米津玄師&宇多田ヒカル、矢沢永吉、XG、STARGLOW、LANA、乃紫……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は米津玄師&宇多田ヒカル「JANE DOE」、矢沢永吉「自由の風」、XG「GALA」、STARGLOW「Moonchaser」、LANA「Like a Flower」、乃紫「ベーシスト」の6作品をピックアップした。(編集部)

米津玄師&宇多田ヒカル「JANE DOE」

米津玄師, 宇多田ヒカル Kenshi Yonezu, Hikaru Utada - JANE DOE

 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』エンディングテーマとなる新曲で、作詞作曲は米津玄師、歌唱は宇多田ヒカルを迎えてのデュエットとなる。意外な組み合わせに思えるが、聴いてみれば相性は抜群で、米津のドラマティックな三拍子に、宇多田の声が深淵な悲しみを、あるいは神聖な光のようなものを挿し混んでいく。〈まるでこの世界で二人だけみたいだね〉という独白から始まるストーリーは、作品の世界観を考えると、決して幸せなラブソングではないのだろう。二人の声が重なり〈どこにいるの(ここにいるよ)何をしているの(ずっと見てるよ)〉と続くあたりは、思い合っているのに届かない切なさが炙り出される。これぞエモーショナルな名曲。(石井)

矢沢永吉「自由の風」

Jiyuu No Kaze

 8月に行われたフェス『CANNONBALL 2025』で圧倒的なロックスターぶりを目の当たりにした筆者は、通算35作目となるニューアルバム『I believe』にも当然のようにぶっ飛ばされたわけだが、なかでも強烈なインパクトを放っていたのが「自由の風」だった。一聴するとシンプルなロックンロール。ブギースタイルのギターリフ、抑制の効いた8ビートを軸にしたアレンジもオーソドックスなのだが、そこに絡むボーカルのメロディのタイム感が独特で、きわめて独創的なグルーヴが渦巻いているのだ。名曲「時間よ止まれ」などもそうなのだが、矢沢が生み出す旋律はキャッチーなのにクセが強く、それが中毒性につながっていく。50年のキャリアで、またこんなに新しいものが作れるのかと驚愕してしまう。(森)

XG「GALA」

XG - GALA (Official Music Video)

 『スター・ウォーズ』のセットなの? と目を奪われっぱなしのMVがとにかくすごい。これまでも強烈なビジュアルや衣装で攻め続けてきたXGの1stフルアルバムからの先行配信となるこの新曲は、ひとつの頂点、結晶とも言える金字塔である。もちろんビジュアルインパクトだけではなく、音楽的にも完璧。Underworldに近いダンスミュージックはクールさと気品とポップさを併せ持ち、7人の歌唱やラップは見事な英語とリズム感をキープしながら美しい流線型を描く。場合によっては人間性の欠如や共感しづらさを指すのが“完璧”という言葉だが、こんなかっこいいグループ見たことない、もしかしたら実は宇宙人かも、といった妄想は、XGに限ってよく似合うのだ。(石井)

STARGLOW「Moonchaser」

STARGLOW / Moonchaser -Music Video-

 オーディションプロジェクト『THE LAST PIECE』から誕生したBMSG発の5人組ボーイズグループ。オーディション前より事務所で育成、SKY-HI作品にゲスト参加したメンバーなども在籍しており、すでに実力は織り込み済み。今後本格的なR&BやHIPHOPもモノにしていくと思われるが、この曲はプレデビューに相応しく、また「星のように輝きながら成長する」という意味のグループ名に相応しく、これからの眩しい未来を描いた爽やかな4つ打ちダンスナンバーだ。〈飛び出せ〉〈もう待っていられない〉などの歌詞も平均年齢18.6歳の若さにぴったり。かっこよさ、楽しさ、さらに色気がすでに備わっているMVにも注目を。(石井)

LANA「Like a Flower」

Like a Flower

 2004年生まれのLANAが大人になっていく過程で経験した様々な感情を落とし込んだ新作EP『Like a Flower』。表題曲「Like a Flower」は、Nirvanaの名曲を想起させるギターリフから始まる。HIPHOP/R&Bをベースにしてきたこれまでの楽曲とは違うスタイルだが、まだ始まったばかりの彼女のキャリア的にも音楽性を固める必要はまったくなく、これもまた自然で当たり前の変化なのだろう。荒野のような世界を背景にした〈Streetの片隅から/始まった物語があるから〉というラインを刻むリリックはもちろん彼女自身がたどってきた道と重なっている。どんな状況でも自分の価値を信じ、一輪の花のように生きていきたい。そんな決意とともにLINAは、横浜アリーナ、大阪城ホールのステージに立つ。(森)

乃紫「ベーシスト」

乃紫 (noa) - ベーシスト【Official Music Video】

 レコードに針を落としたときのノイズ、軽快なシャッフルビートに導かれる新曲「ベーシスト」は、ベーシストに恋する女の子を主人公にした楽曲。〈イントロ〉〈アンコール〉〈いったんギターソロ〉などの音楽用語(?)を交えながら、ラブリーでシニカルな恋の歌へと仕立てている。〈私が歌えばなんでも/ラブソングになるから〉というフレーズ通り、何か一つアイデアがあれば、そこから派生するアレコレをいろんな楽器のフレーズへと変換し、間口の広いポップネスと何度聴いても楽しめる奥行きを併せ持った楽曲へと結びつけてしまう彼女のスキルとセンスが存分に発揮されている。もちろんライブにもピッタリなので、かっこいいベースラインをぜひ現場で楽しんでほしい。(森)

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