なぜback numberの楽曲は色褪せず聴かれ続けるのか 「水平線」「どうしてもどうしても」に宿る一貫した共感性

back numberが色褪せず聴かれ続ける理由

まっすぐにリスナーの心へ言葉を届けるための姿勢

 『紅白』で「水平線」と合わせて披露されるもう一つの楽曲が、「NHKウインタースポーツテーマソング」として書き下ろされた新曲「どうしてもどうしても」。この曲について清水は、「最高峰のアスリートが集い、挑み、鎬を削る瞬間の輝きにも、頑張れる時ばかりではないけれどどうにも諦めきれずに足掻き続ける人間が辿り着く煌めきにも、同じ距離で熱く、優しく鳴ってほしいと願いながら楽曲を制作しました」とコメントしている(※1)。サビ前の〈僕だけの理由〉という言葉は、さまざまな人が、その人自身の立場や状況を当てはめて聴くことができる余白を感じさせる一節。また、清水は続けて、「競技者を志しながらも挫折し『頑張れなかった人間なんだ』と今もうずくまっている学生時代の自分に、『形も違うし時間もかかったけれど、君の目指したものに関わらせてもらえることになったよ。分からないものだね』と伝えてあげたいと思っています」とコメントしている(※1)。この言葉から、清水は、「水平線」の時と同じように、今回も〈自分の事のように思えるように〉楽曲制作に向き合ったことが伝わってくる。それはつまり、上述したさまざまな人の中には、かつての清水自身も含まれている、ということなのだと思う。この楽曲が深く胸を打つのは、「水平線」がそうであったように、清水自身の想いが乗っかっているからなのかもしれない。

 ここでは例として「水平線」「どうしてもどうしても」を挙げたが、自分事として楽曲制作に向き合う姿勢はほかの多くの楽曲にも一貫している。清水自身の想いが乗った各曲の一つひとつの言葉は、“どこかの誰か”ではなく、自分と同じような心境を抱く“僕”や“私”に向けてまっすぐ紡がれているもの。そうした一つひとつの言葉を正しく届けるためには、back numberの楽曲のメロディは全方位に開かれていなければならないし、サウンドは逞しい響きを放っていなければならない。彼らの楽曲の歌詞は、単体の言葉として読む時以上に、サウンドと合わせて耳で聴く時のほうがまっすぐ胸を打つ。伝えたいことを最大限に伝えることこそが最も優先される、という彼らの音楽観は最新の楽曲群にも貫かれていて、「ブルーアンバー」(プロデュース:蔦谷好位置)、「ある未来より愛を込めて」(プロデュース:sugarbeans)、「幕が上がる」(プロデュース:小林武史)はそれぞれプロデューサーが異なるが、やはり、どの曲も清水の歌と言葉が前面にフィーチャーされている。

 そして、丹精に紡いだ一つひとつの言葉が、一人ひとりのリスナーにしっかり届いていることを実感するための時間・空間が、ライブであり、だからこそ、彼らの活動においてライブは非常に重要な意味を持つ。2023年には5大ドームツアーも全公演完売、2026年には、back number史上最大規模となる初の5大スタジアムツアー『Grateful Yesterdays Tour 2026』の開催を控えている。スタジアムという広大な会場で、彼らは、いったいどのように音を鳴らし、どのように言葉を届けるのか。デビュー15年を経て、バンド史上最大の挑戦に臨む彼らの歩みに、期待が高まる。

※1:https://www.universal-music.co.jp/backnumber/news/2025-12-02/
※2:https://rockinon.com/feat/backnumber_201701

■リリース情報
back number「どうしてもどうしても」
2025年12月27日(土)配信リリース
配信リンク:https://backnumber.lnk.to/want_want_want

■ツアー情報
back number
スタジアムツアー『Grateful Yesterdays Tour 2026』
<日程>
2026年
5月2日(土)【宮城】キューアンドエースタジアムみやぎ
5月16日(土)【静岡】静岡エコパスタジアム
5月17日(日)【静岡】静岡エコパスタジアム
5月23日(土)【大阪】ヤンマースタジアム長居
5月24日(日)【大阪】ヤンマースタジアム長居
6月13日(土)【神奈川】日産スタジアム
6月14日(日)【神奈川】日産スタジアム
6月27日(土)【熊本】熊本えがお健康スタジアム
6月28日(日)【熊本】熊本えがお健康スタジアム

INFORMATION:https://backnumber.info/stadiumtour2026/

back number official HP

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