Mrs. GREEN APPLE、異例の“映画2作同時公開”が意味するもの 飛躍と孤独ーー別角度から捉えたバンドの核心

 Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)のライブフィルム『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~ ON SCREEN』(以下、『FJORD』)と、ドキュメンタリー映画『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』(以下、『THE ORIGIN』)が全国の映画館で上映中だ。

 映画の2作同時公開は日本人アーティスト史上初。また、『FJORD』は、日本人アーティストとして初めてIMAX®で上映されるライブフィルムとなった。

 “史上初”が2つも並ぶとは、前人未到の記録を打ち立て続けるミセスらしいが、これは単なるスケールの誇示ではない。特に前者の“2作同時公開”というのは極めて異例。興行面を考えれば自分たちの作品同士でシェアを食い合うため、通常なら避ける選択だ。それでも同時公開に踏み切ったのは、この2本をセットで届けることに意味があったからだろう。

 実際、この2作は、ミセスの同じ核心を異なる角度から描いている。

『FJORD』:壮大なスペクタクルで映し出す“光と影”

 『FJORD』は、2025年7月26日・27日に神奈川・山下ふ頭特設会場で開催されたミセス史上最大規模のライブを映画化したものだ。配信と中継も含め2日間合計で約35万人以上の観客が熱狂した公演は、60台以上のカメラで撮影された。バンドの歴史を辿りつつ代表曲を網羅したセットリストは、ファンはもちろん、これからミセスを知りたい人にも親しみやすい内容だ。今やチケット入手が困難なミセスのライブを、IMAX®という最良の環境で体験できる機会でもある。

映画 『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~ ON SCREEN』【本予告】11月28日(金)より映画2作品 全国同時公開!

 IMAX®の醍醐味は、立体音響や鮮やかな色彩、視界いっぱいに広がるスクリーンにある。カラフルな音楽と壮大な舞台美術、横浜の海と空が織り成す景色は、まるで魔法がかかっているかのように美しい。単にライブを記録するのではなく、映像美を追求しようという姿勢が全編に貫かれている。スクリーンに広がるのは、大スペクタクルエンターテインメント。しかしその華やかさの中で、カメラは確かに“バンド”を捉えている。メンバーが演奏中に交わすアイコンタクト。各楽器の絡み合い。音を合わせる瞬間の呼吸。そういった一つひとつによって、“Mrs. GREEN APPLEとは大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)によるバンドである”という核心が鮮明になる。

 稲垣哲朗監督の編集もこの視点を貫いている。サブステージで初期の楽曲を演奏するシーンは、燃えるような夕焼けの赤も相まって、小さなライブハウスから始まったバンドの歴史を思い起こさせる。そして「天国」では、大森の姿のみを追うという大胆な選択だ。大衆と熱狂を共有している最中でも、バンドが充実の瞬間にあっても、消えることのない孤独。光と影の両方を映し出すことで、バンドの本質を浮かび上がらせている。

 2日間のライブで初披露された新曲「Variety」のパフォーマンスも印象的だ。大森は演奏前に「僕らの、3人の、Mrs. GREEN APPLEの楽曲です」と言葉を添えた。その意味は、同時公開のドキュメンタリー『THE ORIGIN』を観るとより深く理解できる。

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