森口博子「私にとって“歌=生きる”」 恵まれ、守られた40年――アルバム『Your Flower ~歌の花束を~』

森口博子、1万字超えで語る新アルバム

売野雅勇×ニール・セダカ 40年ぶりの邂逅が生んだ名曲

――次の曲は、森口さんが作詞、ピアニストの西村由紀江さんが作編曲したバラード曲「ペンタス」。前曲からの落差はすごいですが、イントロから一気に楽曲の世界に引き込む力がありますね。

森口:ここはもう振り切ろうと思って。由紀江さんのピアノは透明感があって、響きが美しくて大好きなんです。(「ドキがムネムネ♡」の)余韻には浸らせないぐらいの力があるんです。ピアノとボーカルのみの同時レコーディングで一発録りに挑戦しました! オファーするにあたり、メジャーとマイナーのどっちの曲調がいいか悩んだんですけど、音楽プロデューサーの時乗(浩一郎)さんが「マイナーから始まって、途中からメジャーになって明るく前向きになる形にしては?」と提案してくださって。出来上がってきた素晴らしいそのメロディを受け取った時は私がちょうど足を骨折していたタイミングで、ベッドのなかで曲を聴いた時に、窓から射す光があまりにも美しくて苦しかったんですよね。40周年の「これから」っていう時期に、一旦すべて中断してしまって不安な気持ち。自分だけ取り残されているような感覚。でも、そのネガティブな気持ちのままではいたくなくて、早くこの不安を断ち切らなきゃなっていう思いでこの歌詞が生まれました。

――不安を断ち切り自分を信じる気持ちが描かれていますよね。

森口:ペンタスは、小さいお星様の形をした花がいくつも連なっている花なんです。それが当時の自分と重なったというか。今できることは小さいかもしれないけど、一つひとつ積み重ねることで大きな花になっていく。花言葉も「希望が叶う」「願い事」なので、今の自分にぴったりだと思って。自分が子供の頃に疑いもなく抱いていた「歌手になる」という願いも、最初のきっかけは小さなものじゃないですか。でも、それが積み重なって今がある。ピュアな気持ちをたくさん持っていた、真っ直ぐに願える子供の頃の自分がいたのなら、大人になった自分も疑いなく願えるはず、と思いました。

――「聖なる惑星 -Sanctuary-」は、TVアニメ『機動戦士Zガンダム』(テレビ朝日系)後期オープニングテーマとして知られる森口さんのデビュー曲「水の星へ愛をこめて」(1985年)を手がけた、売野雅勇さん(作詞)とニール・セダカさん(作曲)のコンビによる新曲になります。

森口:すごいことですよね!! デビュー曲の「水の星へ愛をこめて」以来、40年ぶりに売野さんとニール・セダカさんがアニバーサリーにまた新曲を書き下ろしてくださるっていう奇跡――原点回帰ここにあり、ですね。本当に一度聴いただけで印象に残る、素敵な世界を書いてくださって。

――売野さんの歌詞も素晴らしいですね。

森口:歌い出しの〈涙はたったひとつだけ/心が造れる宝石〉から心を掴まれました。タイトル含めてとにかく美しい。オファーにあたっては「水の星へ愛をこめて」のファンの方々に向けてとだけお伝えして、細かいリクエストはしなかったんです。売野さんなら安心ですし。売野さん曰く「かなりプレッシャーだった」とのことで。あの売野さんがプレッシャーを感じるなんて、本当に大切に書いてくださったんだと思って逆に嬉しかったです。でも、この出だしを書けた時に「ああ、もううまくいったな」と思ったんですって。〈水の星〉というワードも入れてくださって感激です。輪廻転生を感じる深い歌詞で、売野さんにLINEでそのことをお伝えしたら「よくぞ読み取ってくれました」と言ってくださって。最後の〈目を閉じ耳をあてて聴く/愛する人の鼓動には/宇宙を旅した人の/懐かしい 崇高な/静けさに似た声がする〉は、まさにそうじゃないですか。なんと高尚な歌詞。何重も巡り巡って、今、肉体のある私たちがここで巡り会うっていう。

――歌の表現も、40年のキャリアがあるからこそできる深みのある表現と言いますか、歌謡曲の伝統を感じさせる美しさを感じました。

森口:この曲、バラードで始まる歌い出しが特に難しかったんです。ニール・セダカさんがくださった曲は、冒頭からとてもキャッチ―でリズムがある始まり方だったんですけど、私が「ここは音数を減らしてたっぷりと、まず歌詞をきちんとお伝えしたい」とリクエストした結果、自分でハードルを上げてしまって(笑)。そうしたら売野さんも冒頭が大事だと同じことを考えていたみたいで、〈涙はたったひとつだけ/心が造れる宝石〉というフレーズが生まれたらしいんです。昭和の大御所スターのおふたりに、令和にもこうやって名曲を書いていただいたのは、本当にすごいことで感動しています。

――そして周年の恒例となっているアカペラによるセルフカバー「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~ (40人の森口博子によるアカペラヴァージョン)」をはさみ、アルバムを締め括るのは「真心ブーケ」。盟友・木根尚登さんが作曲、畑亜貴さんが作詞を担当しています。

森口:キネピー(木根尚登)とは家族ぐるみの長いお付き合いだし、アコースティックライブツアーも一緒に回った仲なので、絶対書いていただきたいと思って。で、木根さんといえばグッとくるバラードなので、ファンの方のあいだで呼ばれている「“キネバラ”をそのまま書いてください」とオファーしました。そうしたら「博子ちゃんにとっての『My Way』(フランク・シナトラ)を書きました」と言ってくださって、もうグッときちゃって。温かいんだけどお洒落で、壮大さもある曲になりました。

――その楽曲があった上で、畑亜貴さんに歌詞を書いてもらったわけですね。

森口:畑さんには「星より先に見つけてあげる」でお世話になって、もう本当にパワーワードとなる言葉を生み出してくださる方なので、絶大なる信頼のもと、キネピーが「森口博子の『My Way』」をイメージして曲を書いたことだけをお伝えして、あとはお任せしました。そうしたら、歌詞の始まりが〈なんて遠くまで来たのだろう〉で、〈ちょっとだけ褒めてみようかな/がんばったね がんばれたね〉と続くところに感動してしまって。私も周年を迎えるたびにいつも通過点と思っているし、褒めたいけどまだちょっとだけなところが素敵ですよね。〈涙は笑顔の準備だよと〉とか、どこを切り取ってもいいフレーズばかりで。

――最後の〈ずっと、ずっと…〉というフレーズでの、フェイクも交えた歌唱表現が素晴らしかったです。

森口:魂から〈ずっと〉と思いながら歌いました。20代の頃に思う〈ずっと〉と、あと数年で60歳を迎える〈ずっと〉は意味合いが違うじゃないですか。一日一日の愛おしさ、人との縁のありがたさ、この〈ずっと〉は自分のなかでは本当に深い〈ずっと〉です。私のファンの皆さんは、懐かしい曲だけじゃなくて、ちゃんと新しいアップデートした私を求めてくださる。だからこれからも新しいものを届けていきたいし、懐かしい楽曲でもまた思い出に帰って繋がって、さらにお互いに未来を見つめていこうっていう関係をすごく感じるんです。

――その意味では、これから先もともに歩んでいくことを約束する、真心のこもったアルバムになりましたね。

森口:はい、懐かしさも新しさも共存する、新旧最高のブレンドっていう感じですね。

――最後に、ツアー『森口博子40周年アニバーサリーツアー 第一章 “Your Flower”』への意気込みをお願いします。

森口:40周年のアニバーサリーなので、ファンのみんなが待っているであろう懐かしい楽曲やレアな曲、あとは初めましての方も置いてけぼりにならないコーナーや各会場限定の選曲も用意しています。もちろん今回のアルバムからの新曲も歌いますし、懐かしい気持ちと新たな楽曲で、またお互いこの先もともに生き抜いていける最高のアニバーサリーになることを確信してます。ファンのみんなとの信頼関係が輝きますよ! 40周年でこれをやっちゃうと、次の周年はどうするんだとか思っちゃいますけど、私はもう「45周年は何する?」って今からみんなに話しているんですよ。まだ内緒ですけど(笑)。

■リリース情報
40周年アニバーサリーアルバム 『Your Flower ~歌の花束を~』
発売中
特設サイト:https://cnt.kingrecords.co.jp/yourflower/
配信リンク:https://king-records.lnk.to/YourFlower

『Your Flower ~歌の花束を~』ジャケット写真
ジャケット写真

CD-1[オリジナルアルバム]初回限定盤/通常盤 共通
01. ETERNAL DAYS ~あなたがいてよかった~
02. Good Morning Good Night
03. 元祖バラドルなんだもん!
04. forever and ever and ever and ever.......
05. Ubugoe
06. 年下のあいつ
07. ドキがムネムネ♡
08. ペンタス
09. 聖なる惑星 -Sanctuary-
10. ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~ (40人の森口博子によるアカペラヴァージョン)
11. 真心ブーケ

CD–2[ベストアルバム 2025バージョン]初回限定盤のみ
01. 水の星へ愛をこめて
02.サムライハート
03. ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~
04. 夢がMORI MORI
05. スピード
06. ホイッスル
07. LUCKY GIRL ~信じる者は救われる~
08. もっとうまく好きと言えたなら
09. あなたといた時間
10. 視線
11. Someday Everyday
12. もうひとつの未来 ~starry spirits~
13. I wish ~君がいるこの街で~
14. 星より先に見つけてあげる
15. 宇宙の彼方で
16. 鳥籠の少年

Blu-ray 初回限定盤のみ
MV
01. ETERNAL DAYS ~あなたがいてよかった~
森口博子 コンサート“Starry People”(2022.5.3 昭和女子大学 人見記念講堂)
01. スピード
02. 水の星へ愛をこめて
03. 限りなき旅路 / with VOJA

<初回限定盤>
・2CD+Blu-ray
・¥6,600(税込)
・KICS-94224/5

<通常盤>
・CD ONLY
・¥3,300(税込)
・KICS-4224

■公演情報
『森口博子 40周年アニバーサリーツアー 第一章 “Your Flower”』
2025年12月20日(土)広島・はつかいち文化ホール ウッドワンさくらぴあ 大ホール
2025年12月21日(日)大阪・森ノ宮ピロティホール[完売]
2026年1月10日(土)福岡・福岡市民ホール 中ホール[完売]
2026年1月24日(土)東京・東京国際フォーラム ホールC[完売]

各公演時間:2時間30分前後を予定
チケット:全席指定 ¥11,000(税込)
各プレイガイド先行受付中:https://www.mogeshan.net/information/tour2025/

森口博子 オフィシャルサイト:https://www.mogeshan.net/
X(旧Twitter):https://x.com/hiloko_m
YouTube:https://www.youtube.com/c/hiroko_m
ブログ:https://ameblo.jp/hiroko-moriguchi/

森口博子と『GUNDAM SONG COVERS』――“最終章”のその先へ! デビュー40年目の今、挑戦と感謝を語る

“大人のためのガンダムソングカバーアルバム”と題された、森口博子によるアルバムシリーズ『GUNDAM SONG COVERS』。…

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