KATSEYE、『グラミー賞』2部門ノミネートを実現した成功の秘密 K-POPの尺度では測れない挑戦的なスタイルを解説

鮮烈な存在感をシーンに刻んだデビュー年
グローバルガールグループ・KATSEYEの勢いが止まらない。彼女たちはHYBEとGeffen Recordsが共同で手掛け、昨年6月に正式デビュー。K-POPの遺伝子を受け継ぎながらも独自のスタイルを構築して、はやくもグローバルな音楽シーンでポップアイコン的な存在になろうとしている。
登場から現在に至るまでの道のりは実に華やかだ。2023年にオーディション番組『The Debut: Dream Academy』で誕生したこのグループは、キューバ、インド、イタリア、韓国などさまざまなルーツを持つ、DANIELA(キューバ系/ベネズエラ系アメリカ人、アメリカ・アトランタ出身)、LARA(インド人、アメリカ・ニューヨーク出身)、MANON(ガーナ系イタリア人、スイス・チューリッヒ出身)、MEGAN(中国系アメリカ人、アメリカ・ホノルル出身)、SOPHIA(フィリピン人、フィリピン・マニラ出身)、YOONCHAE(韓国人、韓国・ソウル出身)の6人で構成。グループが結成されるまでの過程はNetflixで配信中の『ポップスター・アカデミー: KATSEYEになるまで』でも追うことができるが、当初からアメリカのマーケットを中心に活動を展開し、多国籍チームらしい聴き手を選ばないサウンドメイクと、国境を越えた魅力を放つパフォーマンスで、瞬く間に熱狂的なファンを獲得した。
2024年6月にリリースした第1弾シングルのタイトルは「Debut」。ライアン・テダー、タイラー・スプライといった世界の音楽シーンにおいて数々の名曲を生み出してきた敏腕プロデューサーたちが集結して制作したこのナンバーでは、軽快なリズムに乗りながら気だるくも芯のある歌声を響かせる。ラブソングとメッセージソングのオーバーラップさせたような仕上がりで、〈we do what we do〉(私たちはやるべきことをやる)といったフレーズからはガールクラッシュの香りも漂う。
「Debut」で弾みをつけたKATSEYEは、その後SNSを中心にバイラルヒットを記録し、グループを代表する1曲となる2ndシングル「Touch」を同年7月にリリース。続く8月には、最初のEPとなる『SIS (Soft Is Strong)』を発売。いずれも新鋭アーティストを対象としたチャートである、米Billboardの「Heatseekers Album Chart」と「Emerging Artists」でともに1位を獲得し、新人アーティストとして華々しいデビューを飾った。夏にはほかにもアメリカで開催された大型イベント『KCON LA 2024』に出演したり、11月にはLAで初開催となった『2024 MAMA AWARDS』に出演したりと、着実にキャリアを重ねていく。
『2024 MAMA AWARDS』では「Debut」と「Touch」をメドレー形式で披露したが、デビューから半年弱とは思えないその堂々としたパフォーマンスは、K-POPのシーンを超えて世界中の人々の目に留まることに。YouTubeで公開されているパフォーマンス映像は、現在(12月8日時点)までに1,600万回以上再生されている。
“グローバルグループ”として飛躍した2025年
わずか6曲入りのEPで力強くデビューしてみせたKATSEYEだが、大躍進といえる活躍ぶりを見せたのは、今年からだろう。前年に発表したデビューEP『SIS (Soft Is Strong)』では、“柔らかさは強さである”という、グループの核にある信念と、多様な文化と背景を持つ彼女たちが築き上げたシスターフッドを表現したが、今度はより深く自分たちらしさを追及し始める。その出発点となったのが、2025年春にリリースしたシングル「Gnarly」だ。
ハイパーポップを軸にパンキッシュかつローファイ的な要素を加えたこの曲は、メンバーのダイナミックなパフォーマンスと組み合わさることにより、独自の世界観を構築。『SIS (Soft Is Strong)』で感じられたK-POP的な美意識とは異なる、今まで以上にアグレッシブで個性豊かな6人のボーカルと一挙手一投足に魅了されてしまう。デビューEPとは一線を画した姿は、さらに多くの音楽ファンを惹きつけることになり、「Gnarly」のMVはたちまちバイラルに。公開されるや否や、YouTubeの音楽動画のトレンドで1位を獲得し、現在までに驚異の1億2,000万回再生を記録している。
「Gnarly」は米Billboardのシングルチャート「Hot 100」にもグループとして初めてランクインし、最高90位まで上昇。世界のフィールドで存在感を見せ、6月にリリースされる2nd EP『BEAUTIFUL CHAOS』への期待を高めることになった。
さらに、世界の音楽シーンにおけるグループの勢いに拍車をかけたのが、同EPリリースの直前に発表された2ndシングル「Gabriela」である。ラテンの要素を取り入れ、キューバ系/ベネズエラ系の出自であるメンバーのDANIELAがスペイン語での歌唱も披露するこの曲は、これまで以上により広いオーディエンス層に届くこととなり、Spotifyの「トップ50 – グローバル」チャートで最高7位にランクイン。世界的な人気を獲得したこの楽曲は、米Billboardの「Hot 100」でも記事執筆時点で最高31位(※1)まで順位をあげ、グループとしての最高記録を現在進行形で更新している。
この頃からは、世界的に注目を集めるイベントや式典への参加が目立つようになってくる。夏にはアメリカ・シカゴで開催された大型フェスティバル『Lollapalooza 2025』(8月)に出演して8万5千人を動員し、日本でも『SUMMER SONIC 2025』(8月)で披露したダイナミックなダンスブレイクが話題に。『SUMMER SONIC 2025』出演後に開催した日本初のプレミアム・ショーケース公演はソールドアウトし、観客はグローバル・ガール・グループとしてノリにノっている彼女たちの貴重なステージを目に焼き付けた。
さらに全米最大規模の音楽授賞式『2025 MTV Video Music Awards』(9月)で「MTV PUSHパフォーマンス賞」を受賞するなど快進撃が続くなか、KATSEYEのワールドワイドな人気の決定打となりそうなのが『第68回グラミー賞』(2026年2月開催予定)である。彼女たちは同賞で「年間最優秀新人賞」と「最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)」の2部門にノミネートされている。なかでも「年間最優秀新人賞」は、『グラミー賞』のなかでも主要4部門のうちのひとつに数えられ、過去にはビリー・アイリッシュやMaroon 5、マライア・キャリーといった世界的スターたちが受賞。1990年代に一世を風靡したSpice Girls、かつてビヨンセも在籍したDestiny's Childなど、KATSEYEの“先達”とも言えるようなスーパーグループでさえ、ノミネートに至らなかった。彼女たちが、デビューからわずか1年半で『グラミー賞』候補にまで駆け上がった事実は、グループに対する世界からの注目度の高さが窺える。仮に受賞を逃したとしても、ここでのステージングを通してより幅広いファン層を獲得できるに違いない。
10月には、マライア・キャリーとのコラボレーション動画「All I Want for Halloween is… “Gabriela”」を公開。この出来事は、圧倒的なパフォーマンス力で世界的歌姫となった彼女に、その実力が認められていることの証左と言えるのではないか。マライアが「This is too cute」とため息交じりに鑑賞する、彼女たちの華やかなパフォーマンスは世界中で話題を集めた。そして11月は世界的人気ゲーム『VALORANT』とのコラボソングを発表。音楽シーンに止まらず、他のエンタメ分野にまでその存在感を広げるなど、上昇気流はまだまだ発達しそうだ。
グループとしての魅力を武器に世界的ポップアイコンへ
メンバーたちは現在、初の単独北米ツアーを行っており、来年もすでに『Coachella Valley Music and Arts Festival』をはじめ、数々の有名フェスティバルへの参加が決まっている。前途洋々な未来が待っているKATSEYEだが、グループならではの魅力とは一体何だろうか?
筆頭にあげたいのは、常にフレッシュなスタイルを届けようとする姿勢だろう。キャッツアイという宝石を眺めると、角度によって異なる模様が現れるように、彼女たちもさまざまなキャラクターやバックグラウンド、センスなどをフルに発揮して多彩な輝きをアピール。その姿はいつ見ても新しく、思わず引き付けられてしまう。
こうした試みをポップフィールドで実践し、前述の通り結果を残しているのも評価したいポイントである。オーディション番組で12万人の応募者のなかから選ばれた6人は、ポテンシャルの高さは言うに及ばず、Spice Girlsのようなアイドル性も身に付け、TLCやDestiny's Childといったレジェンドたちを彷彿とさせるオーラを放つ。そのような特別な存在が新曲を出すたびに異なるカラーを見せるとなれば、短期間でポップアイコンになったこともうなずける。その出自から、K-POPの文脈で語られることも少なくないKATSEYEだが、今やその尺度だけでは彼女たちの全容を測ることはできず、その魅力や人気の理由を正確に紐解くことはできないだろう。
グローバルグループとして着実に成長していくKATSEYE。彼女たちのGnarly(ヤバい)な足跡が世界中のポップシーンのさらなる活性化につながることを期待したい。
※1:https://www.billboard-japan.com/charts/detail/&a=uhot100
■リリース情報
『BEAUTIFUL CHAOS』
発売中
試聴・購入リンク:https://umj.lnk.to/KATSEYE_BC
■関連サイト
日本オフィシャルサイト:https://www.universal-music.co.jp/katseye/
YouTube:https://www.youtube.com/@katseyeworld
X(旧Twitter):https://x.com/katseyeworld
Instagram:https://www.instagram.com/katseyeworld/
TikTok:https://www.tiktok.com/@katseyeworld



















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