XG JURIN ASAYAのソロ楽曲がバイラルヒット　ひとりのアーティストとして“覚醒”したスキルの高さ

Viral Chart Focus

　Spotifyの「DailyViralSongs（Japan）」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「SpotifyTopSongs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの12月3日付のTOP10は以下の通り（※1）。

1位：INI「Present」
2位：JURIN ASAYA「PS118 (feat. Rapsody)」
3位：YANGYINYUE「弥渡山歌 (Midu Echoing)」
4位：IS:SUE「Super Luna」
5位：X 1ark「Rainy (feat. Bene Baby)」
6位：M!LK「好きすぎて滅！」
7位：Kelly is Green「SO BAD」
8位：HWASA「Good Goodbye」
9位：Aogumo「冬の魔法」
10位：BE:FIRST「夢中」

　今回は、XGのJURINのソロデビューシングル「PS118 (feat.Rapsody)」をピックアップする。

　XGは、グローバルに活躍する7人組グループだ。HIPHOP、R&Bを基軸にした高い音楽性で世界から注目される存在である。「LEFT RIGHT」（2023年）が、日本人グループとして初めてアメリカのラジオチャート『Mediabase Top 40 Radio Airplay Chart』の40位にランクインしたほか、1stミニアルバム『NEW DNA』（2023年）より先行リリースした「GRL GVNG」が米ビルボードチャート『Hot Trending Songs Powered by Twitter』で初登場1位を獲得。Spotifyの『Viral Top100』において、「SHOOTING STAR」「LEFT RIGHT」の2曲が、グローバル、アメリカ、イギリス、日本、韓国などを含む46の国と地域のチャートにランクインするなど、これまで幾多の快挙を成し遂げ、ファンダムを拡大してきた。その中心に立ち、XGの世界観を牽引してきたのがリーダーのJURINである。彼女が11月18日にJURIN ASAYA名義でソロ曲「PS118 (feat.Rapsody)」をリリース。デイリーバイラルチャートでは、12月1日に初登場2位にランクインを果たした。

　「PS118 (feat.Rapsody)」は、ミドルテンポのミニマルトラップな楽曲。抑制された低音、ハイハットの細かい刻み、かすかに鳴るシンセの音などで構成されたトラックが、その空白も含めて実に洗練されており、無重力のような浮遊感がある。しかしながら、UKドリル的な沈み込む低音が印象に残り、ダークでクールな世界観を醸し出していく。中音域を薄くしたトラックで、楽曲の中心には、JURINとRapsodyのフロウが絶えず浮かぶ。ラストは、JURINのアカペラのラップ（つまり声だけ）で終わるが、バックトラックが無音になる瞬間に、彼女のクールなラップの鋭さがむき出しになるのだ。

　歌詞は、JURINのアイデンティティや進化を象徴する比喩として“宇宙”が使われ、「自分だけの宇宙を開拓する曲」（※2）という本人コメントのとおり、これは彼女自身の軌跡を描く物語でもある。自分のビジョンと波長を信じて進む彼女の姿こそ、しなやかで美しい。この美しさが、言葉とフロウの端々に鮮やかに刻まれている。

　対して、本曲でラップの強度、低音の重心を決定づけているのが、フィーチャリングに迎えたラプソディだ。『グラミー賞』受賞のレジェンドMCであり、“ラップの核”を体現し続けてきたラプソディは、JURINのラップを「英語が母国語ではないのに、あそこまで表現できるなんて尊敬しかありません。“本物のMCだ”と強く感じましたし、一緒にマイクを並べられて本当に楽しかったです」（※2）と賞賛している。お互いがお互いの“ラップの個性”や“声質”を理解し、リスペクトしているからこそ、それぞれのバースもすべてが必然なのだと思わせる説得力を生み出している。

　JURINは語尾をタイトに切り捨てる鋭いフロウで、気怠さと攻撃性を同時に生む。一方ラプソディは、言葉遊びの密度と歴史を背負ったリリックで曲に深度を与えている。結果、HIPHOPとしての純度が非常に高い。この純度の高さは、間違いなくこの曲の最大の個性だと思う。

　JURINは、この1曲でひとりのアーティストとして覚醒したのだろう。フロウの精度、声の強度、世界観の構築と、すべての要素において、JURINの持つ潜在力を十分に提示している。今後、海外アーティストとのさらなる共演など、グローバルシーンでの活動の広がりが期待される。

※1：https://charts.spotify.com/charts/view/viral-jp-daily/2025-12-03
※2：https://realsound.jp/2025/11/post-2223525.html