藤原さくら、再び大きく開けた地平へ　自分を守るための思考を手放す――アルバム『uku』と武道館公演を語る

新作は「今の自分だから作れたアルバム」

――優河さんとのプロジェクト・Jane Jadeを始めたことも、藤原さんにとって大きな出来事だったように思います。

藤原：Jane Jadeも、今思えば本当に流れのなかで自然と一緒にやることになったという感覚がすごく強いんです。なんか私の人生って、そういう図らずとも導かれていくようなことが多い気がしていて。優河さんとの出会いも、まさにそのひとつというか。こんなふうになるとは思ってなかった景色を、一緒に見させてもらえていますし。お互い歌う人間で、シンガーソングライターとして共通言語がすごく多い相手だからこそ、任せるところは任せられるし。歌声も本当に大好きなので、一緒に歌っていると、自分ひとりでは見に行けないような景色に連れて行ってくれるような経験なんですよね。

　振り返ると、本当に点と点だったものが全部つながっていて。「あの時これをやって、この人に出会ったから、こういう考え方になったんだな」とか「あの時すごく傷ついたけど、あれがなかったら今こういうふうな考え方には至ってないかも」とか。まだまだ全然未熟だし……悟ってるわけではないんですけど（笑）。全部やってよかったなって思えることをすごく幸せに感じていますね。

――現在ニューアルバムを制作中とのことですが、どれくらい進んでいますか？

藤原：あと一曲、歌録りが終わったら全体としては終わりですね。タイトルもほぼ決まってはいるんですけど……今ここで言うと、解禁した時に変わっている可能性も充分ある（笑）（11月中旬に取材実施）。

――（笑）。参加ミュージシャンは？

藤原：『wood mood』に参加してくれた方々が勢揃いですね。そこに、さっき話した石井さんや、村岡苑子さんらも加わってくれて。かなりジャジーな雰囲気になっています。歌録りは本当に自由で、友達の草野華余子さんの家に「22時から歌いに行きます〜」って行ったりして（笑）。以前はスタジオを押さえて「今日は○曲録る」みたいな感じだったけど、最近は「ちょっとごはん食べよう」とか言って、振る舞ってもらってから歌うこともあって、制作スタイルがめちゃくちゃフレキシブルなんです。だからこそ、次作のカラッとした雰囲気にもすごく合っている気がします。今の自分だから作れたアルバムになっていると思いますね。

――コンセプトとしては、前作『wood mood』の続編のような感じだと以前おっしゃっていましたね。

藤原：はい。『wood mood』は森のなかに迷い込んでしまったようなイメージがあったんですけど、今作ではその森を抜けて、バーン！　と開けたビーチに出たような感覚があります。まっさらで、風通しがよくて、ただその場に身を委ねていられるような状態。そのイメージを土台にしています。今回はいろんなタイプの曲が入る予定だけど、根っこでは全部がつながっていて、同じテーマをそれぞれの角度から語り合っているような作品になっていると思います。

　前作『wood mood』を作っている最中は落ち込みが強くて。何十年もかけて身についてきた思考のクセや習慣は、一朝一夕で変わらないじゃないですか。「あ、掴めたかも」と思っても翌日にはまた「わからない」というところに戻っていたり、「これでいいじゃん」と思えたのに急に「できない、ダメだ」と落ち込んだり。そんな波とずっと向き合っていた時期が、一年くらい続きました。

――そうだったのですね。

藤原：はい。気分転換に海外へ行って遊んでみるなど、生活の環境を変えてリフレッシュしても、「やっぱりできないかもしれない」と思い詰めて、本当に一歩進んだと思ったら三歩下がるような感じで。「どうしたらいいんだろう……」と考え込む時期でした。でも、この数カ月でライブが戻ってきて、ビルボード大阪とブルーノート東京でワンマンもやって。ツアーをちゃんと完走できたことで、ようやく自分に自信が持てるようになって。そこから一気にあっけらかんな曲が書けるようになりました。

　やっぱり作品って、その時の気づきや視点が全部出るものなんですよね。前作の直後にすぐ次の制作に入っていたら、どうしても同じ自分が続いてしまっていたと思います。だから、アルバム単位で考えるなら、いったん時間を置いて自分のなかで咀嚼するプロセスも必要。今作はまさにその時間を経て作ることができたので、「間を空けてよかった」と心から感じています。

――10年の締めくくりとして、来年2月には武道館ワンマンがあります。こちらの準備はどれくらい進んでいますか？

藤原：ゼロですね（笑）。

――あははは。でも、このあいだ、ビジュアル撮影をされていましたよね。カラフルで、最近のコンサートとはまた違う雰囲気に見えました。『大音楽会』というぐらいですから、趣向も変わるのかなと。

藤原：そうですね。ビルボードライブやブルーノートのライブとは、また全然違う感じになりそうです。大きいバンドで、メンバーもたくさんいますし、新しいことにチャレンジしたいなって思っています。10周年の締めくくりという意味でも、新しい曲もやりつつ、昔の懐かしい曲もやれたらいいな、と。アレンジを変えたり、今の自分だからこそできる形で、ハッピーに表現できたらと思っています。

　2月って旧正月で、言ったらちょっと春なんですよね。2月末でもあるので、自分のなかの冬みたいなものがようやく終わるのかな、って。これから春に向かって、もっと身軽になって、今まで自分を守るためにまとってきた思考を手放していく――。そんな衣替えみたいな気持ちで臨めたらと思っています。

■リリース情報
ALBUM『uku』
2026年2月18日（水）発売

予約リンク：https://sakurafujiwara.lnk.to/uku_CD

仕様：CD1枚組／紙ジャケ仕様／ポスター型歌詞カード付き
価格：4,180円（税込）
品番：TNJG-0006
POS：4943566314562
レーベル：Tiny Jungle Records
発売・販売：アミューズ

■公演情報
『藤原さくら 10th Anniversary 武道館大音楽会』
2026年2月23日（月・祝）日本武道館
OPEN 16:00／START 17:00

＜席種／チケット料金＞
指定席：9,900円（税込）
U18指定席：8,800円（税込）
FCお土産付指定席：17,000円（税込）
FCお土産付U18指定席：16,000円（税込）
お土産付指定席：17,000円（税込）
お土産付U18指定席：16,000円（税込）
※枚数制限：一人4枚まで
※年齢制限：3歳以上はチケットが必要
※3歳未満は、保護者1名につき、膝上観覧1名まで無料（座席が必要な場合はチケットが必要）。
※小学生・未就学児童のみでの入場は不可。

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