[Alexandros]が信じ続けたもっと輝く日 歴代ドラマー大集結――“大切な人たち”の存在と『VIP PARTY』の意味

[Alexandros]、歴代ドラマー集結したライブ

 [Alexandros]が、東京・TOYOTA ARENA TOKYOで2日間にわたり開催した『[Alexandros] 15th Anniversary VIP PARTY '25』。『VIP PARTY』とは、節目ごとに開催されてきた“ファン感謝祭”的なライブのこと。7年4カ月ぶりの開催となった今回は、デビュー15周年記念ライブだと明言されていた。今と未来にしか興味がないと常々語っている彼らが、正面切ってアニバーサリーライブを開催するとは珍しい。告知映像では歴代ドラマーの出演が示唆され、開催発表時から大きな話題を呼んでいた。

 ライブの日が近づくと、バンドの公式SNSで「セットリストが魔境の域」との投稿があり、ドラムが3台並ぶリハ写真がアップされた。観客の期待が最大限に膨らむなか、ついに幕を開けた特別な2日間。

 この記事では12月14日公演をレポートするが、オープニングから普段と違っていた。[Alexandros]のライブでは、SE「Burger Queen」が流れるなか、メンバーが登場し、同曲を生演奏するのが定番だ。しかしこの日はSEが速回しになり、1曲目「Kick&Spin」のイントロへと変貌。気づけば花道に川上洋平(Vo/Gt)、磯部寛之(Ba/Cho)、白井眞輝(Gt)、ステージにはリアド偉武(Dr)の姿があった。リアドのバスドラのヘッドには「3RD DRUMMER RULES」の文字が刻まれており、今後の展開への布石となっていた。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

[Alexandros](撮影=河本悠貴)
川上洋平(Vo/Gt)

 そして放たれるダイナミックなサウンド。[Alexandros]をよく知るファンを信頼したうえでのサプライズによって、熱狂が加速する。『VIP PARTY』ならではの醍醐味が、この日は随所にあった。川上が言っていた通り、レアな曲満載だったこの日。2日間のセットリストには9曲もの違いがあったが、そのなかで両日共通、序盤2曲目という重要な位置に置かれたのが「クソッタレな貴様らへ」だ。イントロだけで3回もテンポや曲調が切り替わるこの曲を演奏しながら、観客を“魔境”へ誘う4人。複雑怪奇な楽曲構成が示すのは、ロックバンドとしての本能に従うことを何よりも大事にし、ひとつの型に収まることを嫌った彼らの姿勢そのものだ。変わらない核を持ちながら音楽的には自由でありたい、まだゴールは遠いが死ぬまで走り続ける――セルフオマージュと挑発的な言葉、奔放なサウンドによるマニフェスト的楽曲を、デビュー15周年という節目で演奏した意図は明白だろう。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)
磯部寛之(Ba/Cho)
[Alexandros](撮影=河本悠貴)
白井眞輝(Gt)
[Alexandros](撮影=河本悠貴)
リアド偉武(Dr)

 2ndアルバム『I Wanna Go To Hawaii.』の冒頭を再現する「?」~「My Blueberry Morning」、数量限定で販売されたCDとライブでしか聴けない「Waterdrop」など、レアな展開が続く。「久々の曲ばっかでめちゃめちゃ楽しんでます」とメンバーが笑い合うなか、川上からは「『VIP PARTY』はたぶんこんな感じで続いていきますので」という発言も飛び出し、ファンは大きな歓声で応えた。

 2日間のセットリストを決めるにあたって、SNSでどの曲が人気なのかをチェックしたという川上。その結果、「あまり(名前が)見当たらなかった曲」として紹介されたのが、磯部が作曲に携わった「Dance With the Alien」、白井が作曲に携わった「Adam's Apple Pie」だ。磯部の「ランクインさせてくれー!」という叫びが観客の笑いを誘うなか、ベースとギターそれぞれの個性が際立つ2曲が披露された。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

 しかしファンは知っている。[Alexandros]のディスコグラフィには、あのドラマーが作った曲もあると。そんな観客の期待を汲むように、川上が「じゃあ、前のドラムの曲、やってもいいですか!」と告げ、演奏したのは、2代目ドラマー・庄村聡泰が作曲を手掛けた「Onion Killing Party」。そして、曲中に川上が「タマネギが苦手な前のドラムを紹介してもいいでしょうか!」と告げると、庄村が姿を見せた。上裸に毛皮のコート、鼻ピアスにヘアバンド。在籍当時を思わせるスタイリングで登場した庄村は、イエローのドラムセットに着座した。バスドラのヘッドには「2ND DRUMMER NAILED IT」の文字。約10年間ともに駆け抜けた庄村に、メンバーがこの言葉を贈ったのだろうか。

 「Onion Killing Party」の後半をツインドラムで鳴らしたあと、リアドがステージから捌け、川上、磯部、白井、庄村の4人に。ここで披露されたのは、この4人で初めて制作した楽曲「city」だ。イントロのフレーズを庄村が叩き始めた瞬間、リアドとは異なる個性が立ち上がってくる。スクリーンの映像の質感も合わさって、会場は“あの頃”の空気に包まれた。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)
リアド偉武&庄村聡泰

 庄村がステージを去ると、川上が「実はサトヤスの前にもうひとりドラムがいたんです」と初代ドラマーの石川博基を紹介。恐縮しながら登場する姿、上下黒のスタイリングは、庄村とは対照的だ。「1ST DRUMMER MADE IT」の文字が存在感を放つドラムセットにスタンバイした石川は、川上、白井、磯部とアマチュア時代からのレパートリー「温度差」を演奏。石川のプレイは力強く、キックの響きも重厚だ。川上も磯部も白井も個性溢れるプレイヤーだが、石川のドラムがあったからこそ、3人も思う存分演奏できたのだろう。そのドラムが彼らの下積み時代を支えてきたことを想像させる演奏だった。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)
川上洋平&石川博基

 「いろいろな道を歩んできたなと思うし、何よりベースを弾いててすごく楽しいんですよね」。そう語った磯部は、充実感からか、いつもより饒舌に裏話を明かした。「周年を謳うからには何か面白いことをしたい」と庄村や石川に連絡したところ、ふたりとも快諾してくれたという。そんなMCのあとに披露されたのはリアド、庄村、石川のトリプルドラム編成による「Adventure」。迫力満点のサウンドを楽しそうに鳴らす6人の姿が、観客の記憶に深く刻まれた。
 
 石川、庄村を送り出したあと、川上があらためてリアドについて語った。メンバーからの厳しい要求を「プレイで跳ね返した人」だという。「それがすごくかっこいいなと思いました。仲間としてリスペクトします」と続けた川上は、「3人目のドラマーじゃない。最後のドラマーですから」と宣言。観客には「これからが本番です。一緒に歴史を作っていきましょう」と伝え、次の楽曲「金字塔」へ繋げた。冒頭、4小節におよぶフレーズをリアドが鮮やかに、誇りを持って叩き切る。メンバー全員が出力マックスで演奏を繰り広げるなか、観客は声や拳を上げ、歴史的瞬間をともに作り上げた。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

 「金字塔」までの14曲でも十分ドラマティックだったが、ドラムのビートで「Waitress, Waitress!」を匂わせ「Starrrrrrr」を演奏するサプライズ、「風になって」での特大シンガロングなどハイライトが続く。「ステージからデカい音を出せるのは、みんなの声がデカいからです。こんな感じで切磋琢磨していきましょう」とファンに伝えた川上は、「クソッタレな貴様らへ」の歌詞を引用し、「オムツ履いてもForever Youngでいきましょう!」と笑顔。19曲目に「PARTY IS OVER」が演奏され、いよいよ終演かと思いきや、アウトロでハイパーポップ化する未聴のアレンジにファンは大喜び。そして最後に「Girl A (:D)」が鳴らされた。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

 トリプルドラム編成での「ワタリドリ」披露もあったアンコールで、ラストに配置されたのは「超える」。「今日を超えていこうぜ。もっともっとデカいところ、一緒に行こうぜ!」という川上の言葉とともに、過去のライブ映像を背負って演奏したこの曲は、15年の歴史を糧に、さらなる高みを目指そうという誓いだろう(名残惜しかったのか、メンバーはそのままステージに留まり、もう1曲追加されたが)。

 ファンと呼ぶのはなんか違うと言いながら、川上はライブ中「友達以上の何か」「愛人以上の何か」「恋人以上の何か」とさまざまな表現をしていた。そしてエンディング映像で、こんなメッセージが表示された。

「YOU GUYS ARE VERY IMPORTANT PEOPLE」
「WE ALL LOVE YOU」

 “VIP”の原義通り、[Alexandros]にとってファンは“とても大切な人たち”だ。そして、終演後には来年の活動についても発表された。間違いなく最高のライブだったが、「今日を超えていこうぜ」と言い放った彼らは、この記憶の上に、さらなる最高の瞬間を重ねていくだろう。走り続けた先でいつか、旧友と音楽で語らう日もまたくるかもしれない。

[Alexandros](撮影=河本悠貴)

[Alexandros]、結成の地・青山学院凱旋ライブ直前インタビュー 2024年バンドの現在地を語る

が2024年3月16日、17日に川上洋平(Vo/Gt)と磯部寛之(Ba/Cho)の母校である青山学院で『 Back To Sch…

[Alexandros]、ロックバンドとしての本能を解放させた『NEW MEANING』ツアーファイナル

東名阪のZepp会場で行われたのツアー『"NEW MEANING TOUR 2023"』は、11カ月ぶりのワンマンツアーに。同記…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる