なぜback numberの楽曲は色褪せず聴かれ続けるのか 「水平線」「どうしてもどうしても」に宿る一貫した共感性

back numberが色褪せず聴かれ続ける理由

 長年にわたり日本の音楽シーンにおいて国民的な存在感を誇り続けているback number。彼らは、先日更新された「Spotify Japan デイリートップアーティスト」ランキング、および「Spotify Japan ウィークリートップアーティスト」ランキングで1位を獲得。大晦日には、自身2度目の『第76回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出場を控えている。

初期から最新の楽曲までback numberが愛され続ける理由

 ストリーミングの累計再生回数が1億回を突破した楽曲の数は2025年12月25日時点で30曲。これは、国内アーティストで2番目に多い記録である。また、30曲の内の半数が2億回を突破しており、特に、8億回突破の「水平線」、7億回突破の「高嶺の花子さん」、5億回突破の「花束」「ハッピーエンド」、4億回突破の「クリスマスソング」「HAPPY BIRTHDAY」「ヒロイン」「アイラブユー」は、今も各チャートで大きな存在感を放ち続けている。また、12月に、10年以上前の楽曲である「手紙」「世田谷ラブストーリー」が1億回を突破したこと、そして2025年の春にリリースされた「ブルーアンバー」が1億回を突破したことが象徴的なように、初期から最新の楽曲まで幅広く聴かれている。

back number - ブルーアンバー 【カンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『あなたを奪ったその日から』主題歌】

 なぜ、彼らの楽曲は、これほどまでにたくさんの人たちに聴かれ続けているのだろうか。その理由は決して一つではないが、まず思い浮かぶのが、清水依与吏(Vo/Gt)が綴る歌詞の力だ。back numberに対して、ラブソングの名手というイメージを抱いている人は多いはずで、実際に上述した累計再生数1億回超えの30曲の中には、「高嶺の花子さん」「花束」「ハッピーエンド」「クリスマスソング」をはじめ、恋愛をテーマにした楽曲が多い。どの曲においても、日々の何気ない瞬間を、丁寧に、かつ、鋭く切り取りながらリアルな情景を描き出していく清水の筆致が冴え渡っていて、また、そうした筆致は、男性目線の楽曲のみならず、女性目線の楽曲においても健在。back numberの楽曲を聴いて、「なんで私の気持ちが分かるのだろう?」「どうして僕の心境にリンクするのだろう?」と不思議に感じたことがある人は少なくないはず。それは、普遍的な感情を高い精度で射抜く清水の作詞家としての才能あってこその現象だろう。

 また、恋愛以外のテーマを歌う楽曲も多く、例えば、〈嬉しい事があった時に/誰かに言いたくなるのは/自分よりも喜んでくれる人に/育ててもらったからなんだろうな〉という渾身の一節が光る「手紙」は、親への愛を歌った楽曲であるし、ストリーミングで最も再生されている「水平線」は、極めて普遍的な応援歌として数え切れないほど多くの人の人生に寄り添い続けている。この曲は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でインターハイの中止が決定した2020年に、開催に向けて尽力してきた運営担当の高校生たちから手紙が届いたことがきっかけで清水が書き下ろした楽曲である。清水自身、学生時代に陸上競技でインターハイを目指していたこと、また、その年のインターハイの開催県が地元・群馬県であったことなどが重なり、彼にとって、2020年のインターハイの中止という出来事が自分事になったのだろう。〈出来るだけ嘘は無いように/どんな時も優しくあれるように/人が痛みを感じた時には/自分の事のように思えるように〉という歌詞が象徴的なように、清水は、〈自分の事のように思えるように〉歌詞を紡ぎ、その結果として、彼自身の想いが乗った渾身の一曲にして、極めて普遍的な輝きを誇る応援歌「水平線」が生まれた。なお、「水平線」は今年の『紅白』でも披露される予定だ。

back number - 水平線

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