back number「新しい恋人達に」が真摯に描く“人生”と向き合う姿勢 『海のはじまり』と共振する言葉の力

back number「新しい恋人達に」を深読み

 back numberの新曲「新しい恋人達に」が大きな反響を呼んでいる。

back number - 新しい恋人達に [Official Audio]

 目黒蓮主演の月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)の主題歌として書き下ろされたこの曲は、7月15日に配信がスタート。2024年7月24日公開(集計期間:2024年7月15日〜7月21日)のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”で首位を獲得、現在もベスト10内にとどまり続けており「新しい恋人達に」は、back numberの新たな代表曲になったと言っていい。

 YouTubeで公開された「新しい恋人達に【Official Audio】」の再生数も300万回を突破。「月9で流れる度、じわーっと心に沁みます。家族やそばにいてくれる人を大切にしたいと思います」「歌詞が登場人物全ての人の気持ちを表してるかのようでとても胸に響きました」といったコメントからも、ドラマ『海のはじまり』のストーリーや登場人物と重ねながら聴いているリスナーが多いことがわかる。

 またX(Twitter)においても、「『頼んだ覚えはなくても 守られてきた事は知ってる』この歌詞を聞いた時凄く考えさせられた。親は子供が頼んでなくてもどんな時も味方でいてくれたし、守ってくれてた。子供の立場だからこそ気付かされたすごく心に残る歌詞」「子供もいなければ、親でもありませんが、『前を向いてもいいんだよ』と、そう言って貰えているような、素敵な楽曲」など、自分の実体験と紐づけた感想が数多くポストされている。

 さらに「『新しい恋人達に』というタイトルだけど、父親が自分の人生を振り返りつつ子供に向けて歌った歌じゃね?と思った。が、あれか、自分の子供がいつか恋することを歌っているから『新しい恋人達に』なのか」といった考察も。リスナーの数だけ解釈がある、それだけ奥深い魅力を持った楽曲と言えるだろう。

 清水依与吏は「新しい恋人達に」を書き下ろすにあたって、ドラマ『海のはじまり』の第1話から第9話までの脚本を読み込み、ドラマのプロデューサーと打ち合わせを繰り返し、デモ音源をやり取りしながら制作を進めたという。「クリスマスソング」(フジテレビ系ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん』主題歌)、「エメラルド」(TBS系ドラマ『危険なビーナス』主題歌)、「アイラブユー」(NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』主題歌)など、数多くのドラマ楽曲を担当してきた彼らだが、徹底的にドラマに寄り添い、丁寧に楽曲を作り上げていくスタンスは、「新しい恋人達に」でもきちんと踏襲されている。

 今回の楽曲のテーマは“父性”。それはもちろんドラマのストーリーと強くリンクしているわけだが(ドラマ『海のはじまり』は、主人公の月岡夏が“自分に7歳の子供がいた”という事実を知るところからはじまる)、そこを起点にしながら清水は、ドラマの主要人物すべてに結び付くような歌詞を書き上げた。そのことによって「新しい恋人達に」は、父から子に向けた視線のみならず、子どもの親に対する感情、もう会えなくなってしまった人への思いなど、幅広い聴き方ができる曲へとたどり着いた。そのことは先述したリスナーの感想コメントからも明らかだ。

 さらに特筆すべきは、清水自身の思いが色濃く反映されていること。ドラマの物語や世界観に深く没頭し、“父性”というテーマと向き合った結果、自分自身のことを描くしかなかった。どうしても上手くやれなくて、足掻きまくる姿を歌うしかなかった。そのあまりにも真摯な姿勢こそが、この曲の強烈な求心力を生み出しているのだと思う。

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