。だから、〈君〉も特定のこの人だけというよりは、本当にその人にとっての大事な出会いとか、いろんな思いを重ねるように作りました。

ーーそして、タイトルにもなっていますが、歌の言葉にはなっていない息=ブレスがとても印象的です。

早見:今回、普通に歌ってる中でのブレスを活かしてるのもあるんですけども、「ブレスはブレスだけ録ろう」とこだわって。ブレス、5テイク目みたいなのもあって(笑)。

ーーあはははは。そうなんですね!?

早見:「今のブレスじゃないか?」みたいなのを入れたりしてます。特に私の中では、歌い出す前の一番最初の前のブレスとサビの前のブレス、歌い終わった後のラストのブレスが印象的なブレスですね。そこは別テイクで録ったものを重ねるか、元のを使うか、試行錯誤して選ばれしブレスになってます。特に、後奏が終わった後のブレスは吸う息にしていて。吸って終わりたいという気持ちが出てます。

ーー最後に息をもう一回吸って、次の一歩を踏み出すというブレスですよね。10周年イヤーを終えたばかりの早見さんはここからどんな方向に向かっていくというイメージですか。

早見:私としては、今年はかなりアウトプットを重ねた年だったので、来年は内側を満たしてインプットしてっていうことを注力していきたい年ではありますね。10周年を終えて、本当にいろんなチャレンジや試行錯誤をしました。うまくいったこと、いかなかったこと、そのすべてを含めて、自分の人生の中でいろんな軌跡を音楽と共に歩めてよかったなと思えた10周年でした。来年以降も音楽と自分、そして、聴いてくださる方の間にある目に見えない関係性を育てていきたい。また、ここから再び育てていけるというか。種をまき、水をあげて、その過程をより肥やしていって、新しい花を咲かせられるようなスタートをまたここから切っていけたらいいなと思ってます。

ーー3rdアルバム『白と花束』で育った花を束ねたので、まさにここまでを一区切りしてる感じがしますね。

早見:本当にそうですね。今は10周年でやり切ったっていう気持ちもかなりあるんですけど、自分自身が歌うこと、音楽と関わること、創作することが愛情を持ってできることの一つであるのは変わりなくて。それがある限り、またやりたいことやワクワクすることが生まれてきてくれるんじゃないかなって思っています。

ーーじゃあ、来年はあんまりみんなの前で歌う機会は少なくなりそうですね。

早見:どうですかね〜。今年がかなり異例だった可能性がありますから(笑)。こんなに頻繁に皆さんの前で歌えることが今まではなかったけど、すごく楽しかったし、ハッピーな年だったので、そこで皆さんにもらったいろんな感情やエネルギーをまた次の表現につなげていく。また新しいページを開く年っていう感じですかね。

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